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JOURNAL / 世界の食トレンド

India [Nilgiri]野生食材の多様性と先住民の食文化を知る、ニルギリ初の食フェスティバル

2023.03.16

INDIA [Nilgiri]野生食材の多様性と先住民の食文化を知る、ニルギリ初の食フェスティバル

text by Akemi Yoshii / photographs by Suraj Mahbubani

国連食糧農業機関(FAO)は、2023年を国際雑穀年として定めた。インドでも近年、雑穀をはじめ、山野に自生する食材の重要性を再認識する動きがある。

インド西海岸沿いにそびえる西ガーツ山脈の一部であるニルギリ丘陵(タミル・ナードゥ州)は、雑穀や山菜、ハチミツなどの野生食材の多様性で知られ、それを主食とする先住民の村が点在する生物圏保護区だ。地元のNPOであるキーストン財団と、姉妹組織で米国カリフォルニア州に拠点を置くニルギリス財団は、ニルギリの環境保護と先住民の支援を行っている。

2022年12月19日から4日間にわたり、ニルギリス財団の主催でニルギリス・ワイルドフード・フェスティバル(Nilgiris Wild Food Festival) 2022が開催された。

1日目はイルラ族の案内によるフォレストウォーク、伝統的な農業活動と食文化の紹介・体験。2日目はバダガ族の伝統料理、先住民主導の小規模ビジネスおよび生産者による特産品の紹介、インド各地の料理研究家やシェフ、専門家によるトーク。3・4日目は、地元のレストランのシェフによる、野生食材を用いたコンテンポラリースタイルの食事会など、興味深いプログラムは話題を呼んだ。

イルラ族の伝統料理を味わう参加者

(写真)1日目、チークやバナナの葉に盛られたイルラ族の伝統料理を味わう参加者。都市部から離れた山深い場所でのイベントにもかかわらず、インド各地から約150人が参加し、その様子は各種メディアでも報じられて大きな反響を呼んだ。

ニルギリでこうしたイベントが行われることは初めて。畑でなく山野に自生する野生食材なだけに調達には苦労もあったが「私たちがニルギリで行ってきた活動を知ってもらうことができ、在来種の野生食材についての認識を高める道が開かれた」と、ニルギリス財団のディレクターでフェスティバル実行委員のサラサスミータ・パティさんはイベントの意義を語る。

今年は規模を拡大し、食をメインテーマにしながらもニルギリにおける生態系変化や気候変動についても考える催しとなる予定。また、チェンナイやベンガルール、サンフランシスコなど、インド国内外の都市でニルギリ産野生食材のポップアップも行っていくそうだ。

(写真トップ)2日目はニルギリ生物圏保護区内に自生する野生食材を一堂に紹介。

地元のレストラン「ル・カフェ(Le Café)」での野生食材を用いた食事会の一皿

(写真)3日目、地元のレストラン「ル・カフェ(Le Café)」での野生食材を用いた食事会の一皿。



◎The Nilgiris Foundation
https://thenilgirisfoundation.org/

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