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JOURNAL / 世界の食トレンド

Spain [Madrid]

EU圏内最大のフカヒレ輸出国スペインが取り組む、サステナブルなサメ漁

2022.05.16

text by Yuki Kobayashi / photograph by StanShea

三方を海に囲まれたスペインでは、欧州の中でも多くの種類の魚介を消費するが、サメ肉もそのひとつ。北西部ガリシア地方では古くからサメ漁が行われている。


IFAW(国際動物福祉基金)が、2022年3月にまとめた報告書*1によると、世界のサメ類の半数がその生息数を減らしているという。一大消費地である香港、シンガポール、台湾では、EUからのフカヒレ輸入が45%にも達しており、中でもスペインは圏内最大の輸出国*2だ。

スペインでのサメ漁は主にガリシア地方の漁船に多い。伝統的に行われているはえ縄漁は底引き漁とは違い、1本の長い縄に間隔を空けて釣り糸を垂らして釣る、環境に配慮した漁獲法だ。フィニングと呼ばれる、ヒレだけを切り取り個体を海に戻すような悪質な漁法は行わず、漁獲量もICCAT(大西洋マグロ類保存国際委員会)の規定に基づいて漁獲される。

一時、フィニング漁法の残酷な写真が出回ったことがあり、サメ漁は常に世間の批判や規制を受けやすい。スペインのサメ漁業界では、数年前よりヨシキリザメ、カジキマグロなどをはえ縄漁で行う組合が集結し、FIP BLUESという団体を組織して社会的認知を広める活動を始めている。ガリシア海岸では収入の多くを伝統的な漁業に頼っている地域は多い。この業界も国際的バランスと交渉力、優良なプロモーションが必須だ。

*1 IFAW(International Fund for Animal Welfare Supply and Demands the EU’s role in the global shark trade)による報告書

*2 香港、シンガポール、台湾当局の統計によるとスペインのフカヒレの輸出量は51795トン(2003〜2020年の合計)。

(写真)スペインのサメ肉とフカヒレ輸出量が多いのは、欧州のなかでもギリシャに次いで2番目に漁船数が多いことと、世界中を航海して操業していることにもよる。


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