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「トスカーナナイト@鎌倉」メイキング・ストーリー

vol.2「ジリオ島という名の大学で、僕はワイン造りを学んだ」

2016.04.28

text by Kei Sasaki / photographs by Masahiro Goda

トスカーナの“奇人”たちと
家族や友人のように囲む食卓




18時過ぎ、いよいよスタートした「トスカーナナイト」は、開始直後からどんなワインイベントとも違う賑やかさと笑いに満ちていました。

乾杯の挨拶は、グラーツさんから。
「古くからの友人であるダリオと、一緒に日本に来ることができてとても嬉しい。僕も彼もちょっと変わったところがある“奇人”だけれど(笑)、ダリオは正真正銘、ステーキの王だよ!」

するとすかさず、チェッキーニさんが、
「ビービーはワインの王、僕は肉の“王子様”だよ!」と、合いの手を打つように言葉を挟み、会場は笑い声でいっぱいになります。



「サルーテ!(乾杯)」、そして同時に発せられたチェッキーニさんの「オ・ニ・ク、バンザーーーイ!」のかけ声とともに掲げられたグラスには、ロゼスプマンテ「ボラマッタNV」が。







「テスタマッタ」と同じ、サンジョヴェーゼでつくられるロゼスプマンテは、この日のために特別に用意された日本未発売のアイテム。桜の開花も間もなく、という時期に、「オルトレヴィーノ」の店内だけに、ひと足早く春本番が訪れたかのようです。



「歓迎の突き出し」といって古澤シェフが用意したのは、トスカーナ伝統料理で豚の頭を使った自家製のハム、ソプラッサータ。
「コラーゲンのもっちり感に、サンジョヴェーゼの泡が合うと思います。今日の料理はビービーのワインに寄り添うように、そしてダリオのエスプリを感じていただけるようにと、この日のために考えたものです。家族や友人と食卓を囲むように楽しんでください」。







一気に和やかになった会場の雰囲気とは裏腹に、バックステージをあずかるスタッフ陣は、開会前以上に集中した表情。


カウンターには、ピカピカに磨き上げられた次の白ワイン用のグラスがずらりと並び、厨房では、それに合わせた料理の盛り付けが始まっていました。古澤シェフの指示を受け、竹内シェフを筆頭にしたスタッフの仕事ぶりも真剣そのものです。






古木と土着品種への飽くなき探求が生んだ
ジリオ島産の白ワイン「ブジーア」





2杯目のワインは、グラーツさん自らがテーブルを回ってサーブしました。
若々しい黄金色のワインは、「ブジーア2014」。
トスカーナの沿岸から14キロ、ティレニア海に浮かぶジリオ島のアンソニカ種からつくられる白ワインです。


「ジリオ島という場所がトスカーナにあるのをご存知ですか?」

そう話しながら、グラーツさんは自身のワインを紹介するブックレットのページを開き、1枚の写真を指さしました。写真には、険しい岩場に広がるブドウ畑が写っています。想像するブドウ畑とあまりに異なる様子だったからでしょうか。あちこちから驚嘆の声が上がります。


フィレンツェの芸術家一家に生まれ、自身も芸術家を志していたグラーツさん。醸造学校や大学で学んだことはなく、ワイン造りに関するすべてのことは、本人の直観に基づき決断されています。そんなグラーツさんの哲学ともいえるのが、古木と土着品種へのこだわり。


「最高のワインを生み出す畑を見つけるために、トスカーナ中をくまなく旅して回りました。そしてたどり着いた場所のひとつが、ジリオ島です。人口わずか1000人前後のこの島では、100年以上も前からワインづくりが行われていて、土着品種であるアンソニカの、樹齢80年を超える畑が残っていました。当時、トスカーナでは白ブドウは安価で、生産者が減る一方だったのですが、この島では細々とワインづくりが続けられていて、すべての人々が確固とした考えを持ってワインをつくっていたのです」。


グラーツさんは島に滞在して人々の暮らしに溶け込み、この地で育つブドウについて誰よりも知っている島の年老いた農夫たちの言葉に耳を傾けました。
「いいブドウの木があって、情熱と愛情を注げば、すばらしいワインができる。僕はジリオ島という大学でワイン造りを学びました」と、グラーツさん。


ゲストはハチミツのような甘味とスパイシーさのある「ブジーア」の味わいにうっとりしながらも、グラーツさんの話に聞き入っている様子。その間に、2皿目“トンノ・デル・キャンティ”がサーブされました。

「豚肉をツナに見立てたダリオの代表料理です」と、古澤シェフ。
3皿目の“スシ・デル・キャンティ”も「チェッキーニ」の名物。本家のそれは牛肉のタルタルですが、古澤シェフは熊本産桜肉のタルタルに、ホワイトアスパラガスでつくった“シャリもどき”を添えて、チェッキーニさんへのオマージュと日本を表現しました。


ゲストから「わあっ」と歓声が上がり、再び賑やかになった会場で、誰よりも嬉しそうに、皿まで食べそうな勢いで食事をするチェッキーニさんの表情が印象的でした。






トスカーナナイトが動画でもご覧いただけます!



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「トスカーナナイト@鎌倉」メイキング・ストーリー
vol.1 トスカーナ育ちのワイン醸造家×肉職人×料理人 編 はコチラ

vol.3「イタリアと日本。2つの国のスピリットが出合った時に魔法がおきる」編 はコチラ





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