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スペイン「ムガリッツ」のDNAを体感するトリプルコラボ

「ザ・リッツ・カールトン京都」10周年

2024.05.16

一流シェフの最先端の料理がSNSであっという間に拡散され、食べる前から消費されていく時代に、前衛であり続ける料理人。スペイン・バスク「ムガリッツ」のアンドニ・ルイス・アドゥリス氏が3月末に来日し、「ザ・リッツ・カールトン京都」でトリプルコラボイベントが開催された。

迎えたのは、同ホテルのエグゼクティブ・イタリアンシェフでありムガリッツ門下生の井上勝人氏。同じくムガリッツ門下生であり井上シェフとは旧知の「ブルガリ イル・リストランテ」ルカ・ファンティン氏も東京から駆け付けた。

3人で織りなすコースは、スペイン語で母を意味する「アマ(Ama)」と題したアンドニシェフのひと皿ならぬ、ひと包みからスタート。ナフキンから伝わるほんのりした温かさ。包みを開くと、バスクの牧草を抽出したミルクの入ったシリコン製の乳房が現れた。

「手でもって吸うという行為から、アンドニの世界が始まる」と井上シェフ。続く2人の料理も、旬の食材を知り尽くした上で意表を突く組み合わせや温度で楽しませる皿が続き、20年ぶりに共に厨房に立つ3人の即興曲のようなコースが繰り広げられた。

(cap)井上シェフの一皿。焼き筍と鱗焼きの白甘鯛。甘鯛のアラのゼラチン質で固めたピルピルソースとホタテ、アオサ、ホトケノザ(山菜)、サクラエビのパウダーを添えて。京都で生産者のもとに通い身に着けた食材使いと、スペインの味覚が見事に融合。

(cap)ルカシェフの一皿。見た目はキャビアがのったシンプルなイカ墨のパスタだが、ハマグリとホタテのだしが効いた「コールドイタリアンそば」。イタリアのリストランテで冷製パスタが出ることはほぼないが、日本で10年以上暮らす中で咀嚼したそばのおいしさをパスタで昇華。

エル・ブジと時を同じく注目されて以来、ガストロノミーの最前線を走り続けるアンドニシェフにその原動力を訪ねると、「好奇心と進化への欲求。私が一番恐れることは、朝起きた時に何も好奇心がわかないことです」。

今回の滞在で刺激を受けたのは、目に見えない“完璧さ”の追求だという。
「人間は意識していなくてもスポンジのように吸収している。リッツのエントランスに流れる小さな川の水音、館内に入った時の香り、適温。光も音も匂いも快適な時には気づかない。完璧だけれど何もおこっていないように感じる」

好奇心の源にあるのは感じる力だった。スポンジのように吸収して前進するムガリッツのDNAは、京都で、東京で、2人の門下生に確実に受け継がれている。


井上勝人シェフが手掛けるイタリアンダイニング
◎ザ・リッツ・カールトン京都「ラ・ロカンダ」
京都府京都市中京区鴨川二条大橋畔
☎075-746-5522
12:00~14:30LO 18:00~21:30LO
月曜休み
日曜はランチのみ営業
https://www.ritzcarlton.com/ja/hotels/ukyrz-the-ritz-carlton-kyoto/dining/

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