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水のテロワールと日本の原風景を伝えるコラボレーション

富山「IWA」×カリフォルニア「Single Thread」

2024.06.18

ドン ペリニヨンの醸造最高責任者を28年間務めた著名醸造家、リシャール・ジョフロワ氏が巨大シャンパーニュメゾンを退き、日本で日本酒を造るというニュースが驚きをもって報じられたのが5年前。

数種類の酒米と酵母を使って生酛造りを中心に醸される数十種類の原酒を、アッサンブラージュして生み出される日本酒「IWA 5」は、その圧倒的な独創性と飲みやすさを兼ね備えた酒質で、初リリースから高い評価を得ているのは周知の通りだ。

そのジョフロワ氏が日本酒造りの地に選んだ富山県・白岩の酒蔵で、海外シェフとの初のコラボイベントが開催された。お相手はカリフォルニア州ソノマの郊外で農場と三ツ星レストランを営む「シングルスレッド」のカイル・コノートンシェフと妻で農場主であるカティナさん。ジョフロワ氏とは旧知の仲で、既にカリフォルニアの店でも「IWA 5」をペアリングで提供している。

しかしこの日、彼らがゲストに伝えたことは、料理と日本酒のペアリングの概念を遥かに超えるものだった。

(写真)「シングルスレッド」シェフのカイル・コノートンさん(左)とソムリエのクリス・マクフォールさん

当日の朝、富山駅に到着したゲストは、「IWA 5」の原酒に用いられる水源の地へ直行。山の新緑と川のせせらぎに包まれる中、まずは湧き水で喉を潤し、山菜の苦味をアクセントにしたアペリティフがふるまわれる。

コノートンシェフとカティナさん、シングルスレッドのスタッフと共に水源の地に祭られる神社を訪ね、身も心も清めてから酒蔵へ。そこで待っていたのは、見渡す限り山と海と農村に囲まれ、遠くに街を臨む、力強いまでの日本の原風景だった。

「日本酒をどこで造るか。風景がとても大切だと考えていました」とジョフロワ氏。酒蔵を建てる候補地をいくつも視察し、白岩の地に立った瞬間「ここだ」と10秒で決めたという。
「風景が人間をつくり、人間が風景をつくる。この地が蔵人にも影響を与え、私も日本という背景を感じながら酒造りに向き合うことが重要でした」

かつて北海道洞爺湖のレストランで働いていたコノートンシェフも、コラボのために富山の地を知るべく、昨年来日している。富山市の日本料理店「GEJO」の下條貴大さんの案内のもと、富山の魚介と山菜、山歩きを体験したことが、コラボメニューのベースになった。
「リシャールのビジョンを表現するために、日本の自然、水の大切さに導きたいと思いました」

風景は、そこに暮らす人の潜在意識に蓄積され、その人の考え方や行動に無意識のうちににじみ出る。日本で生み出される酒、料理、器などを愛でることは、日本の風景、自然を愛することだと気づかされるコラボイベントは、海外のゲストのみならず日本人の胸にも響くものだった。

最後にジョフロワ氏は日本への深い愛をこう語る。
「IWAは日本への愛から始めたプロジェクト。日本酒を造ることが目的ではなく、日本の文化として海外に広めていくことを長期的に考えている」
日本のコンテンツをどう世界に発信していくか? 世界で最も有名なシャンパーニュブランドを率いてきたジョフロワ氏が、日本で見せる一挙手一投足にこれからも注目したい。

(写真左から)下條貴大さん、カティナ・コノートンさん、カイル・コノートンさん、リシャール・ジョフロワさん


◎IWA
公式サイト
https://iwa-sake.jp

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