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料理は音色に満ちている!耳で楽しむ「音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE」誕生

2025.03.05

視覚に依存することで、一体これまでどれだけの情報をよみ落として来たのだろう。人は情報の8割を視覚から得る。普段の料理がどれほど眼に頼っているかは身近なレシピを見れば一目瞭然。「透き通るまで炒める」「白っぽくなるまで混ぜる」「黄金色に揚げる」・・・。

ではもし眼を使わずに料理をするとしたら? そんな世界を感じさせてくれるのが、2月19日(水)、味の素からリリースされた「音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE」だ。スマートフォンなどの音声読み上げ機能で調理を楽しむユーザーに向けたレシピサイトである。

一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティの協力のもと、全盲の視覚障がい者とともに開発され、現在、プロトタイプとして「AJINOMOTO PARK」に掲載された30レシピを公開、3月までに100レシピの公開を予定している。

眼が見えない人にとって心地よいレシピとは”コンパクト”であること、と開発に携わった全盲の料理愛好家、みきさん。レシピはスマートフォンの画面上のテキストを指でなぞるようにスライドしながら、高速の読み上げ機能で読んでいく(その再生速度は驚異の7倍速!)。
このため、「材料」→「作り方」と、重要性の高い導線がシンプルに構成されたページが良いという。材料と作り方の間に画像が多かったり、食材の購入先や関連レシピへのリンクが散らばると、調理中にレシピを確認する際に「あれ?今どこのページにいっちゃった?」と迷子になるのだ。

同サイトでは、そんな視覚障がい者にとって妨げとなる要素を1つずつ解消し、読み上げに最適なUX / UIの仕様となっている。料理するみきさんの姿はぜひ動画を見ていただきたい。

豚肉の野菜炒めは、指先で触れた肉の脂身の広さで油の量を調整し、野菜を切る音や包丁の入り具合で水分量を測り、炒め時間を加減する。火の通りは、ジュワジュワ、シュワシュワ、パチパチなど鍋中の繊細な音色の移り変わりで状況判断。耳を澄ませながら聴こえてくるその賑やかな音色は、まさに「キッチン・オーケストラ」(作詞:坂田おさむ / 作曲:堀井勝美)を彷彿とさせる。

「こうして料理を作っていると、料理というのが物語のように思えるんです」とみきさん。料理にそれぞれの感覚を研ぎ澄ませれば、その先に見えてくるのは個性的なストーリー。

父は飲食店の料理人だった。幼いころから失敗を恐れずに調理してみることを教えてくれた。「うまくいかないことも、どうしてこうなったのかを考えれば、ほかのレシピにも変換ができます。すると新しいものがうまれるんです」

みきさんにとっての料理は、「目が見えないからこそ出会えた世界」。暗闇ではなく、鮮やかでカラフル、明るく賑やかな”サウンドフルな(音に満ちた)世界。サイトはその世界の“おすそ分け”なのだそうだ。

音声の読み上げを前提とする変換、分量に使われる「g」はジーではなくグラム、「主菜」はヌシナではなくシュサイ、など料理に適したカナ設定に。
画像と視覚に依存する情報はカット。サウンドコラムでは、音楽大学の声楽科出身で、年に数回コンサートを開くという美声の持ち主でもあるみきさんの表情豊かな音声が楽しめる。
視覚を使えないことで起きる不確実性を乗り越える工夫と失敗の過程を大切に見守ってほしい、とみきさん。子どもが包丁をもつことや火に近づくことについても、「できないことを取り上げるのではなく、できることにどうフォーカスしていけるかに心を砕いてほしい」と語る。(左) 一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ代表理 志村季世恵さん(右)味の素食品事業本部 マーケティングデザインセンター コミュニケーションデザイン部 クリエイティブグループ 赤坂由美子さん

◎味の素グループ
https://www.ajinomoto.co.jp/

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