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PEOPLE / 食の世界のスペシャリスト

片倉康博さん&田中美奈子さん(かたくら・やすひろ&たなか・みなこ)

ドリンクスペシャリスト

2020.12.15

ドリンク市場は可能性の宝庫だ。

世界的にアルコール離れが進んでいる。
日本人も約半数がアルコールを飲まないという統計があり、若年層を中心にノンアルコール飲料の市場が拡大している。
タピオカミルクティーに代表されるような「スイーツドリンク」の台頭も見逃せない。文字通り、飲み物でありながらスイーツを食べているかのような満足感のある飲み物をさす。これらノンアルコールドリンクにまつわるすべてのことを事業にすえているのが、ユニット「香飲家」の片倉康博さん、田中美奈子さんだ。




text by Reiko Kakimoto / photographs by Kouichi Takizawa


大手企業の依頼で、自社商材を使ったドリンクのプロモーションも行う。活動領域は日本だけでなくアジア圏全般だ。
大手ドリンク専門店のメニューアドバイザーとしても活動するほか、ノンアルコール飲料のアドバイザリー依頼も急増している。ダイニングバーや居酒屋のノンアル市場は未開拓市場だ。
「居酒屋は食事を取る場所から“話をするスペース”へと認識がシフトしている。なのにウーロン茶やジンジャーエールなど、お酒を飲めない人の飲み物の選択肢が狭すぎる」と片倉さん。「ノンアルもしっかり作れば売れる要素がある。甘いジュースではなく、飲める人が休肝日に飲むお酒もどきでもない、ノンアルコールを飲みたい人が食事に合わせるドリンク。そんな提案をしていきたい」と田中美奈子さんも頷く。

日本各地、中国、台湾等の飲食系専門学校でドリンクに関する特別講義を持つ片倉さんはバリバリの理論派。一方、元アパレル勤務で現在はケータリングの依頼も後を絶たない田中さんは感覚派。「こだわる領域が被らない」と笑う名コンビが誕生したきっかけは、10年前に遡る。
個人店とチェーン店の「リアル」
片倉さんは元バーテンダー。カフェの店長を任された時「マシンも豆もいいものを使っているのに、抽出されるコーヒーがおいしくない」ことから研究魂に火がついた。その時、近所にあった「ディーン&デルーカ」のカフェマネジャーを担当していたのが田中さん。情報交換をするうち、親しくなっていった。

豆の状態、挽き方、抽出の湯温、湯量……。実際の統計を取り始めたら、机上の理論とのずれを見つけた。「オーブンを180℃に設定しても、庫内の温度はすぐには上がらないのと一緒。リアルに即した理論が必要だ」と探求する片倉さんに、コーヒーマシンメーカーから声がかかった。
「飲食系専門学校で教えてみませんか?」

講師業を広げたい片倉さんと、店舗開業が目標だった田中さん。独立のタイミングが重なり、お互いの仕事を助け合う形でカフェレストランを開店した。「食後においしいコーヒーが出てくるレストラン」が目標。30以上の生産者から厳選した食材を直接取り寄せて料理を作り、食後に飲んでおいしいコーヒーを豆のブレンドから液量、合わせるミルクなどを何度も検討。またエスプレッソに豆の香りとリンクするジャムを入れる飲み方などを提案し、発信していった。

5年間、2人で店に立ち続け「できることは全てやった」。得た財産は店舗の立ち上げと運営についてのリアルな経験だ。常連客から広がったコンビニチェーンのメニュー開発の経験は、「全国展開を想定した野菜の生産量や、(大腸菌群の)菌数を抑える対策、加工工場のシステムや機械の違い、流通時に生じるダメージの問題などを知ることができ、与えられた条件内でのリアルな提案ができるようになった」。個人飲食店には規模や設備、予算に応じたメニューアドバイスを。大手チェーンには、動線を考慮した設備設計や、スキルのない人材でも可能なオペレーションまで想定したメニュー提案を。大小の飲食店の内情を知っていることが大きな強みだ。
若年層の舌を育てる
片倉さんの特別講義を受けていた中国人学生の紹介が、アジア圏でも活動を広げるきっかけになった。「ティードリンクの本場の中国、台湾ですが、おいしい店とそうでない店の差が激しく、レシピや提供方法はニーズがあります」。

海外に出ることで見える国内事情もある。一つが若年層の味覚変化だ。「専門学校の文化祭で学生が作るケーキを食べるのですが、年々甘味が強くなっている。『大人に憧れない』世代なので、苦味に慣れようとしないし、複雑な味わいも好まない。こうした若い世代が作っているブームがパンケーキやタピオカミルクティーなんです」。だからこそ今、食育が必要だと二人は言う。香りで飲ませる、食事に合わせるノンアルコール飲料の様々なアプローチからの提案は、お酒が飲めない若い世代の味覚を育てられる可能性も秘めている。
(左)ソースのデコレーションスプーン。ドリンクの上にソースをのせるのに使いやすい形状のスプーン。日本ではまだ使っている人が少ないが、スイーツドリンク等の需要増に併せてニーズも増えそうだ。
(右)特注の漆塗りのドリップ台。漆職人にネジを使わないで作ってもらったもので、台の脚が収納できる形状なので、持ち運びもできる。下の土台も溶接で作られている。


(左)『タピオカミルクティー フルーツティードリンク』(旭屋出版)を2018年に出版。香港、台湾、マカオ版も出版され、タピオカミルクティーの本場である台湾でも大いに売れている。
(右)2020年「香飲家」ユニットとして『ティードリンクの発想と組み立て』(誠文堂新光社)と『ティードリンクマニュアル』(旭屋出版)の2冊を出版。いずれも売り上げは好調だ。そのほかに田中さんは単著でケータリングのレシピブックも出版。


◎ 香飲家
www.kouinka.com

◎ Instagram
@kouinka_softdrinksartist
◎ 連絡先
y.katakura@kouinka.com

























































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