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RECIPE

骨まで柔らかいのに煮崩れない「鰯の山椒煮」

ブルーフード・レシピ

2024.05.23

photographs by Jun Kozai

連載:ブルーフード・レシピ

海に囲まれ、豊かな漁場を有する日本には魚食文化が根付いています。魚を食べるなかで培われ、受け継がれてきた知恵や知識を継承し、上手に食べることは、多様性豊かな海の保全につながります。日本周辺でとれる水産物(ブルーフード*)の魅力を再発見するレシピを人気店のシェフに教わります。今回はふっくらと炊き上げた鰯の山椒煮。臭みを残さない秘訣は丁寧な下拵えにありました。

*ブルーフードとは、淡水・海洋環境に由来する植物、動物、藻類など水生生物性食品のこと。食料危機や気候変動などの課題に対応し、健康的で持続可能な食料システム構築への貢献が期待されている。
**日本の漁獲量ランキング(農林水産省:令和3年漁業・養殖業生産統計)
1位マイワシ(21.1%)、2位サバ類(13.7%)、3位ホタテガイ(殻付き)(11.0%)、4位カツオ(7.6%)、5位スケトウダラ(5.4%)、6位カタクチイワシ(3.7%)、7位ブリ類(2.9%)、8位マアジ(2.8%)、9位マダラ(1.8%)、10位サケ類(1.8%)。

目次






教えてくれた人:神奈川・鎌倉「鎌倉 北じま」北嶋靖憲さん

神奈川県鎌倉市出身。地元鎌倉の和食店から料理人人生をスタート。日本料理を一から学ぶべく京都へ居を移し、京料理の名店「和久傳」の門を叩く。「室町和久傳」「高台寺和久傳」「京都和久傳」の三店舗で研鑽を積み、系列店「丹」の立ち上げにかかわると同時に料理長に就任。2020年、16年間勤めた「和久傳」から独立し、翌21年に出身地の鎌倉で「北じま」を開業。フランスのレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ2022」のテロワール賞を受賞するなど、海外のフーディーズからも熱い注目を集める。


腹の中の水分までしっかりふき取る

「とれたての野菜や魚はそのままでおいしいけれど、その味わいや香りをもう一段引き上げるのが自分の仕事だと思っています」と北嶋靖憲さん。

まずは生で食べるべきか、加熱すべきか。火入れは低温が良いのか、高温が良いのか。素材の見極めが調理の根本だ。また切り方や、余分な水気をきっちり除くなどの丁寧な下拵えで仕上がりに差がでる。

鰯の山椒煮は、イワシを水と調味料で骨ごと柔らかく炊き上げる。そこで重要なのが頭と内臓を取り出して水できれいにすすいだ後、腹の内側まで水気をしっかり拭き取ること。すると臭みが残らないという。「スチームオーブンを使うとまったく煮崩れません。1 日寝かせた翌日がおいしいですよ」

「鰯の山椒煮」材料と作り方

[材料](5人前)
イワシ・・・10尾
A
 濃口醤油・・・15g
 酒・・・10g
 山椒の実・・・10g
水・・・100g
酢・・・30g
砂糖・・・16g

[作り方]
[1]イワシをさばく

イワシの頭から尾に向けて包丁の先を動かして鱗を取る。胸ヒレの付け根に包丁を入れて頭を落とす。腹を包丁で開いて内臓を取り出す。

[2]水分を取り除く

を水できれいに洗い、キッチンペーパーで腹の内側までしっかりと水分を取り除く。
POINT:余分な水分を取ることで魚臭さがなくなる。

[3]煮汁に浸す

小さめのバット(12㎝×18㎝×6㎝)にイワシとAを入れる。
POINT:小さめのバットを使い煮汁をかぶせる。

[4]蒸し焼き

130℃、湿度60%のスチームオーブンに2時間入れて、骨がやわらかくなるまで火を入れる。

骨までやわらかく、身はふっくらと。山椒の香り華やかで中まで味が染み込んだ、ご飯のすすむ味わい。


神奈川・鎌倉「鎌倉 北じま」の店舗情報


◎鎌倉 北じま
神奈川県鎌倉市大町4-3-18
☎0467-73-7320
18:00~
不定休
JR、江ノ島電鉄鎌倉駅より徒歩15分、タクシー5分
https://www.kamakura-kitajima.jp/

※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』20120年4月号掲載)

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