使いきれないトマトをおいしく保存 「トマトの水煮」
【DIYレシピ】「ミャンカー」中新井綾シェフ
2024.08.29
photographs by Masahiro Goda
連載:DIYレシピ
塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。
教わるテクニック:プリザーブ
教えてくれたシェフ:東京・駒沢大学「ミャンカー」中新井綾さん
トマトの酸味と甘味がくっきり
実家の家庭菜園から、季節折々の旬の野菜が定期的に届きます。お店で料理に使っていますが、野菜の食べ頃や収穫期は、お店の勝手都合に合わせてくれることはなく、自然の成り行き。採れない時は採れないし、採れる時は大量に採れます。
夏になれば、トマトがひたすら、大量に届くことも。お店で使いきれず、必要に迫られて作り始めたのがトマトの水煮です。トマトの皮を湯むきする作業がちょっとした手間ですが、それさえ済ませれば、0.7%の塩水に浸け、湯煎で煮るだけ。シンプルな手仕事です。
トマトの種類は何でもよいですが、丸のまま瓶の口に入る大きさが作りやすいでしょう。ミディトマトがおすすめ。味が濃く、身質も硬くて扱いやすいですね。家庭菜園でありがちな極小ミニトマトなら、皮をむかず半割にしてそのまま湯煎してしまいます。仕上がりにも変化が出て面白いです。
塩分濃度は、0.7%にととのえてください。一般的なトマトの水煮と同じ濃度。料理にも使いやすいでしょう。煮沸は2段階で。まず、瓶内の空気を逃しながら加熱してから、蓋を閉めて本加熱すれば、瓶内の空気が膨張して割れる心配もありません。
おいしく作るコツは、完熟手前のトマトを使うこと。香りも酸味も高く加工に向き、みずみずしいので皮がすぐに弾け、湯むきが楽です(笑)。
自家製トマトの水煮の極意
1 ミディトマト以下のサイズが作りやすい。
2 香りと酸味がのった、完熟手前を使う。
3 塩分濃度は0.7%を守る。
【材料】(作りやすい分量)
ミディトマト・・・1kg
塩・・・1.2g(水の0.7%)
水・・・170g(今回使用量)
※塩の分量の記載が間違っており、訂正しました。(2023年6月16日)
[1] 保存瓶を消毒
水洗いした瓶を煮沸消毒又は電子レンジで5分熱し、乾燥させる。蓋は煮沸あるいはアルコールで消毒する。
[2] 熱湯にくぐらせる
トマトはヘタを取り、十分に沸騰させた湯に入れて、皮が弾けたら氷水にとる。
[3] 皮をむく
トマトの薄皮をむく。
POINT:みずみずしいトマトを使う。皮が弾けやすいのでむきやすい。
[4] 瓶に詰める
湯むきしたトマトをひと粒ずつ瓶に詰める。
POINT:瓶の口に水滴やトマトを付けないこと(腐敗を防ぐ)。
[5] 水を注ぐ
トマトの1/3~1/2程度が浸かるまで、瓶に水を注ぎ入れる。
[6] 0.7%の塩水に
いったん注ぎ入れた水を出し、分量を量り、ちょうど0.7%の塩分濃度となる量の塩を溶かし加える。
[7] 塩水を戻し入れる
塩を溶かし加えた水を元の通り瓶に戻し入れる。トマトの1/3~1/2程度が浸かるまで注ぎ入れること。
[8] 蓋を半分閉めて煮る
瓶の口を拭き、蓋を半分ほど閉め、鍋に入れる。瓶内の水量がちょうど浸かる程度まで水を張り、10分程度煮る。
[9] 蓋を閉めてさらに煮る
瓶の蓋を完全に閉め、鍋の蓋も閉めて、更に20分程度、グラグラ沸き踊らない程度に沸騰を保ち、煮る。
◆制作日数:2時間 ◆食べごろ:すぐ ◆保存方法:常温。開封後は冷蔵庫で保管
<アレンジ編>
極小ミニトマトで作ってみる
湯むきが大変なごく小さなトマトで水煮を作る場合、湯むきは省いて半割に。水を加えず重量0.7%の塩を加えて瓶に詰め、手順8、9と同様に煮る。
<道具のポイント>
広口の瓶と深さのある蓋付き鍋を
ミディトマトが丸ごと楽に入れられる広口のガラス瓶を用意して。瓶の口にトマトのエキスが付くと腐敗の原因に。鍋は、蓋をしても瓶がしっかり入る深さを。
トマトの水煮〈展開例〉
万能の基本素材として、幅広く料理に使えます。旨味と酸味を料理のベースに生かして。
photograph by Sai Santo
◎miankah
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火曜、奇数週水曜休
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※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2015年7月号掲載)
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