【DIYレシピ11】旬のブドウの頂点の味をジューシーなドライフルーツに
長野「ラ・フルティエールタケウチ」竹内和恵さん
2022.09.05
photographs by Daisuke Nakajima
連載:DIYレシピ
塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムを教わります。
教わるテクニック:乾燥
教えてくれた人:「ラ・フルティエールタケウチ」竹内和恵さん
使い方に合わせて乾燥度合いを調節できるのも、自家製の良さです!
長野のワイナリーに勤めていた10年ほど前、山ほど果物を頂いたことがありました。食べ切れずに余らせたくなくて、お菓子に料理にと使い方をあれこれ工夫して。以来、果物の加工の面白さに目覚めました。
2008年からは長野・千曲川沿いで、夫の祖父から果樹園を夫婦で継ぎ、ブドウ、プルーンを中心にグリオット、マルメロなどを育てています。
果物の歴史が遥かに長いヨーロッパでは、日本の漬け物のように、「自家製」のひとつとして、日々の料理やお菓子に我が家の味が継がれてきたと聞きます。私は果物加工品の持つそんな世界観に魅了され、園の果実でドライフルーツやコンフィチュール作りに勤しんでいます。
ドライフルーツの作り方はいたってシンプル。ブドウは低温のオーブンで時間をかけて水分を飛ばすだけ。たっぷり使って蒸すように加熱するのが、ジューシーに仕上げるポイントです。プルーンは、果皮が一旦乾きますが、真空パックにすると果肉から水分がしっとり戻ります。
また、採れたてを使うので、その果実の頂点の味わいが、ドライにしても生きてきます。ブドウはいろいろ試したところ、皮が薄く大粒で、酸味も甘味も強い品種がおすすめです。
ほぼ1日がかりでオーブンを使い続けるのは大変。でも、ふと気がつけば、得も言われぬ甘酸っぱい香りが、キッチンを満たしていて。この瞬間が本当に幸せです!
料理の展開例:そのまま。チーズやヨーグルトと合わせて。グラノーラや焼き菓子等の材料に。肉などと煮込んで。
プルーンのコンポート・・・砂糖をかけ、しばらくおいてから天然甘口ワイン、シナモン、カルダモン、クローブなどのスパイスで煮た。ふっくら、甘酸っぱく、アイスやヨーグルトによく合う。
ドライフルーツのサラミ・・・プルーンやレーズン、ドライイチジクなどをローストしたクルミとワインブドウの果汁で煮固めたもの。水分が少し飛んで、より凝縮した味わいに。チーズとの相性が◎。
【自家製ドライフルーツの極意】
1 重なるように隙間なく並べて、蒸すように焼く。
2 加熱は断続的でも大丈夫。火を止める場合は一旦取り出す。
3 セミドライ~ドライまで、用途に合わせて、乾燥の時間を調節。
【材 料】(天板各1枚分)
[レーズン]
ブドウ(ナガノパープル)・・・2400g
[プルーン]
プルーン(クラシマ)・・・30~35個
【材料のポイント】
大粒で皮の薄いものを
ブドウはどの品種でも作れるが、大粒で皮の薄いタイプの方が、やわらかな仕上がりに。プルーンもブドウも、採れたてを。甘味も酸味ものってくる。
【 作り方 】
<レーズン>
[1] 流水で洗い、状態を確認
ブドウを流水で洗って房から外し、ひび割れや根元が赤い粒を除く。
[2] 天板に紙を敷いて並べる
天板にオーブンペーパーを敷き、ブドウが重なるようにぎっしりと並べる。
[3] 75℃でオーブン加熱、時折混ぜる
75℃のオーブンで12時間加熱する。時折粒を転がすように上下を返し、加熱ムラを調整する。
[4] 一度取り出し、より分ける
12時間ほど経った状態。加熱が不十分なものをより分け、再度オーブンで状態を見ながら加熱する。
[5] 加熱が終わった状態
天板の上で、軽く押すような感じで転がす。果皮に果肉の水分、糖分が移り、やわらかく艶が出てくる。
◆製作日数:12~24時間 ◆食べごろ:すぐ~ ◆保存方法:冷蔵庫で2~6カ月
<プルーン>
[1] 流水で洗い、状態を確認
プルーンを流水で洗う。果汁漏れを防ぐため軸付きを使う。
[2] 天板に紙を敷いて並べる
天板に網をかませてオーブンペーパーを敷き、小さいサイズが中央にくるように隙間なく並べる。
[3] 75℃でオーブン加熱、時折混ぜる
75℃のオーブンで12時間加熱する。時折粒を転がすように上下を返し、加熱ムラを調整する。
[4] 一度取り出して冷ます
12時間後、一度取り出し、冷ます。
[5] セミドライ完成
12~15時間経った状態。ジューシーさを残したい場合はここで完成。真空パックにすると艶が出る。
[6] ドライプルーン完成
さらに4~5時間加熱。艶が出て表面に皺が寄り、指で腹を押すと、中の種がゆるく動く状態が理想。
【道具のポイント】
75℃設定ができるオーブン
竹内さんは業務用のコンベクションオーブンを使用。家庭用は下限100℃までしか設定できないものがある。その場合、断続的に火を止めるなどして温度調節すること。
◎ラ・フルティエールタケウチ
長野県長野市若穂綿内8870
☎026-285-0590
JR長野駅より7㎞
https://www.la-fruitiere-takeuchi.com/
(雑誌『料理通信』2014年11月号掲載)
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