毎日食べたい野菜がぎっしり「キヌアとミニトマト、カブ、ミントのベジスープ」
プラントベースの始め方36
2023.11.27
photographs by Hideo Sawai
連載:プラントベースの始め方
健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。
教えてくれたシェフ
「ターブルオギノ」代表 荻野伸也 シェフ
「ターブルオギノ」代表。フレンチレストラン「ogino」や、生産者との出会いから野菜の力に惚れ込み、デリカテッセン「ターブルオギノ」等を展開。現在は実店舗を閉店し、全国のレストラン、カフェ、デリのメニュープロデュースや経営コンサルティングなど多岐にわたり活躍。来春「ターブルオギノ」を再開準備中。
肉の達人が作る 野菜スープとは?
野菜ほど、料理人として腕を試されるものはないのかもしれない――。2015年に刊行された『TABLE OGINOの野菜料理200』(誠文堂新光社刊)の中でそう語るのは、肉好きから絶な人気を誇る、荻野伸也シェフだ。
2011年頃から全国各地の生産者の元を訪れ、野菜の底力に改めて気付き、意識して使うようになった。特に無農薬や有機栽培の食材は、肉より仕入れが不安定。段ボールを開けるまで、何が届くかわからない。だから、料理を軸に野菜を選ぶのではなく、野菜に寄せて料理を構築していく。そんなコントロールの難しさにも、やる気をかりたてられた。
そんなシェフが、端野菜がたまると作るのがベジブロス。食材に馴染みやすいため、料理の下地にしたり、ソースを伸ばしたりと、もはや水代わりに使う。
スープはたくさんの野菜が一皿で摂取できる料理だ。植物性食材に欠けがちな満足感や味わいは、ドライフルーツやニンニクを始め、キヌアやライスミルク、レンズ豆など普段家庭では見慣れない食材も積極的に取り入れる。近頃は食材店でも比較的手に入りやすくなってきた。
いかに飽きずに食べられるか。ドライフルーツや野菜の焦げ、ニンニクなどでフックを作る。小さなコツが満足感を高めるカギとなる。
<植物性食材だけでおいしくなるコツ>
1 料理で出た野菜の皮や葉などの端野菜は、ベジブロス用に活用。
2 だしを煮出す時間は、20分以内。
3 トマトを直火で焼いて、味にアクセントをつける。
「キヌアとミニトマト、カブ、ミントのベジスープ」の作り方
[材 料 ( 作りやすい分量)]
<ベジブロス>
ネギの青い部分、タマネギ、よく熟れた
トマト、ニンジンの皮、カブの皮、セロリの葉などの端野菜・・・適量
白ワイン(あれば)・・・150ml
水・・・適量
塩・・・ひとつまみ
キヌア・・・100g
ミニトマト・・・8個
カブ・・・2個
塩、白コショウ・・・各適量
ミント(みじん切り)・・・適量
E.V.オリーブ油……大さじ2
ニンニク(みじん切り)※・・・少量
※店ではニンニクをみじん切りにしてE.V.オリーブ油に漬けたものを使用。
[材料のポイント① ]
端野菜。料理で出た野菜の皮や葉はベジブロス用に集めておく。ニンジンの皮、セロリの葉、熟れたトマトとなんでもいいが、デンプン質の多いジャガイモなどは避けた方がいい。
[材料のポイント② ]
キヌア。通常の精白米より低い糖質でありがながら、カルシウムや食物繊維などが豊富で、栄養価の高い食材。プチプチとした食感が料理にメリハリを生み出す。自然食品店などで販売。
【下準備】
[1]
ベジブロスを作る。鍋に端野菜と白ワインを入れ、水をひたひたに注ぐ。さらに塩を加えて沸かし、約15~20分中火にかける。火を止めてザルで漉す。
POINT:だしは、煮込む分だけ濃くなると思われがちだが、野菜はある一定の時間を過ぎると味が飛んでしまう。長くても20分、基本的にその日に使う分だけを取る。
[2]
別鍋にたっぷりの水とキヌアを入れて沸かし、キヌアが柔らかくなるまで茹でる。キヌアがふっくら開いてきたらザルに上げ、水分を切っておく。
[3]ミニトマトを直火で焼く
ミニトマトを網にのせ、直火で焦げるまで焼く。
POINT:単調になってしまいがちな味には、直火で焼いたミニトマトを焦げた皮ごと加えて、香ばしいアクセントに。トマトの旨味もギュッと凝縮されてコクが生まれる
[4]カブは皮を剥き、乱切りにする。
[5]鍋に1と2を入れて火にかけ、4のカブを加えて煮る。
[6]カブに火が入ったら、3を加え、塩、白コショウで味を調える。
[7] ミントを散らしてE.V.オリーブ油を回しかける。ニンニクを加えて軽く混ぜ、火を止める。器に盛り、好みでミント(分量外)を散らす。
シンプルな塩味に、焼きトマトの香ばしさ、ミントの清涼感、最後に加えたニンニクの刺激がフックを作る。とろりとしたカブとキヌアの食感の違いも楽しい。
◎ターブル オギノ
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2016年12月号掲載)
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