“よく炒める”ことで豊かで深い味に!
「ミネストローネ」
スローレシピ01
2021.12.16
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photographs by Tsunenori Yamashita
連載:スローレシピ
材料をイチから用意し、時間をかけて、料理すること自体をゆっくりと楽しむ。それが“スローなレシピ”。時短とは真逆の価値観の先に、とびきりの味が待っています。今回はイタリアのお母さんが作る家庭料理をベースに、レストランの味に仕上がるレシピです。たっぷり作って、数日かけて食べてくださいね。
教えてくれたシェフ
東京・祖師ヶ谷大蔵「ズッペリア オステリア ピティリアーノ」堀川亮さん
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25歳で渡伊し、ピエモンテ州やトスカーナ州で修業。2000年祖師ヶ谷大蔵に「フィオッキ」、2014年、同店2Fに「ズッペリア オステリア ピティリアーノ」を開店。2020年に「フィオッキ」を改装し、物販スペースを設け、惣菜やパン、スイーツの販売もスタートした。
※コロナ禍の堀川シェフの取り組みをシリーズ「未来のレストランへ」で取材しました。未来のレストランへ「レストランの技で“食事パン”を定着させる」も併せてご覧ください。
「よく炒める」ことで旨味がより深く!
ミネストローネは、イタリアで愛される家庭料理のひとつ。材料や仕上げ方など、各地方、いや家ごとに違い、各家庭に伝わる小さなこだわりが沢山詰まったマンマの味です。僕のはトスカーナでの修業時代に教わったレシピがベース。豆が入り、水に浸したパンをつなぎに使います。
お母さんが家で作る、ざっくり田舎風を意識し、「大雑把」に野菜を切ります。いびつな形状は、煮溶けたり塊で残ったりと、食感に変化が生まれるし、旨味が出やすく味しみもいい。切れ味の鈍い包丁を使うともっとよい(笑)。煮込んで作る汁ものですが、大事なのは炒める作業。野菜を炒めることで生まれる甘味や香味、旨味が核になり、それを煮汁に溶かすイメージ。
どんな野菜を使ってもいいですが、炒める順番を大切に。まずタマネギ、ニンジン、セロリなどの香味野菜をたっぷりのオリーブ油で炒め、香りを出してから季節の野菜を炒め、葉野菜、ハーブで香り付けをします。僕の場合、使う種類も作る量も膨大。仕込み時の厨房はさながら「野菜劇場」。次に使う野菜を順々にカットしながら炒めていくとスムーズです。
動物性食材は生ハムのみ、調味料は塩だけ。加えるのはだしではなく水。でも実に豊かで深い味が出ます。
煮込みの極意
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●濡らしたパンをつなぎに
スープ全体にとろみを出すため、パンを少量加える。硬くなったパンを水に浸してからギュッと絞り、柔らかくすると同時に雑味を抜く。
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●野菜は炒める順に、粗くカット!
野菜は予め全部切ってしまわず、順々に、次に使う野菜を切りながら炒めてゆくと効率的。アクもでない。粗く切るほど味わい深い。
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●香味野菜1:青菜0.3:それ以外1.5が目安
どんな野菜をどれだけ使ってもよいが、ベースとなる香味野菜、青菜類、それ以外という大きなくくりで、その割合を意識して使うとよい。
「ミネストローネ」材料と作り方
【材料】(30皿分 ※レストランの分量なので適宜調整してください)
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オリーブ油・・・200~300ml
塩・・・14g
(A)
生ハム・・・25g
ニンニク・・・2片
タマネギ、ジャガイモ・・・各2個
ニンジン、セロリ・・・各2本
白インゲン豆、ウズラ豆(ひたひたの水で戻し、30分程煮る)・・・各50g
キャベツ、カブやダイコン類、ズッキーニ、ナス、キュウリ、インゲン、カボチャなど
・・・合計でAの1.5倍量
カブ菜、ホウレン草など青菜類・・・合計でAの1/3量
パン・・・20g
トマト・・・生2個、水煮3~4個
スペアミント、イタリアンパセリ、バジル・・・各1/3パック
【1】オリーブ油をたっぷり熱する
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鍋にオリーブ油を熱し、ニンニク、生ハムを弱火で香りが出るまで炒める。生ハムは硬いので細かめに刻む。
【2】タマネギを炒め、塩をする
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タマネギを粗みじんにし、鍋でざっと炒めたら塩を加え(浸透圧で水分を出す)透き通るまで中火で炒める。
【3】ニンジン、ジャガイモ、セロリを加える
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ニンジン、ジャガイモは皮を剥き、セロリは筋をとり、粗いさいの目に切り、鍋に加え、透き通るまで炒める。
【4】キャベツを加える
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キャベツを粗みじんにして加え、炒める。中弱火で、「シュワシュワ」という軽い音が立つのを火加減の目安に。
【5】カブ、ダイコン、ナスなどを投入
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カブ、ダイコンなど季節の野菜を、皮はほぼ剥かず粗みじんにして加え、炒めてから全体になじむまで10 分程煮る。
【6】青菜類とパンを加える
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すぐにカブの葉や小松菜などのざく切りと、水に浸して絞ったパンの角切りを加え、鍋底をヘラでこそげ落とすようにかき混ぜる。
【7】トマトを加える
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さいの目にカットした生トマトと、ホールトマトを手でひと口大にちぎりながら入れ、沸いたら5分程煮る。
【8】豆、水を加える
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豆を煮汁ごと加える。野菜が泳ぐ程度の水を注ぎ、豆がちょうどよい硬さになるまで煮込む。
【9】ハーブ類を加える
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塩で調味し、火を止める。刻んだハーブ類を加え、余熱で火を通す。
道具のポイント
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●底が厚く、具と容量が適正であること
何より「炒めて」作る料理。底が薄い鍋は水分が飛んで焦げやすいので、厚い鍋でじんわり熱を伝えながら炒めるのが肝要。鍋が小さすぎるとまんべんなく炒められないし、大き過ぎても焦げやすいので、容量も注意する。鍋は蓋はしない。
◎ズッペリア・オステリア・ピティリアーノ
東京都世田谷区祖師谷3-4-9-2F
☎ 03-3789-0017
17:30〜22:00(L.O. 21:00、炭火焼き20:30)
水曜、木曜休
https://www.zo-pitigliano.com/
※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2016年1月号掲載)