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JOURNAL / 世界の食トレンド

Mexico [Culiacán]

世界に広がる日本酒文化。メキシコ初の酒蔵が伝統と現地の味を融合

2022.07.21

text by Akiko Katayama

和食人気や酒蔵の輸出努力に牽引され、日本酒の注目度は世界中で高まる一方。日本酒に傾倒する外国人が、海外で本格的な酒造りを目指す例も目立つ。米国には20以上の酒蔵が存在し、鑑評会で高い評価を得る銘柄も増えてきた。

そんな中、2016年メキシコ北東部のシナロア州クリアカンに誕生した、メキシコ初の酒蔵「NAMI」が話題だ。

現在の杜氏が、日本を訪れた際に日本酒のおいしさに目覚め、母国で最高の味を生み出そうと決意して、全員メキシコ人のチームを結成。酒造りのノウハウを身につけたいものの伝手は一切なく、オンラインで伝統的な造りの酒蔵を当たり、行き着いたのが岐阜県の三千櫻(みちざくら)酒造*だった。

1877年創業の同社6代目当主で、自ら杜氏も務める山田耕司氏は、未知の可能性のプロジェクトへの協力を決め、現地に2年連続で足を運び指導。スタッフも日本で3カ月修業をして酒造りを習得した。その結果生まれた酒は、2019年東京で開かれた「インターナショナル・サケ・チャレンジ」で金賞・銀賞を受賞するなど、高い評価を得ている。

リリース当初は「プジョル(Pujol)」ほかメキシコシティなどの高級レストランで販売。生産が軌道に乗った現在は取り扱う小売店も増え、その人気はますます広がりそうだ。「NAMI」の成功ぶりは、現地の風味を反映した、優れた日本酒の可能性を示唆している。

*三千櫻酒造は2020年、岐阜県中津川から北海道東川町に移転。

(写真トップ)全員メキシコ人のチームが伝統製法に基づき、現地の味わいを形にする。原料は酒米の王様とも呼ばれる山田錦を使い、海外では希少な酒米を生産する定評高い米国農家から仕入れる。クリアカンの水は日本に比べはるかに硬水だが、特殊な濾過を施して調整する。

(写真2枚目)「NAMI」では純米・純米吟醸・純米大吟醸の3種を生産。それぞれが和食はもちろん、現地ならではのセビーチェやステーキなどにもぴったりの味わいに仕上がっている。



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