スパイス弾ける インドのタマネギの天ぷら「オニオン・パコラ」
プラントベースの始め方20
2022.08.25
photographs by Masahiro Goda
連載:プラントベースの始め方
健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。
教えてくれたシェフ
東京・神田小川町「三燈舎(さんとうしゃ)」トーマス・クンナッパリルさん
米粉でクリスピーに。スパイスで奥行きを出す
日本で粉といえば小麦粉が一般的だが、南インドの家庭ではヒヨコ豆を挽いた粉“ベサン”が必需品。きな粉のように焙煎していないので香りは穏やか、ほのかに豆の風味を感じる優しい味わいだ。このヒヨコ豆の粉とスパイスを水で溶いた衣で、主に野菜や肉、魚、チーズを揚げたものが「パコラ」。インド風天ぷらともいわれ、2019年5月にオープンした南インド料理店「三燈舎」のオニオン・パコラは、まるでかき揚げのようなビジュアルで登場する。
見るからにサクサク、躍動感のあるパコラを指でつまんで口に放り込む。するとイメージしていた揚げタマネギの甘さとは違う、スパイスの爽やかな香り、甘味、苦味、辛味、香ばしさが一体となった複雑な風味がわっと口中に広がって、思わずビールに手が伸びる。衣に塩味もついているから、永遠につまんで飲み続けられる麻薬的な前菜なのだ。
シェフのトーマスさんが南インド・チェンナイの五ツ星ホテルで働いていた時のレシピをベースに、ヒヨコ豆の粉に米粉を合わせてクリスピーに。やっとタマネギがまとまるくらいの薄衣で高温の油に投入すると、スパイスの香りが一気に花開き、シンプルな野菜のかき揚げに奥行きが生まれる。野菜の揚げものは塩味を感じやすいので、塩はスパイスを引き立てる程度に控えめに。スパイスの組み合わせや配合に個性が表れるのも、パコラの醍醐味だ。
<植物性食材だけでおいしくなるコツ>
1 衣は、ヒヨコ豆粉と米粉をブレンド
2 網杓子でザクザク切りながら、短時間で揚げる
3 衣にホールスパイスを混ぜて、弾ける香りを
[材料のポイント]
ヒヨコ豆粉と米粉をブレンド
ヒヨコ豆の粉100%で作るとやや重く硬い食感になるのに対し、米粉をブレンドすることで、サクッとクリスピーに仕上がる。ほのかな豆の風味と食感が野菜のかき揚げに食べ応えを与える。
ホールスパイスを衣に混ぜる
衣に混ぜ込んだホールスパイスが、シンプルな野菜揚げに複雑な風味をもたらしビールがすすむ。スパイスの配合は人それぞれだが、ほの甘く爽やかなフェンネルとクセのあるアジョワンシードは欠かせない。
「オニオン・パコラ」の作り方
[材 料(1皿分)]
タマネギ・・・1/4個(80g)
<衣>
ヒヨコ豆の粉・・・53g
米粉・・・37g
フェンネルシード・・・6g
アジョワンシード・・・2g
ターメリック・・・1g
カレーリーフ(刻む)・・・10枚
香菜(みじん切り)・・・11g
ショウガ(みじん切り)・・・9g
塩・・・4g
水・・・50g
サラダ油・・・適量
[1]衣に香り、辛味、塩味をつける
衣に香りのスパイス、辛味のスパイス、色味づけにターメリック、塩も加えるのが特徴。
[2]タマネギはやや厚めに切る
タマネギは縦半分に割り、繊維に垂直に2等分してから、繊維に沿ってやや厚めにスライスする。
[3]衣の材料をすべて混ぜる
トーマスシェフは計量せず目分量で加えるが、タマネギに対し衣が厚くなり過ぎない分量に。
[4]タマネギを加え混ぜる
タマネギを加えて両手で上下を返し、まんべんなく粉をまとわせる。
[5]水を少しずつ加える
指ではじくようにして少しずつ水を加え、一方向に混ぜる。
[6]ようやくまとまる濃度に
これくらいまとまればOK。
POINT:具材の形が見える衣の薄さに
[7]高温の油に散らし入れる
成形はせず、6を片手で掴んで揉むようにほぐしながら200℃に設定したフライヤーに投入。
[8]網杓子でほぐしながら揚げる
すぐに衣が固まるので、団子にならないよう網杓子を油にザクザク突き刺しながら揚げる。
POINT:ぽってりと衣をまとったパコラもあるが、トーマスシェフのパコラは薄衣でかき揚げのようなサクサク感が身上。油の中で衣同士がくっつかないよう、網杓子を油に突き刺しながら高温短時間で一気に揚げ切る。
[9]こんがり色づける
薄衣なのであっという間に火が通る。網杓子ですくって油を切り、すぐ皿に盛り付ける。
POINT:短時間でしっかり揚げ切る
◎三燈舎
東京都千代田区神田小川町3-2 古室ビル2F
☎050-3697-2547
11:00~15:00LO 17:30~21:00LO
月曜休
都営線小川町駅より徒歩3分
https://santosham.tokyo/
※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため要請に合わせて営業時間が変わることがあります。
(雑誌『料理通信』2019年11月号掲載)
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