「地域を活性化する」
奥田政行/Masayuki Okuda
アル・ケッチァーノ/Al che-cciano
2014.10.01
1969年12月4日生 / 山形県出身 / A型
高校卒業後、東京のイタリアン、フレンチなどで働く。26歳で帰郷し、鶴岡ワシントンホテルに就職、翌年料理長に就任。98年、農家レストラン「穂波街道」で2年間シェフを務め、00年独立。07年隣地にカフェ&ドルチェの店「イル・ケッチァーノ」を、09年、東京・銀座に「ヤマガタ サンダンデロ」を開店。05年より「食の都庄内」親善大使、一昨年、農林水産省「料理マスターズ」第1回受賞者に選ばれる。
FAVORITE
音楽 : 冬は松任谷由実、炊き出しに行く時は八神純子、新しい自分と出会う時はミスターチルドレン
本 : 『庄内の味』(伊藤珍太郎著)
映画 : 藤沢周平作品
ジャガイモのリボン 生ハムとだだちゃ豆の香り
ジャガイモを雪室で3カ月熟成させて糖度を上げ、生ハムの香りのコンソメで68℃×1 時間煮ては冷ましを3日間繰り返し、桂剥き器でリボンに。ジャガイモが糖化しない(ぬめりが出ない)温度(70℃以下)で加熱し、甘味はあるがサクサクとした食感を狙う。
牛肉と、アッサムティーでのばしたニンジンのピュレ
ニンジンを、タンニンの多いアッサムティーでピュレに。このピュレはいわば薬膳。ピュレだけ食べると苦いが、強めにソテーしたイチボを噛むごとに肉の繊維にニンジンが混ざり込み、脂を流してどんどん軽くなる仕掛け。
必要とされるためのキーワード
生産者の家族、タクシーの運転手を招待する。
奥田政行シェフは常に、「みんなが求めているのに無いもの」を差し出してきた。地産地消もそのひとつだ。競合しない=戦わないという選択。その根幹にあるのは「周りの人が幸せになれば、自分も幸せになる」という幸福論である。
「まず、生産者を幸せにする。キーワードは夢、誇り、安定、小さな幸せです」
庄内を食の都に、と「夢」を掲げ、食材の価値に気づかせて「誇り」を持ってもらう。価値に見合う額でレストランが買い上げて生活を「安定」させ、そして山の生産者には海の物を手みやげにするなど「小さな幸せ」の交流を重ねていく。
生産者の家族や、タクシー運転手も店に招待する。自分たちの作物がどうなるのか、自分が乗せるお客が何を食べるのか。仕事の先を知ることで、「アル・ケッチァーノ」が庄内の誇りになるからだ。
次に、料理人が幸せになる仕組み。
「料理人は常に“わかる人にだけわかればいい”と“皆にわかってもらいたい”の間で振り子のように心が揺れるもの」と、食材を薄味で生かす「アル・ケッチァーノ」に対し、伝統重視の「イル・ケッチァーノ」で振り子願望を満たす。形態は違っても席数を揃え、オペレーションを統一すれば人を環流させやすい。
同じ席数で東京にも2店舗。山形県全域、さらには全国の食材も使ってほしいという声に戦わずして応える道でもあり、日本の将来を見据えた選択でもある。 「料理人も、伝える力を持たなければ」
誰をも犠牲にせず、育み合いながら、関わった人すべてを幸せにする。奥田シェフはそれを、本気で実践している。
◎アル・ケッチァーノ
山形県鶴岡市下山添里塚83
0235-78-7230
11:30~14:00 LO 18:00~21:00 LO
定休日 月曜
カード 可
座席 全26席
タバコ 禁煙
JR鶴岡駅よりタクシーで15分
http://www.alchecciano.com
昼、夜ともおまかせコース3500円、7350円、10000円 他に大皿取り分けコース5000円、夜のみアラカルトあり(税込・サ別)
【WINE】 グラス白赤各3種 650円~、ボトル3500円~
(『料理通信』2012年5月号取材時点)
「2012年05月100人のシェフが考える「必要とされる店」になるために」 掲載
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