麹のパワーで廃棄食材を削減。ゼロウェイスト・レストランが立ち上げた発酵ファクトリー
England [London]
2024.10.31
text by Yuka Hasegawa / photographs by Silo
(写真)レストランの貯蔵庫で造っているレストラン用の発酵食品。廃棄食材を使った麹や味噌など、「サイロ」の創始者、ダグラス・マクマスター氏のクリエーションの根幹をなすものと言える。
ロンドンの新進気鋭のシェフたちから、昨今、熱い視線を集めている自家製発酵食品。店内のキッチンで仕込んだキムチや味噌、麹を使った料理がおまかせメニューに並び、コンブチャ(お茶を発酵させた植物由来の発酵飲料)がノンアルドリンクのペアリングリストの常連となっている。
このトレンドのパイオニアで、ゼロウェイストを標榜するレストラン「サイロ(Silo)」が、2024年6月にクラウドファンディングで“発酵ファクトリー”を立ち上げて話題を呼んでいる。
オーナーシェフのダグラス・マクマスター氏は、2014年に英国南部ブライトンに同店をオープンし、2019年に東ロンドンに移転。創設以来、キッチンでの廃棄物を徹底的に削減するサステナブルに徹したスタンスで、野菜クズや肉や魚のトリミング(すき身)、余ったパンを、麹を使って発酵させて料理に使い、独創的な一皿に昇華する。
「発酵はゼロウェイスト・システムにとって、最も強力な技術です。麹菌が生み出す酵素のマジカルなパワーにより、本来はキッチンの廃棄物である食材から、複雑で新しい味わいがクリエイトされる。まさに料理の“アップサイクル”なのです」と語るのは、同ファクトリーのヘッドを務める、ライアン・ウォーカー氏。以前は同レストラン用だけに発酵食品を作っていたが、新プロジェクトではスケールを拡大し、ロンドン市内のレストランやベーカリー、ブリュワリーに販売し、同時に麹を使った発酵技術を啓蒙・伝授するという。
「ポルトガル産の米やパールバーリー(丸麦)で作った麹だけでなく、そら豆や、大豆に代わる代替タンパク質として近年需要が伸びているルパン豆を使ったソイソース(醤油)やミソなども手掛けています」
2024年で創立10年を迎え、同年2月にはミシュラングリーンスターも獲得したサイロ。「ロンドンにおける発酵食品の今後のポテンシャルに大きな期待を寄せています」と、ウォーカー氏は熱く語っていた。
*1ポンド=191円(2024年10月時点)