Finland [Helsinki]
この1冊がコーヒーとの付き合い方を見直すきっかけに
2021.03.22
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text by Asaki Abumi / photograph by Ville Juurikkala
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コーヒーの未来を考える書籍『世界からコーヒーがなくなるまえに』(原題:KAHVIVALLANKUMOUS、英題:Coffee Revolution)が、コーヒー消費量トップ常連国のフィンランドから出版された。
大量消費と気候変動により、今までのような漫然とした飲み方は終わりを迎えるという著者のレッペトリ・パネン氏とラリ・サロマー氏。「コーヒー最大のカーボンフットプリント(温室効果ガスの排出)は、実は家庭で生まれています。かなりの量のコーヒーが作り過ぎで、保温状態にされ、流しに捨てられている*」と指摘する。フィンランドではコーヒー豆が安価に販売され、消費者は飲めることに感謝することもなく、家でも「もっと飲むかもしれないから」と無駄に作りすぎているのだという。
では我々にできることは何かとの問いに、サロマー氏は「サステナブルなコーヒーであるか品質を見極め、淹れる量に気を配り、捨てる量を減らす」ことを提案する。
“仕事をがんばる自分”のためのエネルギーとカフェインを得るためではなく、コーヒーがある“時間を楽しんで”1杯1杯を飲み切ろうではないか。「コーヒーマシンを買う時も、すぐに壊れる安いものではなく、長く使えるものを。必要な量だけをより意識するドリッパーもいいですね」と、コーヒーとの付き合い方を見直すことを勧めている。
*スウェーデンのコーヒー焙煎業者Löfbergs社が第三者機関の調査会社Straylightに依頼した調査によると、フィンランドの家庭では年2300万リットルのコーヒーが捨てられている。これは1億5000万カップに値する。
(写真)著者であるノンフィクションライター兼、出版社編集者のペトリ・レッパネン氏(右)と、コーヒー業界を経て現在はコーヒー・ココア業界で活躍する起業家のラリ・サロマー氏(左)。
◎『世界からコーヒーがなくなるまえに』
ペトリ・レッパネン、ラリ・サロマー 著、セルボ貴子 訳
2019年、青土社刊、1,980
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3354