COVID-19対策―― 世界の飲食店はどう復活へ向かう? フランス編
2020.09.03
COVID-19対策――
世界の飲食店はどう復活へ向かう? フランス編
Sep. 3, 2020
世界の飲食店&飲食業に携わる人々はこの危機にどう対応し、何を学び、何を模索しているのか?“ウィズ・コロナ時代”を歩み始めた、各国在住のジャーナリストがリポートします。
食の楽しみをあきらめない
美しい感染予防対策
6月15日にようやく、全国の飲食店で全面的な営業再開許可が出たフランス。とはいえ、もちろん衛生対策は必須だ。スタッフのマスク着用義務、テーブル間隔は1メートル以上などの規則があり、コロナ前とすっかり同じ雰囲気とはいかない。
各店が衛生対策に頭を悩ます中、インテリアセンスも兼ね備えた感染対策が登場し、注目を浴びている。インテリアデザイナーのクリストフ・ジェルニヨンが考案した「PLEX'EAT(プレクシート)」だ。席数を減らすと売り上げも減少してしまう。元のテーブル数を保ちながら、衛生面をクリアすべく、アクリル樹脂製プレキシガラスのセパレーションを設置する店も多いが、いかにもコロナを連想させ、イメージがよくない。そこでジェルニヨンが考えたのが、天井から吊り下げるスタイリッシュ感満載の保護オブジェ。美しい上に、テーブ
ル上で邪魔にならずに飛沫を防げる優れものだ。
ビストロの魅力は賑やかな懇親性。ウィズ・コロナの時代とはいえ、客席数を減らしその魅力を失うのは避けたい――そんな考えからコロナ対策を考えたのが、アラン・デュカスだ。パリで手がける老舗ビストロ「アラール」の客席に仕掛けたのは、空気の流れのコントロール。飛沫が含まれた空気をなるべく動かさないようにしたまま、きれいな空気と循環させる換気システムだ。これにより、店内の空気は1秒に最大10㎝しか動かず、瞬時に、各テーブルの上に設置された美しい空気孔に取り込まれる。
コロナという災害を逆手にとって、インテリアに昇華させた2つの事例。逆境にこそ強くなる、フランス人の反骨精神を感じられる取り組みだ。
<世界のコロナ対策:フランスの場合>
▼行動制限要請、地域・全国封鎖の時期
3/15~ 飲食店、劇場、商店などの閉鎖(ただし食料品店、薬局、銀行、郵便局など生活に必要な一部の業種は除く)
3/17~ 外出制限(近所での生活必需品の買い出し、短時間の散歩や運動は可。在宅勤務推奨だが不可能な場合は通勤可)
(以下、解除の流れ)
5/11~ 外出制限の緩和
6/15~ EUからの入国許可
7月以降 EU以外の国も順次入国許可予定
▼飲食業への要請や命令内容
3/15~ 飲食店は休業(テイクアウト、デリバリーのみ可)。ブーランジュリー、パティスリーは生活必需とみなされ営業可
(以下、解除の流れ)
6/2~ パリ及び近郊、海外県(ギアナとマイヨット)以外は飲食店再開許可
パリ及び近郊と海外県はテラスのみ利用可(テーブル間は1メートル空ける、スタッフはマスク装着、ゲストがトイレに立つ時もマスク装着などの衛生基準あり)
6/15~ 全国で店内、テラス席共に利用可
▼飲食業(企業全般)への主な救済策
◎ 賃金補償
従業員給与の84%を政府が補償(最低賃金の場合は100%)
◎ 社会保険
収入などに応じて減額
◎ 固定費支払い猶予
光熱費の支払時期の猶予。条件等あり
◎ 給付金
一定の売り上げ減の中小企業に一律1500ユーロ(約18万円)
◎ 融資
昨年の売り上げに対する一定の割合で政府保証の無利子融資
◎ 事業支援
テラス席の拡大・設置の大幅認可(パリのみ、9月末まで)
◎ PLEX'EAT
www.christophegernigon.com/plex-eat
◎ Allard
www.restaurant-allard.fr
(『料理通信』2020年9・10月合併号/「ワールドトピックス」より)