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FEATURE / MOVEMENT

GoodmanKITCHEN

心動かす食空間を創出する!キッチントラックのつくり方

2020.03.16

text by Chiyo Sagae /photographs by Masahiro Goda     special thanks to Rikki Ito

心満たされる食事空間の条件って、何だろう? もはや内装やサービスでは語れない気がします。ロケーションだったり、一期一会だったり、ライブだったりするほうがインパクトは大きいんじゃないか?
そんな思いから、フードトラックをセルフビルドで造ってしまった人たちがいます。
GoodmanKITCHEN―
世界的にダブルワーカー、トリプルワーカーが増えている今、本業を持つ同士が第2の仕事として運営している点もユニークです。

どんな場所でもハイクオリティな料理を提供&
店のキッチン顔負けのフル装備。


メンバーは全員ダブルワーカー!

2019年秋、オールロケーション型レストランを提案する株式会社グッドマンキッチンが、全国各地に非日常のレストラン空間を出現させるキッチントラック「GoodmanKITCHEN」の運用を開始した。 スチームコンベクションオーブンや強火力ガスコンロ、全570リットルの大容量冷蔵庫、159リットルの冷凍庫ほか、レストランの厨房で必要とされるあらゆる調理器具を備え、地方の町の小さな広場でも山奥でも海辺でも、シェフが思う存分能力を発揮できる機能を完備している。

多額の資金を投じたその道のプロ集団の新ビジネスかと思いきや、グッドマンキッチンのメンバーは社長を含めて6名全員が他に本業を持つダブルワーカー。瓦メーカー、大手印刷所マーケティング企画担当、デザイナーなど、職種も違えば、住む場所も岐阜、大阪、福岡、東京と各地に散らばっている。共通するのは、この会社には生活の保障を求めないから「給料がなくても面白いことをやりたい!」という情熱。やるならとことん手を抜かない、熟慮かつ行動型の気質だ。 



外の人間の視点を伝えるツール

6人は4年前、オンラインサロンで知り合った。移動式で体験型の食のイベントをやりたい、それによって地方創生に役立ちたいという思いを出発点に試行錯誤を開始する。
「全国各地に観光名所はあるけれど、観光地ではない、地元の人にとっての日常的な場所の中にも魅力はあり、価値がある。特別なことが隠れていると思っています。地元の人は見慣れすぎて、魅力に気付いてなかったりするのですが……」と語るのはメンバーの折笠玉季さんだ。

住人にとっては日常空間でも、外からやってくる人間には非日常。住宅街にひっそり佇む公園、名もない川べり、田んぼの畦道、野菜畑の横の原っぱ……あらゆる場所が食空間になり得ると6人は考えた。自分たちが価値を見出す場所にレストランを出現させて、食事のひと時だけでも風景を変えたら、住んでいる人たちにもその土地の魅力を再発見してもらえるのではないか? そのためのツールとしてのキッチントラックの製作を決めたのだった。



たった一人のセルフビルド

メンバーの森孝徳さんを社長として岐阜県高山市に本社を構え、株式会社グッドマンキッチンが始動したのは昨年春。メンバーのほかに事業に賛同する4人を加えた計10人で700万円を出資し、地元の信用組合など4社が運営する地元ファンドから1千万円の投資を受けてスタートした。
  仕上がりの見事さが高級オーダーメイドと思わせるキッチントラックだが、製作はなんと副社長の柚木大介さん一人のセルフビルド。元々、車の修理やDIYが趣味とはいえ、プロ仕様の厨房設備を扱ったこともなければ、内装工事に通じていたわけでもない。誰に教えを乞うたのかと尋ねれば、「すべてユーチューブ」との答え。

車体は、以前被災地に食品を届ける冷蔵トラックとして大手コンビニが所有していたものを下請けした。必要な道具はレンタルし、製作場所も知人の会社の駐車場、車1台分のスペースを間借りしたので「見た目から思われるほど金額はかかっていない」そうだ。
一人でコツコツ1年かけてリメイク。
「はじめの半年は、仕事の合間にぼちぼち。後半はもう一気にやってしまったという感じです」
本職がデザインと写真のフリーランサーなので時間のやりくりは可能とはいえ、やってみればダブルワークはそう簡単なものじゃないことを、身をもって実感したと言う。



シェフをその気にさせる厨房

取材日、料理を担当してくれた代々木上原のイタリアン「クインディ」の安藤曜磁シェフ


キッチントラックの外装はマットブラックで塗装され、側面を開けると重厚な木製カウンターが現れる。キッチン内には超ハイスペックな機器が揃う。カウンターの引き出しはデザイン重視のダミーだが、厨房の引き出しはもちろん本物でたっぷりスペースを確保して様々な調理器具や調味料がスタンバイする。これら英国のシックなファニチャーを連想させるパーツに限っては高山市の家具職人に依頼したという。

ここまで手間暇かけたのは、ひとえにキッチントラックのコンセプト〝シェフがその気になる厨房〞のため。「自分の店以外で料理をする時、あれがあればこんな料理ができるのにと思うことはよくあります。その点、このキッチントラックは完璧。レストランの厨房とまったく変わらない」と絶賛するのは、この日料理をした代々木上原のイタリアン「クインディ」の安藤曜磁シェフ。

とはいえ、柚木さんが最も大切にしたのは雰囲気だという。控えめな色と装飾のトラック外装は扉を開いた時の「何、これ!?」というインパクトのため。木製のキッチンカウンターのダミーの引き出しは特別感を演出したかったから。ほかにもスピーカーや音響ミキサー、パワーアンプを備えた音への配慮、シェフのパフォーマンスをリアルタイムで楽しめるライブ配信機能、内部の壁に設えられたサイネージモニターは訪れた人が内部に視線を向けてくれるように、と移動式厨房の機能をはるかに超えた装備は圧巻だ。

それもこれも行った先の人々に、自分の土地ってこんなに良い所だったんだと気付いてもらうため。「僕らの食事会の一番の魅力はロケーション。地域の活性化というと、どうしても町のPRをして、外の人をいかに呼び込むかという発想になりがち。けれど、僕らはそこに住む人が地元の魅力を感じてこそ地方創生だと思う」

そのために全国どこへでも出かけていく。個人も会社も効率や可視化される結果が求められるご時勢だが、そんな息苦しさに風穴を空けて、家族や友人、近所の人と楽しく食べる食事っていいな、自分の住む町も悪くないなと思える小さな誇りを、そういう価値を共有したい。


<この日、安藤シェフが作った料理>

彩り豊かなメインディッシュは、イノシシのモモ肉のローストと柿のピュレ、フレッシュのイチジクとブドウ、揚げたローズマリーとセージ。コンベクションオーブンで焼いた肉は提供直前にフライパンでグリル。

栗のスープカプチーノ仕立ての下には根セロリのピュレが隠れている。この季節、外で食べる時にふんわり、ほっこり温まるテクスチャーと味わい。上に添えたバルサミコ酢のチップスがアクセント。

赤カブと白カブのムース、ソラ豆のメレンゲ、ジロールのソテー、カブの葉のピュレ、レンコンなど根菜のチップスに、摘みたてのハーブと花を添えて。周囲の景色を映し出すプレゼンテーション。


レストランでは伝えきれないことを伝える

シェフたちを惹き付けるのは、厨房設備の充実だけではない。
「畑で野菜を採って、その場で料理を作れたら、僕たち料理人もうれしいし、生産者や食べ手もうれしいと思う。レストランだけでは伝え切れないことをきっと発信できると思う」と安藤シェフは言う。
メンバーのやりがいは、キッチントラックを通して、別の誰かのやりがいをも刺激している


摘みたての野菜やハーブを料理に生かす。畑の横など食材の生産現場を屋外レストラン空間にできるのもキッチントラックの醍醐味だ。食材イベントを産地で開くツールになる。







GoodmanKITCHEN

http://goodmankitchen.com/



◎ ライトプラン 15万円~
GKトラックだけを借りて自分たちで料理をという方におすすめの最も手軽なプラン。

◎ スタンダードプラン 25万円~
テントや音響設備などを省いてお食事会に必要な最低限設備がセットになったプラン。

◎ プレミアムプラン 40万円~
食事会に必要なほぼ全てがセットになったフルプラン。会場の装飾やメニューなど要望に応じてオリジナルプランを提案。


















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