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FEATURE / MOVEMENT

「和食;日本人の伝統的な食文化」――2

日本人の魚っ喰いはしょうゆが支える

2017.01.06

photographs by Tsunenori Yamashita

しょうゆがあるから刺身がおいしい、と言って過言ではありません。しょうゆとみりんで煮るから、皮付きの魚も臭みなく煮上がり、しょうゆとみりんのタレで焼くから、香ばしい照り焼きになる……。日本人の魚っ喰いは、しょうゆと共にあります。そんな日本の魚食文化におけるしょうゆの役割を、「分とく山」の野崎洋光料理長に語っていただきます。 しょうゆとみりんでおいしくなる魚料理レシピも伝授いただきました。


東京 南麻布「分とく山」野﨑洋光料理長
わかりやすく親しみやすい教えに定評があり、著書多数。 「分とく山」東京都港区南麻布5-1-5  03-5789-3838

昨今、刺身やてんぷらを塩で食べる風潮がありますが、私は断然しょうゆ派です。しょうゆの特性を考えれば、当然の選択と思うんですよ。まず、しょうゆには、塩味だけではない旨味があります。大豆や小麦を原料とした上で発酵によってもたらされる旨味です。それを私は“だし”的な要素として捉えています。加えて、熟成によって生じる香味もある。そういったしょうゆの旨味や香味が和食、こと魚料理において大きな役割を果たしてくれるのです。


では、魚料理におけるしょうゆの役割を見ていきましょう。刺身は、生魚を切るだけという食べ方です。だからこそ、鮮度を保つ締め方や、よりおいしく感じさせる切る技と道具が発達しました。ヅケにすれば、味が中まで染みて日持ちもする。切っただけで料理になるのはしょうゆの力が大きいと言えますね。一方、煮魚で語るべきは香り。しょうゆの香りが魚を包み込み、中まで染み込んで、味わい豊かにしてくれます。皮と身の間、骨と身の間までもおいしくしてくれる。魚臭さやエグミを消す役割も果たします。また、焼き魚では色ですね。照り焼きにすることで、こんがり色づき、旨味と香味がのってきます。


そして、揚げ魚に関してはてんつゆの存在が挙げられますが、私は今回、新たな提案をしてみました。しょうゆを霧吹きで直接吹き付けるのです。こうすることで、しょうゆが少量で済むため、衣をパリッと楽しめて、塩分を抑えられるメリットもあります。


日本の食卓にいつもしょうゆが置かれてきたことを私は誇らしく思っています。なぜって、最後の調味は個人に委ねられていることを意味するからです。自分の好みで調味できる自由さがある。口中調味とも通ずる日本人の食習慣と言えるでしょう。食卓でサンマの塩焼きにしょうゆをかけて食べる光景を見ていると、しょうゆが仕上げのソースなんだなと思います。私たちはいつだって、しょうゆの味と香りで味覚と心が満たされてきた、その証だと思うのです。



〈生〉鰤あられ和え




刺し身のおいしさはしょうゆあればこそ。今回は、しょうゆをゼリー状にすることで、ナガイモやダイコンと一緒に食材として魚に絡めて食べる食べ方を提案。「使い方が広がるでしょう」と野﨑さん。食感も楽しい。

■材料(2人分)
ブリ……100g   ◎ブリの代わりに、マグロでもよい。
ナガイモ……50g
ミツバ……4本
ダイコン……50g
しょうゆゼリー*……下記分量
白煎りゴマ……小さじ1

*しょうゆゼリーの作り方
いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ……80ml   米麹こだわり仕込み 本みりん……20ml   寒天……2g
1.いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆと米麹こだわり仕込み 本みりんを鍋に入れて火にかけ、ひと煮立ちさせる。
2.火を弱め、水でふやかした寒天を加えて煮溶かす。
3.型に流して冷まし固める。
■作り方
① ブリは2.5㎝角、ナガイモは皮をむいて1cm角、ミツバは茹でて3㎝長さに切る。ダイコンはおろして、軽く水気を絞る。しょうゆゼリーは5mm角に切る。  ② ①と白煎りゴマを和えて、器に盛る。



〈煮る〉おこぜ朦朧煮(もうろうに)




しょうゆとみりんの煮汁を染み込ませる煮魚は、日本人の心のふるさとのような料理。朦朧煮とは揚げ煮のこと。揚げてから煮ることにより、味わいに厚みが出て、ご馳走感もぐっと高まる。煮汁の染みた衣もおいしい。

■材料 (2人分)
オコゼ(切り身)……150g   ◎オコゼの代わりに、サワラやイサキでもよい。
小麦粉……適量
ユリ根……2片
ギンナン……4個
<煮汁>
米麹こだわり仕込み 本みりん……200ml
日本酒……120ml
いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ……40ml
■作り方
1 オコゼは一口大に切って、小麦粉をまぶし、170℃の油(分量外)で揚げる。
2 ユリ根とギンナンは茹でる。
3 鍋に煮汁の材料を入れて火をかけ、沸かす。アルコール分を軽く飛ばしてから、1を入れて煮絡める。
4 2を加え、軽く煮絡める。
5 器に盛り、白髪ネギ、針生姜、セリ(いずれも分量外)を適宜添える。



〈焼く〉利久麩 鰻射込み




フライパンでの照り焼きがポピュラーになって、照り焼きの幅が広がった。そこで、野﨑さん、こんな照り焼きを提案。鰻の蒲焼きを生麩に射込んで鍋照りに。お弁当のおかずにもぴったりです。

■材料 (2人分)
鰻蒲焼き……1枚(長さ約12cm)  ◎鰻は鱧でも可。
利久麩……3×5×12cm  ◎利久麩はキクラゲを練り込んだ生麩。ごま麩やよもぎ麩でもよい。
片栗粉……適量
サラダ油……適量
<タレ>
米麹こだわり仕込み 本みりん……100ml
日本酒……100ml
いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ……20ml
■作り方
1 鰻蒲焼きは1.5cm幅に切って、射込みやすいように冷凍庫で表面を冷やし固める。
2 利久麩を厚さ1.5cmに切り、断面中央に切り込みを入れる。
3 1の表面に片栗粉をまぶして、利休麩に射込む。
4 サラダ油を熱したフライパンで、表面にこんがり焼き目を付けるように3を焼く。
5 キッチンペーパーで余分な油を拭き取ってから、タレの材料を合わせて加え、中火で煮詰める。



〈揚げる〉桜海老網揚げ




「てんぷらには塩よりてんつゆ」をポリシーとする野﨑さん。衣にしょうゆを直接吹き付ける食べ方を提案。「薄くまんべんなく付くので、香りは立ちながらも、塩分が少なくて済みますよ」。

■材料(2人分)
網目状春巻き皮……2枚
大葉……2枚 
サクラエビ(生)……20g
片栗粉……適量
卵白(布で濾す)……適量
いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ……適量(スプレー容器に入れる)
■作り方
1 春巻き皮、大葉は2等分する。
2 サクラエビと大葉に片栗粉をまぶし、大葉でサクラエビを巻く。
3 春巻き皮の上面に卵白を刷毛で薄く塗り、2を包むように巻く。
4 170℃の油(分量外)で揚げ、器に盛る。
5 いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆを4に吹き付ける。





① キッコーマン「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」450ml
火入(加熱処理)をしていない、しぼりたての生しょうゆ。ライト感覚な味わいで、鮮やかな色とさらりとした旨さが特長です。

② マンジョウ「米麹こだわり仕込み 本みりん」450ml
米麹用の米を2倍使用し、濃厚な成分でコク豊かな味わいが特長。上品でやわらかな甘味です。


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