日本料理「一凛」橋本幹造料理長が行く 南さつまのお宝食材探訪記 | The Cuisine Press
2018.02.06
text by Rieko Seto / photographs by Junichi Miyazaki
日本各地を訪ね、「食材の産地やつくり手のストーリーも伝えていきたい」とカウンターの中から料理とトークを繰り広げる「一凛」橋本幹造料理長。今回で3 回目の訪問となる南さつまで、未来ある食材の魅力を語ります。
〝兄貴〞の心を捉えた南さつまの〝おいしい理由〞
海水にも負けない生命力 「南さつま長命草(ちょうめいそう)」
これまでに鹿児島県南さつま市を2度訪れ、この地ならではの多彩な食材と出会ってきた「一凛」橋本幹造さん。良質な食材作りに勤しむ若い生産者にとっては、その質を掛値なしに評価し、力強く背中を押してくれる頼もしい〝兄貴〞だ。
橋本さんが注目する南さつまの食材のひとつが、クレソンやセリにも似たすっきりした風味を持つ、南さつま長命草(ボタンボウフウ)だ。ポリフェノールやカルシウム、カリウム、ビタミンを豊富に含む、健康に良い食材としても知られている。
緑の葉が茂る六田農園の畑を訪れ、生産者の六田和志さんとともに座り込んだ橋本さん。「見て、この茎! ブロッコリーやケールのように、太い茎に栄養が蓄えられるから、そこから伸びる葉も旨い」と、やわらかな葉をパクリ。「葉を炒めるのもいいけれど、茎を笹がきにしてお浸しやかき揚げにするのもいいね」。
◎ 南さつま長命草お問い合わせ先
南さつま市 農林振興課地産地消係
鹿児島県南さつま市金峰町尾下1650
☎ 0993-53-2111
10秒に1本、目で見て釣り上げる 「双剣鯖(そうけんさば)」
リアス式海岸が美しい坊津の海で待っていたのは、自称サバフェチの橋本さんが惚れ込む双剣鯖だ。「つり鯖会」に所属する6名の漁師がすべて1本釣りで、水面にサバの姿を確認してから、一瞬で釣り上げる。これを手で触れることなく船内のいけすに送り、生きたまま港へ。出荷直前に首折(血抜き)・神経締めを行ない、氷水に漬けてから箱詰めされる。
「箱を開けて目を見た瞬間、サバにストレスがないのがわかります。身が締まっていて透明感があり、皮はやわらかく、サバを大切に扱う漁師さんの気持ちが伝わってくる。今日見て、納得しました」
◎ 双剣鯖お問い合わせ先
南さつま市 産業おこし部商工水産課
鹿児島県南さつま市加世田川畑2648
☎ 0993-53-2111
海の水と山の水が交わる場所 「釜たき塩 坊津の華(ぼうのつのはな)」
釜だき塩「坊津の華」の作業場は、そこから車で10分ほど離れた場所にある。山から流れ出たミネラルたっぷりの水が海中から湧き出る、美しい珊瑚礁の海から海水をくみ上げ、日高則夫さん、妻の美奈子さん、息子の大輔さんが塩を製作。約600Lの海水が入る5台の釜に薪をくべ、強火で1日8〜10時間、5日ほどかけて25〜30%程度になるまで水分を蒸発させる。これを仕上げ用の釜に移し、弱火で8〜10時間じっくり煮詰めて結晶化させ、一晩水切りしたのち乾燥させる。
できあがった塩は結晶が大きく、ザクザク軽快な食感で、口の中で溶けて旨味やまろやかさがじわじわ広がっていく。「人間性が出るんですよ。作る人の性格が荒いと塩も荒い。お父さん(則夫さん)はしびれるくらいかっこいいし、大輔は勉強家だし。笑顔も明るい!」。 橋本さんの心を捉えた南さつまの食材には、〝おいしい理由〞を生み出す生産者の情熱と努力、愛情が溢れていた。
◎ 手作り塩屋 坊津の華
鹿児島県南さつま市坊津町坊7472-81
☎ 0993-67-2383
【information】
日本料理「一凛」にて、南さつま長命草など南さつまの食材を使った料理を召し上がっていただけます。詳細はお店にお問い合わせください。*写真はイメージです。
◎ 一凛
東京都渋谷区神宮前2-19-5 AZUMA BUIL 2F
☎ 03-6410-7355
12:30 ~13:00 最終入店 / 18:00 ~20:00 最終入店
不定休(完全予約制)