食の文化遺産巡り うきは <番外編>
人気シェフが訪ねる、うきはテロワールとは?
2017.12.06
text by Shinichi Mojima / photographs by Sakura Takeuchi
良質な食材を生み出すポテンシャルの高さを「うきはテロワール」と名付け、新たなブランド構築に取り組んでいる、福岡県うきは市。その生産現場を「アジアのベストレストラン50」に選ばれた福山剛シェフが訪ねました。
水が育む、フルーツ王国
うきは市は、梨、ブドウ、柿、イチゴなど果物の一大産地。80年前に始まった果樹栽培の発祥地は、耳納(みのう)連山へと続く丘陵地にあった。「うきはで果樹栽培が盛んになった理由は、盆地で風当たりが少ないことと、肥沃な土壌。あとはなんといっても水ですね」と、観光農園「やまんどん」の末次研次さんは胸を張る。
「特にこの地域は名水百選に選ばれた清水湧水の上にあり、良質な水がふんだんに湧きます。渇水の年でも水が枯れたことはありません。だから1年を通しておいしい果物が実るんですよ」。たっぷりの果汁をたたえた梨。そのおいしさの秘密は水にあった。さらに、冬にも梨があると聞いて、福山シェフはびっくり。
「ある品種を加工用に冷蔵保存しています。冷蔵すると酸味が抜けて、すっきりした甘味になります」
果実がもたらす、特別な豚肉
次に向かったのは、筑後川の中州にある養豚場兼カフェ「リバーワイルド」。ここでは豚に果物を与えて育てている。「イノシシは山の果物を食べるから旨いっていうじゃないですか。その点、うきははフルーツが豊富にありますからね」と代表の杉勝也さん。出荷前の2カ月間、地元農家から提供される季節の果物を毎日与える。「桃を与えると、肉の香りが良くなり、ブドウは脂肪がくっきり入る。柿は旨味が深くなります」。
ハムやソーセージを作る工房で、杉さんが切り出した肉を見て福山シェフは「肉質が細かくてきれい。ずっと福岡県産のいい豚肉を探していましたが、今日やっと巡り会えました!」と興奮気味に話す。
「うきはテロワール」とは?
うきは市は、果物を中心とした農産物のブランド化に向け、
農業をとりまく環境を「うきはテロワール」と名付け、
“うきはブランド”の構築を進めている。
「うきはテロワール」7大自然要素
① 地形「耳納連山と扇状地」 水はけと保水性を両立した農業に優しい地形
② 気温「絶妙な温度バランス」 四季を通じて日較差が大きく、十分な低温遭遇時間も確保
③ 土壌「作物が健全に育つ土地」 扇状地は排水が良好で、深部の根まで呼吸が容易
④ 風 「心地よい山辺のそよ風」 耳納連山北側は最大風速が小さく微風地帯
⑤ 水 「豊富なうきはの恵水(めぐみ)」 ミネラル分を含んだおいしい水
⑥ 雨 「るり色の雨による水分補給」 適度な夕立で、果樹の水分補給と暑さの調整が可能
⑦ 地理「筑紫の玄関」 筑後川が筑紫平野に流れ込む玄関口。地理的に都市圏に近い
さらに、米、酢、日本酒、茶、麺など、うきはテロワールが育む豊かな食材と生産者に出会った福山シェフ。「うきはの皆さんの思いを表現する、うきはらしい料理を作りたい」と、さっそく、来年うきは市で開催されるMEETUPで出す料理を考案中だ。福山シェフが手掛ける“うきはテロワールづくし”のフレンチとはいかに!? 期待が高まるばかりだ。
◎ 「ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール ゴウ」
福岡県福岡市中央区西中洲2-26
☎ 092-724-0955
18:00~24:00 日曜休
西鉄天神大牟田線西鉄福岡駅より徒歩10分
http://www.gohfukuoka.com/
うきはテロワールに関するお問い合わせ
◎ うきは市役所 ブランド推進課
☎ 0943-76-9029
https://ukiha-terroir.jp/
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