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JOURNAL / JAPAN

日本[福島] 【ふくしまプライド。ツーリズム】

この土地だから出会える味がある

2021.02.15

左から 米農家の須田正一さん、「摺上亭大鳥」料飲部長の飯沼武彦さん、「HAGI」オーナーシェフの萩春朋さん

三つの異なる気候風土を持つ福島。それぞれが食材の宝庫と呼ばれる三地域で共通するのは、たゆまぬ努力を重ねながら「旨い」を追求する人の力です。ふくしまの生産者たちが、手間を惜しまず、たっぷりと愛情を注いだ自慢の逸品を「ふくしまプライド。」と総称しています。熱い思いで「旨い」を作る生産者と「旨い」を旅人に提供する宿「摺上亭大鳥(すりかみてい・おおとり)」を、いわきのフランス料理店「HAGI」オーナーシェフ萩春朋さんが訪ねました。



福島牛

福島では昔から米作りで出た稲わらを餌にし、牛糞をたい肥にして田んぼや畑で利用しながら牛を飼う農家がありました。佐々木利定さんは今なお、循環型農業で「福島牛」を生産しています。「繊維の多い稲わらを咀嚼することで牛が丈夫になるし、稲わらに棲む菌も良い作用をしているのだと思います」


そう語る佐々木さんは、繁殖農家から買ってきた仔牛に自分の田んぼで出た稲わらと穀物を与え、2年近くかけて倍以上の体重700-800キロに育てて出荷しています。現在肥育中の牛は85頭ほど。育て上げるまで、毎晩11時と夜中3時の牛舎の見回りは欠かせません。「毎日のことだからお母ちゃんと温泉行くとかはできないよ」と笑います。


肉質等級、A4等級以上の「福島牛」はまさに品質・風味ともに一級品の証。なかでも佐々木さんが愛情を込めて育てた牛はその質の高さから、数多くの賞を受賞し、市場でも高値で取引されています。「赤身のモモ肉にもサシが入っていてすごく柔らかい。すね肉は良いスープが取れるし、固い部位も焼肉素材に使えます。和牛の良さが丸ごと楽しめるのが福島牛の凄さです」と萩シェフ。


◎福島牛
https://www.fukushima-gyu.com/



福、笑い(福島県ブランド米)

左から 米農家の須田正一さん、「摺上亭大鳥」料飲部長の飯沼武彦さん、「HAGI」オーナーシェフの萩春朋さん

新しい品種づくりに積極的な福島県は、食味ランキング「特A」獲得銘柄数3年連続日本一。開発に14年かけ、2020年に初めて収穫された「福、笑い」もまた2021年の本格販売に向けて、期待が高まる新ブランド米です。米農家の須田正一さんは「福、笑い」の試験栽培を行った13件の生産者のうちのひとり。放射性物質対策を詳細に規定した「ふくしま県GAP(FGAP)」認証を取得しています。

「ほかの品種と違って『福、笑い』は、収穫時期になっても青々とした止め葉(13番目の葉)が稲穂より上にきゅんとのびているため、収穫まで光合成により養分が蓄えられるから粒が大きく粒揃いも良い。炊き上がったときに香りが立ち上がり、甘みも強くておいしい米です」


須田さん一人でも作業できるよう田植えや稲刈りの時期が異なる品種を選んで作付けし、今は8種類の米を作っています。「直販のお客さんにはいろいろな品種の味の違いが楽しめると好評です。でも、いくらおいしい米を作っても、おいしいを100とすると農家が提供できるのはせいぜい50だと思うんですよ。精米方法や炊き方でもお米の旨さは変わってくるので」と須田さん。米の乾燥具合や精米歩合をどうするのか。食べ手が求めるおいしいに応えようと今もさまざまな実験を重ねています。


◎福、笑い
https://fukuwarai-fukushima.jp/



あんぽ柿

「あんぽ柿」は、橙色でぽってり柔らかな干し柿。なだらかな丘に柿の木畑が広がる里山、宮城県との県境伊達市五十沢(いさざわ)地区が発祥の地です。「あんぽ柿」の生産者、曳地一夫さんは言います。「この地域では昔から、冬になると干し柿をつくっていましたが「あんぽ柿」が誕生したのは大正時代。大正から昭和にかけての経済恐慌を乗り越えるべく村の特産にと、干しブドウ作りで使われる、硫黄燻蒸の方法を取り入れて、それまでの黒い干し柿とは違う橙色の干し柿を作って成功したのが始まりです」


子供のころから柿剥きを手伝って、手を真っ黒にして学校に行っていたという曳地さんが、勤めをやめてあんぽ柿生産に専念したのは22年前。風評被害からも脱し始めた2019年には台風による阿武隈川の氾濫で川沿いの畑が被害に。「今年は濁流に飲まれた木も含めて豊作で、5万粒くらいを出荷予定です」


皮を剥いた柿を干す「柿ばせ」にのぼると、ずらりと吊るされたあんぽ柿が陽を浴びてキラキラ光っています。「糖度を測って17-18度なら収穫して干しています」。雪が降る前の乾いた冷たい空気で重量が1/3になるまでじっくり乾燥させると糖度が3倍になり、あの甘くてジューシーな食感が生まれます。丹精込めて作るあんぽ柿は季節限定の宝物。出荷を待ち望んでいるお客さんが全国にいるそうです。


◎まちの駅・直売所あぐりマート
https://isazawa-anpo.com/



福島で活躍する料理人同士の交流

「摺上亭大鳥」料飲部部長 飯沼武彦さん×「HAGI」オーナーシェフ 萩春朋さん


画像提供:摺上亭大鳥

飯坂温泉は鳴子・秋保と並ぶ奥州三名湯のひとつ。福島駅から車で20分のアクセスの良さ、共同浴場や日帰り温泉を提供する旅館が多いことから、福島県内外の人々の憩いの場として愛されています。奥飯坂にある「摺上亭大鳥」はJAグループの強みを生かした、地元食材で作る料理に定評があります。「摺上亭大鳥」料飲部長の飯沼武彦さんとレストラン「HAGI」の萩春朋シェフが、福島の食について語り合いました。


「摺上亭大鳥」料飲部長 飯沼武彦さん

飯沼:まずは福島県産の食材をおいしく食べていただきたくて、ご飯は会津産コシヒカリを玄米で仕入れその日使う分ごとに毎日精米して大きな釜で炊き上げています。250人規模の旅館では、個人店のように出来立ての料理をお出しするのは難しいのですが、新ブランド米「福、笑い」は冷めてもおいしいと聞きますので、おにぎりにして提供すると喜ばれると思いました。


「HAGI」オーナーシェフ 萩春朋さん

萩:うちはフランス料理店ですが、これまで100人以上の生産者さんの米を使ってきました。福島県は特Aを取った米が何種類もあって、それぞれに生産者さんの思いが込められているからとてもおいしい。「福、笑い」は試験的に使わせていただいたことがありますが、迫力のあるおいしいお米です。今後、いろいろな可能性が考えられますね。

飯沼:小さい焼きおにぎりを作って、上にさっと炙った福島牛のサーロインをのせ、わさびと刻みみょうがを添えて出汁をかけて提供してみたいですね。

萩:福島牛A5ランクのモモ肉は赤身なのに柔らかく本当においしいですね。

飯沼:福島牛は脂が溶けると旨みが際立ちます。福島各地の郷土料理が味わえる「福島お膳」では、ブランド豚「麓山高原豚」と並べて豆乳しゃぶしゃぶで提供しています。

萩:各地の郷土料理が一度に味わるのですか?

飯沼:はい。浜通り「豆腐味噌漬け」、中通り「いか人参」、会津「にしん山椒漬」の先付から始まる11品を福島県産の食器で提供し、各地域の特色ある郷土料理を体験していただきたいと考えています。


飯沼:日本酒バー「香林」では県内全酒蔵の日本酒を揃えています。地元福島の食と酒を、ここ福島の空気の中で楽しんでいただくことが一番の旅の贅沢だと考えています。

萩:僕も地元食材を活かした料理を通して、生産者さんの思いを伝えたいと常々考えています。食材の産地を記した簡単な地図をメニューに添えて、お客さんに楽しんでいただいています。





◎摺上亭大鳥(すりがみてい・おおとり)
福島県福島市飯坂町字中ノ内24-3
☎024-542-4184
https://www.surikamiteiohtori.com/

◎HAGI
福島県いわき市内郷御台境町鬼越171-10
☎0246-26-5174
LUNCH 12:00~/DINNER 18:30〜(昼・夜ともに完全予約制)
http://www.hagi-france.com/


◎ふくしまプライド。
https://fukushima-pride.com/




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