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JOURNAL / JAPAN

日本[福島] 【ふくしまプライド。ツーリズム】

豊かな食材と作り手の想いを料理に

2021.03.11

「風望天流 山水荘」女将(専務取締役) 渡邉いづみさん

時は用明天皇2(587)年、病に倒れた秦河勝(はたのかわかつ)の夢枕に聖徳太子が立ち「岩代国の突き湯に霊湯あり」と説いたことで有名になったと言われる土湯(つちゆ)温泉郷は、福島市内から車で30分。裏磐梯高原や会津へとつながるドライブルートとしても人気です。清流を間近に望む「風望天流 山水荘」は、源泉かけ流しの温泉と地産地消を打ち出した料理が自慢のお宿。


女将の渡邉いづみさん(以下女将)と常務取締役の渡邉利生さん(以下常務)、そして今回一緒に生産者さんを巡った料理長の志田勇さんと「HAGI」萩春朋シェフに、福島ならではの料理の魅力と楽しみ方をお話ししてもらいました。

―風望天流 山水荘のお料理について大切にしていることを教えてください。

女将:私が嫁いだ頃は、旅館の食事といえばお膳が並ぶ宴会料理が主流でした。現在は「ここでしか食べられない料理」が求められており、地元福島の豊かな旬の食材で、四季を感じるコース料理を提供しています。


「風望天流 山水荘」女将(専務取締役) 渡邉いづみさん

志田:苦手な食材やアレルギーなど、お客様からご要望を事前にお伝え頂くケースが増えました。女将と相談しながら、より喜んでいただける料理を考えます。

萩:僕の店でもお客様の要望には、なるべく応えるようにしています。工夫が必要ですよね。


「HAGI」萩春朋さん

女将:例えば、生魚が苦手な方には、無農薬の野菜を刺身に見立てて提供してみる。ベジタリアンの方には野菜を生で出したり火を通したり、いろいろな調理法で変化をつけるなど。さらに、その野菜の特徴や作っている人の話なども添えると、喜びが倍増しますよね、きっと。

志田:実際に生産者を訪ねると、皆さんの熱い気持ちが伝わってきます。「その気持ちに応えたい」という思いを強くしました。


「風望天流 山水荘」料理長 志田勇さん

萩:「ニッケイファーム」大竹さんの茎が主役のほうれん草や、結城さんの里芋など、生産者の思いをのせることで野菜がご馳走になります。


常務:宿泊客にこの地域の魅力を伝えるのも、旅館の大事な仕事です。生産者さんと旅館とが、料理を通じてお互いにつながると、相乗効果が期待できます。


「風望天流 山水荘」常務取締役 渡邉利生さん

萩:野菜を刺身に見立てるには料理長の包丁のテクニックが生きますね。色とりどりの野菜を盛り合わせて、しゃぶしゃぶにしてもいいですね。コースの中の一皿であっても、生産者を感じる食材の料理があると、地域の魅力がぐっと特徴づけられます。

―水がとてもおいしいのも旅館の特徴ですね。

女将:先々代がこの旅館を開くときに、たんがら山(厚樫山)の奥深い岩盤からの湧水をパイプで引いてきました。今でも、その水を料理にも使っています。もちろん施設全ての蛇口からは、たんがら山の湧水が出ます。

常務:軟水で知られる富士山の天然水より硬度が低い、超軟水です。この水だとお茶もご飯も味が違うとよく言われます。

萩:どうりで。美味しいのでごくごく飲みましたよ。野菜の煮物を軟水でつくると、味がよく染みます。野菜のしゃぶしゃぶは「水」推しが良いかも。それと水まんじゅう!この水で作ったらおいしいはずです。軟水は宝ですね。

女将:福島は野菜が豊富ですし旬の野菜は体にも良いので特に女性のお客様には喜ばれます。それとインバウンドの方に好評なのが自家製の漬物と糀に漬けて焼いたお肉です。発酵食は日本酒とも合うと、とても喜ばれています。


山水荘にはおいしい水があり、地元の生産者が精魂込めて作ったおいしい野菜が食べられる。旅人にとってこんな贅沢なことはありません。この話し合いの後、2021年1月。山水荘では「水まんじゅう」の提供を開始。五臓六腑に染み渡るやさしい水で体の中から、そして聖徳太子ゆかりの湯で体の外から健康になれますね。




地元福島の生産者を巡るたび新しい発見があるという萩シェフ。今回出会った食材を使った料理2品を作ってくれました。


志田料理長と談笑しながら、キッチンに立つ萩シェフ。


今回の旅で出会った優れた食材の数々を使って。


まず1品目。茹でたニッケイファームのほうれん草の茎と人参を、里の放牧豚のロース肉で巻いてフライパンで焼きました。結城農園の里芋、素揚げした阿久津曲がりねぎ、ケール、春菊、塩こうじに漬けて焼いた赤かぶと組み合わせ、剪定したリンゴの枝に盛り付けています。

2品目では、福島の麓山高原豚を使用。肩ロース塊に塩を振り、フライパンで表面を焼いた後、まるげん果樹園で剪定したリンゴの枝で軽く燻製しオーブンへ。



ニッケイファームの人参は、麹和田屋の塩こうじに漬けてから焼き、葉はてんぷらに。さらに蒸して塩とバターで味をつけたピュレに。淡い薫香が甘くて味の濃い人参ピュレと好相性です。




◎風望天流 太子の湯 山水荘
福島県福島市土湯温泉町字油畑55
☎024-595-2141
http://www.sansuiso.jp/

◎HAGI
福島県いわき市内郷御台境町鬼越171-10
☎0246-26-5174
LUNCH 12:00~/DINNER 18:30〜(昼・夜ともに完全予約制)
http://www.hagi-france.com/


◎ふくしまプライド。
https://fukushima-pride.com/




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