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JOURNAL / JAPAN

強い粘りが信条。蓮根を余すところなく食べ手に届ける。加賀蓮根

[石川]未来に届けたい日本の食材 #31

2023.08.28

text by Michiko Watanabe / photographs by Daisuke Nakajima

変わりゆく時代の中で、変わることなく次世代へ伝えたい日本の食材があります。手間を惜しまず、実直に向き合う生産者の手から生まれた個性豊かな食材を、学校法人 服部学園 服部栄養専門学校理事長・校長、服部幸應さんが案内します。

連載:未来に届けたい日本の食材

加賀野菜の一つ、加賀蓮根はもっちりと粘りが強く、節間が詰まっているのが特徴。蓮根はクワ掘りと水掘りがあるそうですが、河北潟で作られる蓮根は水圧で収穫する水掘り。河北潟干拓地で3ヘクタールの蓮根畑を栽培する「蓮だより」の川端崇文(たかふみ)さんを訪ねます。

川端崇文さんは今年(2018年取材当時)40歳。様々な業務がある中、「一番好きなのは収穫作業」という。


私は生きている実感が欲しくて脱サラをし、この世界に飛び込みました。独学でしたから、周囲の農作業を見て見様見真似で始めました。ところが、農薬をまいて10秒もすると、生き物の死骸がうわっと浮いてきた。これは蓮根にも人間の体にもよくないだろうと思い、農薬を使用しない栽培方法にしました。農薬不使用の蓮根農家は珍しいと聞きます。でも、子供たちの未来のためにも大事なことだと思いました。もう12年になります。

蓮根を植えるのは4月中旬から。1坪1本が理想です。種を蒔くのではなく、種蓮根を植えるのですが、地下茎でどんどん枝分かれし、横に伸びていくから場所が必要なんです。栽培して気がついたのは、種蓮根から生える蓮根は、色も形もまったく同じってこと。クローンみたいなものですね。いい種蓮根を見極めることも大事ということです。

収穫は8月から翌春の5月まで。8、9月は新蓮根で、まるで梨みたいな食感。生食もできます。夏は水の上に出ている茎と葉を刈り倒してしばらくおくと、白いきれいな蓮根に変わります。また、秋になって葉が枯れるとムチンというデンプン質が出てくる。これが加賀蓮根の大きな特徴であるもっちり感を生むんです。ちょっと切ってみますね。切り口から糸が出るでしょ。引っ張るとどんどん長くなる。粘りがそれだけ強いということです。これには土作りが大切です。土を耕し、ワラなどの有機肥料をたっぷりあげて、微生物の活性化をはかり、地温を上げて、その土から蓮根に欲しいものを吸ってもらうというやり方です。

(写真左)水圧の力で収穫する「水掘り」の蓮根。蓮根は茎の一部が肥大化したもの。地中深くではなく横に寝るように伸びていくため、栽培には広大な敷地が必要になる。収穫はクワではなく水圧の力で表面の泥をよけ、掘り出していく。
(写真右)節目からは小さな蓮根がさらに伸びる。

市内から車で20分。海と山、広い空に囲まれた河北潟の蓮根畑。夏は出荷に合わせて深夜2時から収穫を始める。月や星明かりの下で行う農作業は自然と一体になった感覚に包まれるそうだ。一方冬は吹雪で手元しか見えない中収穫することも。

(写真左)畑に膝をつき、肩まで水に浸かりながら、水圧で泥をよけ収穫する。
(写真右)収穫した蓮根は水洗いをした後、節目にある黒い根を一つひとつきれいに落としてから出荷される。

自分でも納得のできる蓮根が出来たら、今度は販路の開拓です。東京の錚々たるシェフたちに、何の紹介もなく、飛び込みで売り込みに行きました。思いがけず、お取り引きいただけるようになり、驚いています。蓮根は掘り立てが一番なので、朝採れをすぐに発送しています。

蓮根の未来のためにできることはないかと、氷温熟成にも挑戦中です。凍る直前まで冷やすことで、細胞が身を守ろうして糖度と粘度がアップする。食味が増すんですね。また、少量ながら蓮根チップスも製造しています。穴があるので壊れやすいため、厚切りのものはよくあるのですが、うちは薄さにこだわって作りました。1袋に蓮根1節分にあたる 300グラムを使い、塩は能登の海塩で。おかげさまで好評をいただいています。

まだまだ挑戦したいことが山積み。自分も成長しながら、頑張っていきます。

縁起ものの蓮根は贈答用の需要も多く、特に年末は引き合いが多くなる。

(写真左)小さな蓮根は家庭で気軽に使えるよう小袋につめて。こちらも人気。
(写真右)蓮根チップスはギリギリの薄さを模索して生まれた。



◎蓮だより
石川県金沢市才田町乙183-2
☎080-2958-1190
https://hasudayori.jp/

(雑誌『料理通信』2018年1月号掲載)

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