America [New York]
日本の“隙間使い”に刺激され、駅構内に本格バー誕生
2021.07.15
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text by Akiko Katayama
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ニューヨークの象徴といえば地下鉄。22の路線が24時間市内をくまなく走り、1日平均550万人が利用する、市民の大動脈といえる存在だ。しかしその機能は人々の運搬に専念され、駅の商業施設はというと、せいぜいプラットフォームにある小さなキオスク程度である。
ところが2020年10月、1番線「28丁目」駅への階段途中に本格バーが出現。店名「ラ・ノチェ(La Noxe)」の小さなサインがかかったドアは見過ごされがちだが、予約待ち2000人超という人気ぶりだ。
隠れ家バーの仕掛け人はジェイ・ペリー(Jey Perie)。南フランス出身で、バルセロナとニューヨークを経て、ファッション・ビジネスのクリエイティブ系の仕事で日本にも5年間の在住経験を持つ。
「東京の空間使いはとても刺激的です。駅構内のすし屋だったり、オフィスビルの4階の喫茶店だったり、他の都市では考えられない意外な場所に、洗練されたビジネスがある」
そんな思いを抱えてバー経営の物件を探す中、偶然この地を発見し、瞬時に契約を決めたという。1926年に理髪店が入居して以来、様々なテナントが入り、70年代に音楽スタジオが入ると地下鉄に通じる入り口は塞がれて壁になっていたが、ペリー氏が州政府と交渉して再びドアを開いた。
カクテルでくつろいだ後、フロアを仕切るペリー氏の見送りでゆったりドアを抜けると、一瞬にして雑然とした地下鉄の世界に引き込まれる。このギャップが、隠れ家バーの価値を比類なきものにするのだ。
(写真)マンハッタンの激流のような時間の流れを緩めてくれる、レトロシックな10席の店内。メニューには、季節替わりのオリジナルカクテル8種(各17ドル)や、稀有な自然派ワインなどが並ぶ。
◎La Noxe
315 Seventh Avenue, New York, NY 10001
18:00~翌4:00
無休
http://lanoxenyc.com*1ドル=109円(2021年6月時点)