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America [New York]

深刻化する飲食従事者の“心の痛み”を同業者たちがサポート

Aug 06, 2021

  • text by Kuniko Yasutake / photograph by Restaurant After Hours



  • 2021年7月現在、州人口の6割強が新型コロナワクチン接種済みのロードアイランドで、パートタイムの料理人として働くトム(仮名)は、「まだパンデミックの終息なんてほど遠い」と言う。以前にうつ病を経験した彼が指摘するのは、コロナ禍で経営存続の努力を続ける飲食店勤務者の心の問題が深刻化していることだ。

    2018年6月、米国の人気セレブシェフ、アンソニー・ボーデイン(Anthony Bourdain)氏が自ら命を絶ち、彼がうつ病に苦しんでいたことがニュースになると、SNSに“#chefmentalhealth(シェフメンタルヘルス)”が登場し始めた。同年12月には、ニューヨークを拠点とする「レストラン・アフター・アワーズ(Restaurant After Hours)」という非営利団体が発足し、ホスピタリティ業界で働く人たちのメンタルヘルスを無料でサポートするサービスが始まった。

    主催者のシェフ、ジア・シェイク氏自ら、過去のアルコール・薬物中毒を公表し、「客を明るくもてなす仕事の裏で生じる心身の疲弊を語ること=シェフの弱さの表れではない」と訴える。

    コロナ禍にはさらに支援プログラムを強化し、2021年2月から12週に渡ってZoomによるサポートグループ・ミーティングを開催。セルフケア、マインドフルネス、怒り、トラウマ等のテーマについて、参加者が話し合える場所を設けた。好評を得たこの企画は今後も開催する予定だ。

    シェフが心の闇に向き合う勇気を応援する団体は、実は米国だけでも10以上、欧・豪州にも複数存在し、パンデミックを機に様々なオンラインサービスが提供されるようになった。飲食店の再開後、離職者増加などの苦境に伴う精神的な悩みについて同僚と話し合えなくても、それぞれのニーズに合ったサポートを同業者に仰ぐ機会が増えている。

    (写真)この団体のホームページで最初に目に入るのは、“LOVE MUST NEVER BE SILENT”と“We are all in this together”という言葉。愛とは心の問題について沈黙を破ること、コロナ禍や心の痛みの只中でもあなたは一人じゃない――というメッセージを伝えている。


    ◎Restaurant After Hours
    https://www.restaurantafterhours.org/

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