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JOURNAL / 世界の食トレンド

America [New Jersey]

はじまりは柚子愛 脱サラ移民のレア柑橘園

2022.02.14

America [New Jersey] はじまりは柚子愛 脱サラ移民のレア柑橘園

text by Kuniko Yasutake / photograph by Eater

秋田県北部と緯度を同じくする東海岸ニュージャージー州の町に、アメリカ市場では希少なユズ、スダチ等の柑橘類栽培を成功させた果樹園「ブーミ・グロワーズ(Bhumi Growers)」がある。インド出身のオーナー、マリク夫妻は金融機関勤務だった20年前にNYCの和食店でユズと出会い、即ぞっこんに。その後、買い求めたユズ玉の種が12年かけて結実した喜びをきっかけに、農業未経験にもかかわらず“レア・シトラス農家”への転身を決意。高知県のユズ生産者や、スイスのビニールハウス柑橘農家とも交流を深め、試行錯誤を重ねている。

19世紀末に日系移民の手で北米に渡ったといわれるユズは、1世紀後には「Yuzu」として米国市場に紹介され始め、今や和食の枠組みを超え様々な食のシーンに登場するまでとなった。しかし、一般的なアメリカの消費者がユズの風味を楽しめるのは、瓶入り果汁や乾物、または加工調味料。米国が日本産青果ユズの輸入を禁止している上に、国内のユズ生産も極端に限られているため、フレッシュな果実の需要は高まるばかりだ。

厳しい冬を越せない苗木も少なくないが、それゆえ柑橘類の産地特有の害虫被害が防げることは予期せぬメリットだったそう。農業の知識不足は深い研究心で補いつつ、現在16種類の柑橘類を栽培し、東海岸を中心に全米各地のレストランや食品加工業者に卸している。パンデミックの苦境打開策として、一般消費者向けにオンラインショップも開設。果実や生花販売のみならず、シロップや調理用エクストラクトなどの加工品開発も手がけ、米国産希少シトラスの認知度アップを図っている。

(写真)Bhumi (ブーミ)とはヒンディー語で「母なる大地」。コロナ禍に打撃を受けたレストランを応援すべく、希望店舗への無料提供という愛あるサービスも評価された。



◎Bhumi Growers
ユズ 17.95ドル、スダチ 22.99ドル、フィンガー・ライム 55ドル/それぞれ1ポンド(454g)あたり
柑橘エクストラクト各種 14.99ドル/30ml~、キンカンシロップ 10.99ドル/118ml~
https://www.bhumigrowers.com/
Instagram: @yuzu_lemons

*1ドル=115円(2022年1月時点)

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