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JOURNAL / 世界の食トレンド

America [New York]

“昭和のジャズ喫茶”をヒントに生まれた話題のリスニングバー

2022.05.12

text & photograph by Akiko Katayama

カジュアルなダイブバー(大衆酒場)から世界の先端をゆく高級店まで、多彩なバーが林立するニューヨーク。その中で2022年3月、ブルックリンに開いた「イーヴスドロップ(eavesdrop)」が話題だ。


コンセプトは“リスニングバー”。音楽好きの3人のオーナーは、昭和初期の日本で生まれ60年代に隆盛したジャズ喫茶のすばらしさを耳にし、ニューヨークにもそんな空間を作ろうと決意。しかしコロナの影響で、実際に日本のジャズ喫茶訪問ができなくなり、「それならこの街ならではのスタイルで、最高の音楽空間を作ろう」と生み出したのが同店だ。

「音がするから新聞の持ち込みは禁止」といったような、かつてのジャズ喫茶の厳粛性はなく、音楽ファンが友人宅のリビングで、レコード盤を気ままにかけて楽しむような感覚を重視。音楽マニアやDJが目立つが、近所に住む一般客も、豊かな寛ぎ空間を求めて多く来店するという。

店内はカクテルバーとラウンジ風のリスニングスペースに分かれ、音の反響・拡散効果を巧みに生かした特注のサウンドシステムで、店内のどこにいてもクリアな音に包まれる。一般に、カクテルバーではBGMと競い合って会話のボリュームが上がり、喧騒感が高まりがちだが、同店では音楽を存分に体感しながら会話もしっかり楽しめる。

オーナーの1人でフード&ドリンク担当のマックス・ダウリビー氏は、日本人のハーフ。そのため、オリジナルカクテルやスナックには、日本産ジンをベースにしたカクテルや、燻香と味噌の風味が印象的な「ニンジンのロースト」をはじめ、和の風味を生かした品も目立つ。

毎週木曜から日曜は、夜8時からゲストDJが音楽を仕切る。今後は“お客の持ち込み盤アワー”や“アマチュアDJナイト”他、多彩なプログラムを通じて、サウンドを核にしたコミュニティ作りを目指す。

(写真)マンハッタンと並び、独自の文化を放つブルックリンの一角に立地。中でも今、注目の店が急増するグリーンポイントにある。



◎(eavesdrop)
674 Manhattan avenue, Brooklyn New York 11222
カクテル 8~18ドル、フード 6~19ドル
https://www.eavesdrop.nyc/

*1ドル=129円(2022年4月時点)

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