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JOURNAL / 世界の食トレンド

ラマダン期間の夜、イスラム圏の食文化を楽しむ屋台ツアーが人気

Australia[Sydney]

2024.06.13

ラマダン期間の夜、イスラム圏の食文化を楽しむ屋台ツアーが人気

text by Akiko Ganivet / photographs by Taste Tours
(写真)シドニー西部ラケンバの有名店「ラマダン・エディション(RAMADAN EDITION)」のラクダ肉バーガー(15豪州ドル)は、ガラムマサラ、シナモン、チリパウダーなど様々なスパイスで味付けし、食感も味も牛肉に似てジューシーだ。もちろん、イスラムの教義が許すと畜方法で処理されたハラール肉。

2024年4月上旬、シドニー中心部から南西に車で1時間の移民の街ラケンバの駅前は、夕方から早朝3時まで相当な賑わいを見せていた。毎年1カ月のラマダンの期間中、日中の断食を終えたイスラム教徒たちが、日暮れと同時に活気溢れる屋台に群がるからだ。ナイトマーケットにはイスラム教徒だけでなく観光客も多く訪れる。中東やアジアの食べ物に慣れていない観光客には、どの屋台に並んでいいかわからないものだが、フードツアーに参加すれば、列を回避しながら複数の屋台を訪ねることができるとあって人気を呼んでいる。

「テイストツアーズ(TASTE TOURS)」が主催する2時間半のラマダン夜市ツアーは特に人気で、参加費は大人1人109豪州ドル。参加者はラクダ肉のバーガーなどを頬張りながら、その由来や、シドニーに多く住むレバノンやマレーシア出身のイスラム教徒が、食文化にどのように影響してきたかなどを学べる。


ラマダン・ナイトマーケット・ツアーの参加者

(写真)ラマダン・ナイトマーケット・ツアーの参加者は、シドニー各地、海外からも訪れる。シリアやミャンマーなど、普段あまり耳にしないイスラム諸国の食文化の話が興味深いと、ネットで大好評。

テイストツアーズは、シドニーで様々なフードツアーを開催するチャリティ団体で、職に困っている難民を研修し、ツアーガイドを育ててきた。創始者のアンズウォースさんによると、インド、中国、ベトナムなどから各国の移民が共存し、最も多文化を誇るシドニー南西部で9年前にツアーを始めたのがきっかけだ。「食べ物を通して、人と人との繋がりを深めたい」と熱く語る。

ナイトマーケットには毎年100万人以上訪れるが、ラマダン明けの祝日イードの4月8日は、いつもより客もスタッフもハイテンション。イスラム教徒は基本的に禁酒なので、もちろん酒は一切販売していない。今秋シドニーは暖かかったから、日中水も飲まずに辛い断食を乗り越えた人たちの喜びもひとしおなのだろう。

インド北部カシミール地方のチャイ(5豪州ドル)は、鮮やかなピンク色。

(写真)インド北部カシミール地方のチャイ(5豪州ドル)は、たっぷりのミルクと紅茶、砂糖、ピスタチオに加え、重曹による化学反応により鮮やかなピンク色。2024年はヒット映画にちなんで“バービー・ピンク”と宣伝されていた。

マレーシアやインドネシアの屋台で見かけるお好み焼きのようなムルタバ

(写真)マレーシアやインドネシアの屋台で見かけるお好み焼きのようなムルタバ。この店では鶏肉、卵とタマネギが手作りロティの中に包まれている。



*1豪州ドル=104円(2024年6月時点)

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