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JOURNAL / 世界の食トレンド

日本食ブームが加速するロンドンにすし&和食調理学校が開校

England [London]

2025.01.06

日本食ブームが加速するロンドンにすし&和食調理学校が開校

text by Yuka Hasegawa
すしの授業では、伝統的な握りずしから、ヴィーガンずし、いなりずし、郷土に根付いたものなど、様々なすしをカバー。柳刃や出刃など和包丁の使い方も丁寧に教え込まれる。

2021年に欧州1号店をロンドンに出店して以来、現在は市内に9店舗を構える「丸亀製麺」。街中にはラーメン店が点在し、高級百貨店「ハロッズ」のダイニングホールにもラーメン・カウンターが陣取るほど、ラーメンは今やロンドンに浸透している。加えて昨今はカツカレーがブームになるなど、英国人の日本食熱は一向に衰えを見せない。

この日本食人気をさらに加速させるかのように、2024年9月、西ロンドンのホワイトシティーに、東京・世田谷区の「東京すし和食調理専門学校」がロンドンに分校を開校して話題だ。

同校は、日本で唯一和食に特化した認可校として2016年に開設。
「日本の専門学校は、入学に日本語能力試験2級(N2)以上が求められます。日本食を学びたいが、日本語がわからないのでどうすればいいか、海外で提携校を作れないか、などの問い合わせが東京校に多く寄せられ、それなら思い切って我々が海外に開校しようということになりました」と語るのはロンドン校校長、渡辺勝氏。週4日6カ月のフルタイム・コースは、調理技術のみならず、一汁三菜といった和食の伝統や歴史、すしや伝統的な和食、ラーメンやトンカツ、オムライスなどのカジュアルな日本食メニューを総合的に学べる多彩なカリキュラムで構成されているという。

ロンドン有数の調理学校を卒業し、さらに料理の幅を広げるシェフを目指す学生から、料理愛好家の主婦まで、様々な国籍、バックグランドの受講生たち。写真右奥(ネクタイ着用の2人)は、日本から招聘された経験豊富な講師、志田氏(左)と山本氏。
ロンドン有数の調理学校を卒業し、さらに料理の幅を広げるシェフを目指す学生から、料理愛好家の主婦まで、様々な国籍、バックグランドの受講生たち。写真右奥(ネクタイ着用の2人)は、日本から招聘された経験豊富な講師、志田氏(左)と山本氏。

「ロンドン校では、様々な国籍、食文化を持った人々が、日本食を基軸に創作料理を作る授業も組まれています。それぞれのクリエイティビティを反映させた和食を楽しんでほしい、そこに和食の将来があると考えています」
事実ロンドンでは、地元のシェフたちが自らの日本食体験とオリジナリティを融合させ、新しい日本食を提案している。

フードライター兼シェフのティム・アンダーソン氏は、“東京”や“ラーメン”、“イザカヤ”などをテーマに、日本食に関する料理本を7冊も出版しているパイオニア的な人物だ。

ティム・アンダーソン氏。アメリカ生まれ。大学で日本の食文化を専攻し、後に日本滞在を経て、2008年に渡英。2011年にBBCの料理番組のコンテストで優勝し、2015年に日本食レストランを開業する。それ以来ロンドンにおける、ラーメンの第一人者として幅広く活躍。現在はフードライターとして多くの料理本を執筆し、2023年には『Ramen Forever』を上梓し話題に。
ティム・アンダーソン氏。アメリカ生まれ。大学で日本の食文化を専攻し、後に日本滞在を経て、2008年に渡英。2011年にBBCの料理番組のコンテストで優勝し、2015年に日本食レストランを開業する。それ以来ロンドンにおける、ラーメンの第一人者として幅広く活躍。現在はフードライターとして多くの料理本を執筆し、2023年には『Ramen Forever』を上梓し話題に。
アンダーソン氏の新刊『Hokkaido』。2019 年に出版し好評を得た『Tokyo Stories』に続き、エリアをテーマにした料理本。2005年に北海道を訪れて以来、ビールやジャガイモ、コーン、チーズなど、自分の生まれ故郷ウィスコンシン州と北海道の食文化が似ていると感銘を受ける。北海道各地の食文化だけでなく、アイヌ文化なども紹介している。
アンダーソン氏の新刊『Hokkaido』。2019 年に出版し好評を得た『Tokyo Stories』に続き、エリアをテーマにした料理本。2005年に北海道を訪れて以来、ビールやジャガイモ、コーン、チーズなど、自分の生まれ故郷ウィスコンシン州と北海道の食文化が似ていると感銘を受ける。北海道各地の食文化だけでなく、アイヌ文化なども紹介している。

「ここ数十年、アニメやファッション、デザインなど日本のカルチャーが人気を集め、日本文化が広く浸透していることが、日本食ブームを現在進行形にしている大きな要因だと思います。特に、ラーメンやカツカレーなどのカジュアルさや、ストリートフード的な側面と手軽さがロンドナーに受け入れられた」とアンダーソン氏。

抹茶やカツサンド、ショクパンなどが、年々ロンドンデビューを飾っているが、アンダーソン氏に次なるポテンシャルを聞くと「たとえば、“糠漬け”など麹などを使った日本由来の発酵食品」だという。

「ヘルスコンシャス、特に腸内環境の健康(gut health) が人々の注目を集めています。韓国のキムチが、あっという間に市民権を得たように、日本由来の発酵食品にスポットライトが当たる日は近いのでは」と氏は語る。日本の伝統的な発酵食品が、今後海外でどのような進化を遂げていくのかとても楽しみだ。


Tokyo College of Sushi and Washoku, London 
東京すし和食調理専門学校ロンドン校
https://www.sushicollege.uk

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