ココナッツミルクだけじゃない!ココヤシの樹液から作る調味料がインドの食卓を変える
India[Sindhudurg]
2024.07.18
text by Akemi Yoshii
(写真)バリオン・アグロフーズ社のココナッツ加工品。ココナッツビネガーは、無濾過で非加熱、マザーと呼ばれる酢酸菌をたっぷり含む。ジンジャー、ターメリック、唐辛子のエッセンスをブレンドした商品もあり。
国際連合食糧農業機関(FAO)の2022年度の統計によると、インドのココナッツ生産量は世界第3位。海岸に立ち並ぶココヤシの木は、旅情を誘うだけでなく、大いなる自然の恵みでもある。
ココナッツの産地であるインド西部マハーラーシュトラ州シンドゥドゥルグ県ではココナッツ革命ともいうべき、新しい取り組みがはじまっている。
シンドゥドゥルグでは、ココヤシの実(ココナッツ)だけでなく、花序(花を付けた茎)から採れる樹液(現地では「ココナッツニーラ」と呼ばれる)も、飲料、酢、調味料、糖蜜、含蜜糖として幅広く利用されてきた。樹液はミネラルやアミノ酸、ビタミンを豊富に含み、栄養価が高い。しかし樹液は発酵しやすいため、産地以外で利用されることは少なかった。
さらに、ココナッツ産業は、世界的に深刻な危機にあるという。ココヤシは20〜30mにもなる高い木で、樹液や実の採取には危険を伴う。流通面でも、特に小規模農家に不利な現実があるようだ。
2022年に設立された「バリオン・アグロフーズ(Balion Agrofoods)」は、ココナッツ農園の管理から樹液の採取・加工・販売まで一貫して手掛け、農園と加工場をシンドゥドゥルグに持つ。
共同創業者のヘンリック・ハーゲン氏によると、現地農家と契約して農園を借り、ココナッツ栽培、農園管理、樹液採取、加工品製造の工程や道具・設備に至るまで全ての見直しを行った。そうして、伝統を大切にしながら、最新の技術や独自の工夫、アイデアを取り入れ、無農薬で、トレーサビリティや透明性が確保され、安定した品質の商品製造・提供を実現させたのだ。
ゴアの郷土料理ポークビンダルーに使われるココナッツビネガーを例に取ると、伝統的なビネガーは、発酵に長期間かかる一方、品質の安定が難しく、産地以外では入手困難だった。現在、バリオンの商品は、国内各地の主要なグルメ・スーパー(店舗およびオンライン)で入手可能である。これは画期的なことだと言える。
ラインナップは、ココナッツビネガー、調味料(ソース)、甘味料(シロップとシュガー)と幅広いが、醤油にも代わる調味料として注目されるココナッツアミノなど、国内ではなじみのないものもある。そこで有名シェフによるマスタークッキングクラスや、各種イベントを開催し、インド料理に限らず幅広い料理に使えることをアピールしている。また、トマトケチャップやカルダモン入りコーヒー用甘味料などの新商品も開発中とのこと。
インドの食卓を大きく変えることになるかもしれないココナッツの可能性に期待したい。
◎Balion Agrofoods
Coconut Flower Cider Vinegar 599ルピー/250ml
Coco Amino – Original 699 ルピー/375ml
Coconut Syrup – Dark 725ルピー/270ml
Sandy Gold Coconut Flower Sugar 899ルピー/200g
https://balionagrofoods.com/
*1ルピー=約1.93円(2024年6月時点)