HOME 〉

JOURNAL / 世界の食トレンド

Italy [Roma]

伊グルメ専門出版社ガンベロロッソが手掛ける社会支援プロジェクト

2022.05.19

text by Mika Hisatani

食のガイドブックや雑誌で知られる「ガンベロロッソ(Gambero Rosso)」が、2022年春、ガンベロロッソ財団を設立した。目的は食を通した社会支援プロジェクトだ。


3月末にスタートしたのは、ローマ「レジーナ・コーエリ刑務所」の食堂での調理指導である。刑務所内の食堂で料理を担当する13名の受刑者は、あらかじめ法務省と刑務所で定められたメニューと材料について、ガンベロロッソ所属のシェフから指導を受ける。

このプロジェクトで調理技術の習得と等しく重要視されているのは、他者との共存意識を養うことだ。そのため、4名のシェフが料理を作り、みんなで試食し、様々な論議を行うこともカリキュラムに組まれている。受刑者が出所後に必要となるのは、料理のスキルだけでなく他者と交流、共存できる心の持ち方であるという。

「ガンベロロッソと2年前から進めていたプロジェクトが実現したことは、非常に嬉しい。指導を受ける者だけでなく、多くの受刑者にとって料理業界での社会更生活動は大きなチャンスだからです」と話すのは、刑務所長のクラウディア・クレメンティ氏。対して、「わたしたちが提供できる調理技術や料理学は、必ず受刑者の社会復帰に役立つことと思います。それは同時に、わたしたちの目標でもあるのです」と答えるガンベロロッソ財団副団長のパオロ・クッチャ氏。

同財団では4月より、自閉性障害のある青年たちへのパン習得コースも開始した。ガンベロロッソという美食のプロ集団が、食を通じてどこまで社会貢献できるのか、支援を行う側にとっても大きなチャレンジだ。

(写真)教師陣は同社のクッキングスクール「ガンベロロッソ料理アカデミー」で教える4名のシェフ。イグレス・コレッリをはじめとし、ジョルジョ・バルケージなど衛星放送番組「ガンベロロッソ・チャンネル」でも人気の顔ぶれだ。



料理通信メールマガジン(無料)に登録しませんか?

食のプロや愛好家が求める国内外の食の世界の動き、プロの名作レシピ、スペシャルなイベント情報などをお届けします。