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JOURNAL / 世界の食トレンド

営業はランチに特化。イタリア的“家族経営の店”の新フォーマットを模索する注目店

Italy [Milano]

2025.03.13

営業はランチに特化。イタリア的“家族経営の店”の新フォーマットを模索する注目店

text by Yuko Suyama
ブロッコリーに似たほんのり苦味のある青菜野菜ラピーニ(カブの葉の一種)に、チリ風味のスパイシーチップスでクリスピー感を、砂糖漬けチェードロ(柑橘の一種)で味にコントラストを与えた。ケフィア、ドゥーブルクリームのソースを添えて。photo by DePasquale + Maffini

2024年12月、ランチにフォーカスした今までなかったレストラン「サンディ(Sandi)」がミラノ工科大学近くにオープンし話題だ。

「挑戦でした」と、オーナーシェフのラウラ・サントスオッソさん。パートナーのダニー・モッリーカさんと日頃から話していた、イタリアの伝統である“家族経営の店”の新しいフォーマット構想を練る。ちょうど子供が産まれ、共に居る時間が欲しい、スタッフたちの拘束時間も減らして余裕あるサービスができるようにしたいと考えていた。

シェフのラウラ・サントスオッソさん(左)とホールとワインを担当するデニー・モッリーカさん
シェフのラウラ・サントスオッソさん(左)とホールとワインを担当するデニー・モッリーカさん。ラウラさんは、ミラノの有名店「エルバ・ブルスカ」「ラタナ」、パリのビストロでの経験をもつ。デニーさんは、ワイン中心にホール経験を積み、最近ではミラノ・イゾラ地区「セクション80バール」の立ち上げにも関わる。photo by DePasquale + Maffini

近頃ミラノでは朝食メニューを充実させたカフェやバールが華やかになってきたが、相変わらずランチはサクッと軽く済ませる傾向があり、ディナーに重点を置くイタリアの食習慣は根強い。そこに、潔くランチだけの営業、ディナーは週1日金曜日のみという形態に。果たしてミラネーゼたちにどう受け止められるか? ところが当初の心配をよそに、オープンまもなく満席の盛況を見せている。

料理は時間をかけて作ったフォンやソースをベースに、奥深い味を演出。トリッパとキノコの煮込みや、ハムとチーズを豚のロース肉で包んだオーブン焼きなど、馴染みのある伝統料理に旬の素材を組み入れたり、パンナコッタには味噌を加えて甘く塩味を効かせるなど、新しい感覚を加えて仕立てる。

photo by DePasquale + Maffini
ハムとナチュラルチーズを包んだ豚のロース肉のオーブン焼きには、誰もが好きなマッシュポテトを合わせる。中のチーズがとろりと溶け出し、添えた濃厚なソースと相まって満足感のある皿だ。photo by DePasquale + Maffini

週ごとに変わるメニューはプリフィックス(前菜+メイン22ユーロ、前菜+メイン+デザート25ユーロ、いずれも2種からセレクト)。充実したアラカルトもあり、前菜メニューは5品で12〜17ユーロ、メイン4品17〜30ユーロ、ドルチェ4品6〜16ユーロ、と価格もリーズナブル。意外なことにプリフィックスのオーダーは全体の2〜3割、ほとんどの客がアラカルトをオーダーする。イタリア産とフランス産を簡潔にまとめたワインリストは頻繁に変わり、グラスワインも1杯6〜10ユーロで楽しめる。

時間に自由が利く職種の客が多く、近隣の住人たちも増え始めている。このところのトレンドを意識したメニューや店づくりで数年で変容を重ねる多くのレストランとは対照的に、「息の長い、遠くを見据えた店」を目指しているサンディ。もしかしたら、ふたりのこのアイデアは、これからひとつの流れになるのかもしれない。

真っ白な長いテーブルクロスとカーテンが美しい
真っ白な長いテーブルクロスとカーテンが美しい。椅子はアンフォーマルに、モダンでデザインが異なるものを40席配置。サービススタッフも、モノトーンの私服でフレンドリーに対応している。photo by Claudia Zalla
いわゆるベッキア・ミラノと呼ぶ50年代の建物のオリジナル床材を大切にした内装
いわゆるベッキア・ミラノと呼ぶ50年代の建物のオリジナル床材を大切にした内装。奥のガラス戸を開けると、バンコ(バー)があり、食後酒やコーヒーなどをサービスする。photo by Claudia Zalla

Sandi
Via Francesco Hayez, 13 20129 Milano
☎+39-02-82046200
12:30〜14:30
金曜日は19:00〜22:30も営業
水曜休
https://www.instagram.com/sandi_ristorante/

*1ユーロ=160円(2025年3月時点)

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