旅をしながら美食体験。ハインツ・ベック監修の豪華列車オリエント・エクスプレス誕生
ITALY [Roma]
2025.05.15

text by Mika Hisatani
食堂車では窓の外の絶景を眺めながら、各地方の郷土食材をふんだんに使ったハインツ・ベックシェフのメニューを堪能できる。豊富なワインリストも完備。photo by Mr.Tripper
まるで映画『オリエント急行殺人事件』の世界に迷い込んだかのような列車は、アルセナーレ社がイタリア鉄道財団(Fondazione FS Italiane)およびFSトレーニ・トゥーリスティチ・イタリアーニ(FS Treni Turistici Italiani)と協力し開発した、イタリアが誇る新たなラグジュアリートレイン「ラ・ドルチェ・ヴィータ・オリエント・エクスプレス(La Dolce Vita Orient Express)」。
その魅力は、美しい風景と洗練された旅程にある。ヴェネツィア、ポルトフィーノ、シエナ、マテーラのサッシ、ニッツァ・モンフェッラートのトリュフ街道、そして南イタリアはシチリアのカターニア、パレルモ、タオルミーナまで、14の地域を巡る8つのルートが用意されている。
2025年4月4日には、ローマ・オスティエンセ駅を出発し、モンタルチーノのワイン畑を巡る「トスカーナのワイン畑の旅」(2日間の旅程で料金1人4160ユーロ~)が幕を開けた。

列車は12両編成で、定員はわずか62名。19のスイートルームと12のデラックスキャビン、バー、ラウンジ、レストランが備わり、インテリアは1960〜70年代のイタリアンエレガンスを彷彿とさせる洗練されたデザインだ。

この列車の最大の魅力は“味覚で巡るイタリア”。ローマの三ツ星シェフ、ハインツ・ベックが車内レストランを監修し、各地の食材やレシピを取り入れ、その土地の風景とともに味わう特別な食体験を演出する。
例えば、シチリアを走る朝には、塩味のブリオッシュにカポナータと塩リコッタチーズを添えた伝統的なブレックファスト。ポルトフィーノ(リグーリア州)へ向かうランチには、ハーブで包まれた「ニョッケッティ・ディ・ジータ・カチョ・エ・ペペ」。ピエモンテの夜には、ファッソーナ牛のタルタルにヘーゼルナッツとカステルマーニョチーズを添えた一皿が並ぶ。

すべての料理には「美食と健康はイコールである」というハインツ・ベックの哲学が息づき、伝統の技法に現代的なエッセンスを加えた、唯一無二の味わいを提供する。
また、レストランには大きなワインセラーが備えられ、イタリア屈指のワイナリーから選ばれた極上のワインが料理との完璧なマリアージュを演出。ラウンジバーでは、バーテンダーがその場で作るカクテルやワインを楽しみながら、アペリティフからアフターディナーまで贅沢な時間を過ごすことができる。
2026年には、パリ、イスタンブール、スプリト(クロアチア)など、国際的な目的地も加わる予定。ラ・ドルチェ・ヴィータ・オリエント・エクスプレスは、まさにイタリアの優雅な旅の新時代を象徴する存在となる。
◎La Dolce Vita Orient Express
https://www.orient-express.com/la-dolce-vita
*1ユーロ=163円(2025年5月時点)