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JOURNAL / 世界の食トレンド

COVID-19対策―― 世界の飲食店はどう動いたか? イタリア編

2020.06.22


COVID-19対策――

世界の飲食店はどう動いたか? イタリア編

Jun. 22, 2020

text by Mika Hisatani

世界の飲食店や飲食業に携わる人々はこの危機にどう対応し、何を学び、何を模索しているのか?コロナの渦中にいる、各国のジャーナリストがリポートします。

(5月15日時点の各国の状況に基づきます。)





1日3食300人分の食事を届ける三ツ星レストランの戦い

ヨーロッパでも最初に感染が拡大し、最も大きな被害を出した北イタリア・ロンバルディア州。中でもベルガモ県は人口の約25%、県民の4人に1人が感染している。3月中旬、感染者数が急増する中、市長は病院に収容しきれない患者を収容するために、同市の見本市会場を医療施設として設置することを決定。230名を治療するにあたり、総勢約300名の医師、看護婦、ボランティアを招集した。彼らの食事配給に名乗り出たのが、ベルガモの三ツ星「ダ・ヴィットリオ」だ。

3月18日付けのフェイスブックにオーナー、エンリコ・チェレア氏の呼びかけがアップされた。「私たちは明日以降、500人分(後に300人分と判明)の朝食、昼食、夕食を配給開始します。しかし食材物資が全く足りません。ロンバルディア州の業者仲間の皆さん、野菜、果物、魚、肉、パン、冷凍でもよいので提供してください。お金はいりません」。現場の医療関係者たちが多数亡くなっている中、料理人たちの命がけの救済活動が始まった。

「私の家族や従業員への感染リスクが怖くなかったわけではありません。正直、今でも恐れています。しかし半世紀に渡り、私のレストランを愛し続けてくれたベルガモが直面しているこの緊急事態に、協力しないという選択はありませんでした」。

その後、1万箱もの物資が全国から届き、当初予想もしなかった数に対応するため倉庫を新設。医療施設の食堂でも使いきれず、地元自治体と共に貧困家庭への配給サービスを開始した。食材は現在(4月末)でも到着し続けている。“弱いものを見捨てるべからず”というイタリアの国民性を象徴する救済活動は、この三ツ星レストランを筆頭に現在も進行中である。




<世界のコロナ対策:イタリアの場合>


▼行動制限要請、地域・全国封鎖の時期
2/22~ 地域封鎖
3/11~ 全国封鎖

(以下、解除の流れ)

5/4~ 居住する州内での移動可(親族間のみ)製造業、建設業、卸売業の営業再開。公共の場所でのマスク着用義務化
5/18~ 居住する州外への移動可(親族以外も)
6/3~ ヨーロッパ内の移動許可開始予定

▼飲食業への要請や命令内容
3/11~ ロックダウンに伴い、全国の飲食店・ホテルは全面休業(デリバリーのみ可)

(以下、解除の流れ)

5/4~ テイクアウトの営業可
5/18~ 店内利用は社会的距離や衛生に基づく
条例*を厳守した上で再開可能

*着席間隔は最低1メートル空ける、ビュッフェ禁止、従業員はマスクと手袋着用、レストランは来客リストを最低14日間保管など

▼飲食業(企業全般)への主な救済策
◎ 賃金補償
休業中、従業員給与の80%を国が負担(9週間に限り)

◎ 給付金
個人製造業者、商店(飲食店含む)の経営者、納税者登録番号を取得する自営業者に対し、3月分の生活援助金として一律600ユーロ(約72,000円)を支給(要申請)

◎ 賃料援助
3月分の賃貸料金の60%に相当する額を納税額から減額する形で援助

◎ 融資
中小企業向けに融資額90%~100%保証の即時支援






◎ Ristorante Da Vittorio
www.davittorio.com
Facebook @DaVittorioRistorante

(『料理通信』2020年7月号/「ワールドトピックス」より)



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