ラーメンからうどんまで。南米人の好みを熟知した製麺会社がペルーに誕生
Peru [Lima]
2023.08.21
text by Keiko Harada / photographs by NAN FOODS SAC
ペルー料理と和食が融合したニッケイ料理の登場で、すっかりペルーに定着した日本のラーメン。しかしペルー人の麺に対するこだわりは、まだまだ薄い。当地でのラーメンはどちらかというとスープ料理の感覚が強く、麺自体の味や茹で加減、太さや歯応えを深く追い求めるまでには至っていないのが実情だ。
そんなペルーの麺文化に一石を投じたのが、「ナン・フーズ(Nan Foods)」を経営する小林健一さんと妻のパトリシアさんだ。夫妻は日本から輸入した製麺機を使い、目的に応じた様々な麺を生み出している。
小林さんと麺の深い関係は、ペルー味の素社に駐在していた2003年までさかのぼる。当時ペルーで発売されたばかりの即席麺開発に携わった小林さんは、帰国後も味の素社の海外拠点における即席麺製造技術をサポート。生来のラーメン好きでもあり、その後赴任したナイジェリアでも試行錯誤を繰り返し、麺づくりに関する知識と経験を積み重ねていった。
20年に味の素社を退職、22年末にペルーに移住しナン・フーズを立ち上げた小林さんは、首都リマ市のニッケイレストランを1軒1軒食べ歩き、ペルー人の嗜好や食べるスピードなどをリサーチして新たな麺の開発に着手。23年4月から、市内複数のレストランに向けて試作品の売り込みを始めたところ、瞬く間に注文が舞い込むようになった。麺の特性やそれぞれの種類に応じたベストな茹で時間のレクチャーはもちろん、相性の良いスープや麺を使ったアレンジレシピの提案も加え、顧客の要望に合わせた商品を製造する“留め型B2Bサプライヤー”として、小回りの利くサービスを志す。
今では市内の主なラーメン店だけでなく、23年版「世界のベストレストラン50」6位のニッケイレストラン「マイド(MAIDO)」にもその味が認められ、特注の専用麺を納品するようになった。試食で麺と一緒に味わってもらうために持参した自家製スープやチャーシューも好評で、間もなく商品としてナン・フーズから販売されるという。
2023年はペルーの麺文化がシフトする注目の年になりそうだ。
(写真トップ)九州系低加水細麺、全粒粉、ちぢれ麺から讃岐風うどんまでこれまでペルーになかったタイプの他、熱い料理が苦手でゆっくり食べるペルー人向けに、伸びにくい麺も開発している。
◎NAN FOODS SAC
Jirón caracas 2467, Jesús María Lima
☎+51-941-139-339
メールアドレス admin@nanfoodsperu.com
1ソル=約38.7円(2023年7月時点)
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