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JOURNAL / 世界の食トレンド

Spain [Bilbao]

美食の聖地からフードテックのシリコンバレーに バスク州の次なる戦略

2021.09.16

text by Yuki Kobayashi

2020年10月の料理学会「サン・セバスチャン・ガストロノミカ(San Sebastián Gastronomika)」では、初のオンライン開催にもかかわらず、地上波のテレビ番組を見るような構成と映像技術を見せたバスク州。美食の聖地は、コロナで大打撃を受けたことには変わらないが、彼らの将来のビジョンはパンデミックに怯むことなく、着々と進んでいる。

2021年6月15日~17日の3日間、ビルバオにて第1回「Food for Future(F4F)」が対面およびオンラインで行われた。

食糧問題から環境問題、フードテック関連を扱うこの国際会議は、パンデミック下にもかかわらず5417名の聴講者、オンラインでは29カ国から4911名が登録。会場内には複数の講演スペースを設け、テーマは培養肉の最先端、アニマル・ウェルフェアやサステナブル認証制度、食品製造工程の省力化や食糧廃棄物処理、パッケージングからプラントベースの最新技術など多岐に渡り、発表者は349名を数えた。主催は行政と民間のタッグ。ビルバオ市役所やバスク州政府、民間企業がサポートしている。

今回の国際会議には、バスク州のシンクタンク「AZTI」、調理だけでなくテクノロジー分野の専門家も育成する「バスクキュリナリーセンター(Basque Culinary Center)」、欧州共通の技術研究所である「EIT」など最新技術研究を牽引する機関のほか、すでに実績のあるフードテック企業を一同に集めた。バスク州は“美食の聖地”から、今度は“フードテックのシリコンバレー”を目指すという意思表示のようだ。

同じ月に州政府は、官民共同プロジェクト「The Food Global Ecosystem」も発表。このプロジェクトではアグリテック、フードテック、ガストロノミーテックの分野でのスタートアップや研究者を手厚くサポートする。これまで行っていた州政府としてのSDGsの取り組みも、コロナ禍でさらに加速。重工業、製造業の歴史もあるビルバオが、このムーブメントの中心地になりそうだ。

(写真)会場になったのはビルバオ市の見本市会場。スペインのフードテックを牽引する機関や企業のほか、海外のスタートアップの参加も。


◎AZTI
https://www.azti.es/en/about-azti/

◎Basque Culinary Center
https://www.bculinary.com/es/home

◎EIT/ European Institute of Innovation & Technology
https://eit.europa.eu/

1ユーロ=129円(2021年8月時点)

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