JOURNAL / 世界の食トレンド

フェラン・アドリアが家具メーカーとコラボ　“飲食店のための理想の椅子”とは？

Spain [Oiartzun]

2024.09.12

text by Yuki Kobayashi
（写真）フェラン・アドリアが家具メーカーとコラボして作り上げた椅子「スプレ・フュメ」。積み重ねてもスタイリッシュで、安定性も確保。

料理の世界だけでなく、IT関連や教育分野など様々なセクターとコラボをし続けているフェラン・アドリア。2024年は家具メーカーとコラボして、“飲食店に理想の椅子”を作り上げた。

プロジェクトの実現を請け負ったのは、サンセバスチャン郊外15kmのオジャルツン市に拠点を置き、長年家具製造を行ってきたオンダレタ（Ondarreta）社。バスク州アチョンドの一ツ星店「チスパ（Txispa）」や、カタルーニャ州カダケスの「コンパルティール（Compartir）」など高級レストランはもちろん、ホテルやスタイリッシュなスペースにアクセントを飾る家具を多く製造してきた。

「スプレ・フュメ（Supre Fumé）」シリーズの椅子は、客席用として使えることはもちろん、休憩や賄い時に常々、適当なところやモノに腰掛けているレストランスタッフのコンフォートも想定している。

（写真）オンダレタ社は2023年にスペイン国立デザイナー賞を受賞したばかり。

スモークがかかった半透明のポリプロピレン製。背もたれと座る部分はすべて一つのピースで出来ており、最大20脚まで重ねることが可能だ。人間工学に基づいて座り心地を追求するだけでなく、日々のハードな使用に耐えうるシンプルな作り、足は木製で車輪の有無や高さ調整もできる。スツールのバージョンは最大10脚まで重ねられるだけでなく、屋外仕様も用意した。

フェランが求めた飲食店のよい椅子の条件は「経済的で耐久性があり、シリーズ内でいくつか違うバージョンを揃え、重ねやすく軽い」ということ。スプレ・フメは、高いデザイン性をもちながらこれを十分に満たした形だ。「EL BULLI 1846（エル・ブジミュージアム）」用の椅子として使用されており、フェランの作品群のひとつに仲間入りしている。