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JOURNAL / 世界の食トレンド

Sweden [Gothenburg] 菌類タンパク質で食料廃棄物をアップサイクル。3Dプリンターで作る植物性代替食品

2023.02.16

3Dプリンター

text by Sakiko Jin / photographs by Mycorena

「ミコレーナ (Mycorena)」社は、菌類のプロテイン(マイコプロテイン)を使った代替食品開発から始まったフードテック会社。マイコプロテインは80年代に開発され、近年再び注目を集めているが、ミコレーナは他社とは異なる真菌培養スターター(微生物)を用い、独自の発酵プロセスを使用した自社製品「プロミック(Promyc)」を生み出した。


糸状の菌糸を持つ糸状菌から作るプロミックは、無味無臭で栄養価が高く、かつ食感が良いものに加工できる汎用性の高い素材だ。単独でも、あるいは植物性タンパク質や肉と混合して様々な食品に加工できる。その可能性を見出し、発展させたのが3Dプリントフードだ。2022年秋にはオーストリアのレボフーズ(Revo Foods)社と協業し、最初のプロトタイプとして代替魚のフィレの量産に成功した。

(写真)「プロミック」は乾燥重量でタンパク質が45%〜60%、繊維質は6〜15%を含む。アミノ酸の含有量もかなり高く、ビタミンB群、ビタミンD、亜鉛などのミネラル類も含まれており栄養素が高い。

(写真)「プロミック」は乾燥重量でタンパク質が45%〜60%、繊維質は6〜15%を含む。アミノ酸の含有量もかなり高く、ビタミンB群、ビタミンD、亜鉛などのミネラル類も含まれており栄養素が高い。

プロミックの発酵に必要な栄養源には、塊茎作物の他、パン、アルコール飲料、菓子、乳製品などの生産の過程で発生する食品副産物も利用できる。廃棄される食品を原料にして、例えばスポーツ選手には栄養価の高い食品を、お年寄りには噛みやすい食べ物を、子供たちには食べたくなるような(おいしそうに見える)食べ物など、需要にあった食品を3Dプリンターで、必要なだけ形成することが可能になる。

ミコレーナのビジョンは3Dプリントフード製品が2、3年内にマーケットに流通し、誰もが購入できることだ。味がない、つまらないと評された代替食品が進化を遂げたように、3Dプリントフードが食卓にお目見えする日も、そう遠くはなさそうだ。

(写真トップ)プリントフードはCO2削減にも効果あり。食肉をプロミックの3Dプリントフードに置き換えると、温室効果ガス排出量は8〜9割削減できるという。例えば1トンの牛肉を同量のプロミックに変えると、1年で2万4千トンのCO2排出が抑えられる。



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