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MEETUP

D&DEPARTMENT×料理通信

MEET UP「新潟をたべる会」〈秋編〉開催!

2020.01.17

text by Rieko Seto / photographs by Hide Urabe

枝豆やナスの驚きのおいしさと出会った新潟の旅・夏編に続き、D&DEPARTMENTディレクターの相馬夕輝さんと訪れたのは、収穫を待つ稲穂が揺れる秋の新潟。「まさかここが雪深い国だとは思えないほど、実り多く、躍動感のある新潟がありました」と、相馬さん。現地で体感した新潟の豊かな食文化を分かち合うMEETUP、「新潟を食べる会~秋編~」が、12月14日、東京・奥沢の「dたべる研究所」にて開催されました。

夏編に続き、今回もD&DEPARTMENTが運営する東京・奥沢の「dたべる研究所」で開催しました。

会場入り口では、越後妻有(えちごつまり)の棚田を守る活動を通じて、D&DEPARTMENTのメンバー自ら手刈りした稲穂が参加者をお出迎え。

ウェルカムドリンクは、小千谷市「まるいち」の「どぶろく雪輝 マイルド」。ノンアルコールは十日町市「みらい」の「玄米あま酒」を。

メニューには、初めて知る新潟の食材がずらりとそろい、参加者の期待も高まります。



第1部:ワークショップ その1
熟成日数で比べる味噌テイスティング

今回のテーマは、発酵と熟成。ゲストとして迎えられたのは、いずれも醸造・発酵の町として知られる新潟県長岡市に蔵を構える、株式会社越後一 社長の川上綾子さんと、吉乃川株式会社の横山将平さんです。


D&DEPARTMENTディレクターの相馬夕輝さんがご挨拶。いよいよ、MEET UPのスタートです。

「江戸時代から続く味噌、醤油醸造の老舗から、50年前に味噌部門を独立させたのが、えちごいち味噌です。小さい蔵なので大量生産できませんが、代わりにできるだけ機械に頼らず、職人が経験や五感を大切にしながら、酵母も酵素も生きた味噌造りをしております」と、川上さん。


第1部はまず、「えちごいち味噌」による「匠の味」の白味噌と赤味噌のテイスティングから。今回は、なかなかお目にかかることのない仕込みたての味噌をはじめ、白味噌は30日目、52日目、108日目、赤味噌は38日目、73日目、129日目と、それぞれ熟成段階が異なる味噌が特別に用意されました。


「えちごいち味噌」の「匠の味」赤味噌・白味噌は、職人が手間を惜しまずに育てた麹と、脱皮してやわらかく蒸した大豆を使い、しっとり仕上げたこだわりの味噌。

「えちごいち味噌」の「匠の味」を醸造過程の段階で食べ比べ。奥は白味噌、手間は赤味噌で、いずれも左から右へ進むにつれて熟成期間が長くなっていきます。真ん中はなんと、イベントの3日前に仕込んだばかりの赤味噌!


参加者は初めて目にする味噌の姿にどよめきながら、興味津々な様子でテイスティング。「お味噌は発酵だけで終わらずに熟成の段階を経てできあがります。初期段階はアルコール発酵期(春の温度帯)、次の段階では甘みと旨みが引き出される熟成期(夏の温度帯)、最後は生成された旨みや甘みが調和される後期熟成期(秋から冬の温度帯)となり、四季の温度変化とともに発酵熟成が進みます」との解説を聞き、うなずきながら味の違いを確かめていました。


味噌のお供は、雪室で熟成されたきめ細やかで甘みたっぷりのジャガイモ。麹の甘みが濃い塩麹、「えちごいち味噌」の「甘麹塩麹」をつけてもぴったり。


第1部:ワークショップ その2
新酒、王道、最新銘柄の3種を飲み比べ

続いて、横山さんの指南で、「吉乃川」の日本酒のテイスティングがスタート。吉乃川といえば、創業は1548年。今年で472年の歴史を持つ新潟で1番古い蔵で、一人当たりの日本酒消費量は全国1位という、新潟の文化に寄り添って歩んできた老舗です。


吉乃川株式会社の横山将平さん。蔵の特徴やそれぞれの日本酒の造りや特徴について、ていねいに解説してくれました。

テイスティングした吉乃川の日本酒は、左から「新米仕込み新酒」、「吟醸 極上吉乃川」、「みなも純米大吟醸」の3種。


テーブルには、「新米仕込み新酒」、「吟醸 極上吉乃川」、「みなも純米大吟醸」という、個性の異なる3種類の日本酒が並べられました。


「新米仕込み新酒」(左)は、今年9月に仕込んで10月に絞ったばかり。「吟醸 極上吉乃川」(中央)は、55%精米で吟醸香が感じられます。「みなも純米大吟醸」(右)は、杜氏のブレンド技術によって生まれた華やかな味わい。


「利き酒をするときは、まず香りを嗅いで、次に口全体でしっかり味わい、余韻を楽しんでみてください」と、横山さん。「新酒は、味わいが軽くて絞りたてのフレッシュな香りが特徴です。極上吉乃川は、それとは違って味わい深く、キレもあります。みなもは、当社が9月に立ち上げたばかりのブランドで、杜氏が理想の味わいになるようブレンドしたものです。香りは華やかで甘く、味わいに酸味とキレがあります」。

横山さんによれば、いずれも新潟の食に通じるキレのある味わいを意識して造られていて、食中酒にぴったりだとか。参加者からも、「とってもおいしい! 後味がすっきりしていて料理と早く合わせてみたい」などの声が上がりました。


目を閉じてじっくりと、繊細な日本酒の香りを嗅ぎ分けます。


第2部:ビュッフェ
味噌、塩麹、酒粕で、旨みたっぷりの料理に

第2部は、いよいよお待ちかねのお食事タイム。この日のために「d47食堂」副料理長の植本寿奈さんが調理した、新潟の魅力あふれる料理の数々がたっぷりとカウンターに並べられ、会場は歓声と笑顔に包まれました。

「今回は発酵、熟成がテーマなので、味噌や塩麹、酒粕を使いまくろうと思いました」と、植本さん。「えちごいち味噌」の「匠の味」赤味噌と白味噌、塩麹は同じく「えちごいち味噌」の「甘麹塩麹」、酒粕は「吉乃川」の「吉乃川 酒粕」をさまざまに使った、旨みたっぷりのバリエーション豊かなメニューが供されました。


調理を担当したのは、夏編に続き旅を共にした「d47食堂」副料理長の植本寿奈さん。

栃尾の「あぶらげ」神楽南蛮味噌のはさみ焼き
長岡「佐野豆腐店」の名物として知られる「あぶらげ」に、赤味噌を使ったピリ辛の神楽南蛮味噌をサンドし、ネギをのせて。

打ち豆の入った煮菜
植本さんが越後妻有の“お母さん”に教わったという、冬の新潟の郷土料理。塩漬けの菜っ葉に打ち豆が加わり、ほっとするやさしい味わい。

ふろふき雪室大根
雪室で熟成された大根のふろふきは、透き通るように美しく、なめらかな舌触り。赤味噌を使った味噌をのせて。

おぼろ豆腐のきのこあんかけ
「あぶらげ」と同じ「佐野豆腐店」のおぼろ豆腐は、雪に埋められて甘みを増した雪下にんじんとヒラタケとマイタケを使ったあんかけに。

雪室熟成豚のしゃぶしゃぶサラダ味噌ドレッシング
くせがなく甘みたっぷりの雪室熟成豚肉をしゃぶしゃぶにしてサラダに。ドレッシングに使用した赤味噌の旨みが、豚の味わいを引き立てます。

雪室熟成豚の豚大根
「豚肉の脂のおいしさを味わってほしい」(植本さん)と、雪室で熟成させた豚肉を大根と大豆とともに煮て、塩と昆布でシンプルに味つけ。

雪室熟成豚の酒粕味噌焼き
酒粕と白味噌を1:1で混ぜて雪室熟成豚肉を漬け込み、香ばしく焼き上げたひと品。噛みしめるごとに旨みが口いっぱいに広がります。

ふきのとうと十全なすの味噌漬け
麹味噌と田舎味噌を合わせて野菜を漬けこんだ「越後みそ西」の味噌漬けは、香りよく、お酒もご飯も進む味わい。

たくさんの料理を各自で盛りつけて、お皿はたちまちいっぱいに。



雪室熟成のひんやりとした空気を思い出しながら調理

今回のもうひとつの目玉が、豚肉やジャガイモ、大根といった雪室熟成の食材です。豪雪地帯という自然環境を生かして大量の雪を積み上げて保冷し、熟成された食材はとにかく甘くて、参加者もみなびっくり。「ジャガイモも大根も、雪室で熟成されたものはきめ細かくてなめらかで、糖分がのっています」と、植本さんは話し、相馬さんも「雪室は、秋編の旅でも特に印象に残ったもののひとつ。あのひんやりした空気や雪が積み上げられた雪室の光景を感じてもらうにはどうしたらいいか考えて、素材もなるべく調理しすぎないようにしました」と、料理にこめた思いを語ります。会場前方のスクリーンには、現地で撮影された雪室の写真も。うず高く雪が積み上げられた光景に、参加者たちも説明に耳を傾けながら見入っていました。


雪室じゃがいものコロッケ
挽肉やタマネギなど余計な物は一切加えず、ジャガイモだけをお麩を使った衣で包んだ、熱々のコロッケ。雪室熟成されたジャガイモならではの力強い甘みが押し寄せます。

揚げたてアツアツのコロッケは、相馬さんの手で参加者のもとへ。「おいしい! 甘い!」と、会場のあちらこちらで笑顔が弾けました。


第3部:〆のお膳
手刈りした棚田米で新米を堪能

料理のお代わりも進むなか、いよいよ第3部へ。お膳には、新潟の棚田でD&DEPARTMENTのメンバーが手刈りした新米、白味噌の豚汁、糸瓜の漬物、醤油の実が。さすが米どころ、定食を楽しむ羽釜で炊き上げられた新米は、おこげもパリッと香ばしくて格別のおいしさです。

相馬さんからは、越後妻有の「まつだい棚田バンク」についてのお話も。「十日町で開催されている大地の芸術祭は、棚田の景色や耕作する人たちをいかに守っていくかというのが、実は大きなテーマで、開催している人たちが中心となって棚田バンクを行っています。耕作放棄地になるところを救出して、お米にして支援した人達に返ってくるという仕組みなのですが、僕たちも企業として参加していて、自分たちも田植えや稲刈りに関わって収穫されたのが、今日のお米です」。

その言葉を聞いて参加者は、お米を見つめたり、香りを嗅いだりしながら新潟の棚田に思いを馳せ、そのおいしさをじっくりと噛みしめていました。


相馬さんをはじめ、越後妻有の棚田でD&DEPARTMENTのメンバー自ら手刈りした新米は、羽釜で炊き上げられてもっちり、ツヤツヤ。おこげも香ばしくておいしい!

糸瓜の味噌たまり漬けは、シャキシャキと歯触りのよい繊維が口の中でほぐれるような、独特の食感が魅力的。

定食〆のお膳は、d棚田バンクの新米コシヒカリ、雪室熟成豚・大根・じゃがいもの豚汁、醤油の実、糸瓜の味噌たまり漬け。


〆にはデザートとしてレモンが香るヨーグルトソルベにどぶろくをかけた、さわやかなアフォガートを味わい、和やかな雰囲気の中、会はお開きに。


どぶろくアフォガート
デザートに供されたのは、自家製のヨーグルトソルベに、まるいちの「どぶろく雪輝まいるど」をかけたアフォガート。「どぶろくをかけるなんて初めて。さわやかでおいしい!」と、参加者からも大好評。


新たな発見と刺激に満ちた充実のひとときに

参加者から多く寄せられたのは、「新潟といえばお米や日本酒以外の食材や料理は知らなかったので、こんなにおいしいものがたくさんあるんだということに驚きました」という声。
「雪室熟成の大根もジャガイモも甘くて、みずみずしくておいしかったです。雪室に行ってみたくなりました」
「豚肉が甘くてしつこくなくて、普段は豚肉が苦手な私でも食べられました」
「おみそのことがいろいろ知れて、勉強になりました」「新潟のお料理はすごくさっぱりしてやさしい味と、塩味が強いものと両方あって両極端でお酒ともあって楽しめるな、と思いました」「〆のどぶろくをアイスまで、新鮮で新しい発見がいっぱいありました」。新潟の食について新たな発見と多くの刺激を受けた充実のひとときとなりました。


会の終わりには、「えちごいち味噌」の味噌や甘麹・塩麹、「吉乃川」の酒粕、雪室じゃがいもなど、この日の料理に活躍した食材も販売され、あっという間に棚が空に。

植本さんに、この日味わった料理の作り方を聞く参加者が続出。一番多かったのは、雪室熟成豚の豚大根の味つけについてだったそう。「余計な調味料は一切入れていないんですよ」と、植本さん。





【問い合わせ先】
◎ 新潟県農林水産部 食品・流通課

☎ 025‐280-5305







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