“多様性”の象徴に。ジャンルを築く「静岡」の食と料理人
浜松市「懐石いっ木」× 静岡市「清游」
2024.03.12
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photographs by 原田尚則(STUDIO ROOTS)
日本一高い富士山と深い駿河湾をもち、食材の多様性が日本一。その数およそ439品目と、2位に大差をつける静岡県。同県の新たな魅力を発掘するイベントが、2月15日「ふじのくに茶の都ミュージアム」で開催された。
テーマは「ふじのくにの新和食」。静岡らしい食材と技術で、未来に貢献する調理法を披露する。タッグを組むのは、京都「菊乃井本店」を経て、浜松「懐石いっ木」を営む一木敏哉さん(写真右)と「RED U-35」でSILVER EGGを連続受賞し、静岡市清水区「清游」料理長を務める内海亮さん(写真中央)。
熟練の技で味を追求する一木さんは、和の技術に忠実に繊細な味のバランスを極め、若手の内海さんは、乳製品など洋の素材を折り込み、ヴィヴィットで華やかな味わいで魅せる。
養殖のチョウザメや掛川の野菜、峯野牛の経産牛、伝統食材の浜納豆など、静岡ならではの食材がふんだんに盛り込まれ、中でも高い生産量を誇る茶葉づかいが、随所に光った。一木さんは、巧みな温度調節で茶葉の旨味と香りを抽出し、キレよく凛とした味わいに仕上げただしと御前崎のクエの椀に。養殖のチョウザメは茶葉で締めてお造りに仕立て、野の美しい余韻を残す。内海さんは、菊芋と牛乳のクリアな味のすり流しに春菊のソース、ウニを添え、仕上げに静岡の茶葉を燻した香りで彩る。洋のスモークとは一線を画す清々しい香りが、和の味に印象的に寄り添う。
創意を凝らした品々に、参加者からは「“静岡料理”として新たなジャンルになるのでは」との声が上がった。静岡県では同イベントを「美味らららダイニング」として、テーマを変えながら、今後も順次開催予定。
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茶葉と鰹節、それぞれに適した温度で引き出しただしを張った椀。「海温上昇で昆布の価格が上がる中、茶葉への期待は大きい」と、浜松「懐石いっ木」一木敏哉さん。
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蓋を開けると茶葉の燻した香りが心地よく広がる、菊芋のすり流し。「静岡は酪農も盛んなので、菊芋のすり流しには牛乳も加えています」と、「清游」内海亮さん。
◎静岡ガストロノミーツーリズム 美味ららら運営事務局
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