鯨肉のおいしさを引き出す扱い方・調理法を伝授する『鯨肉料理』
2025.08.18

鯨は、縄文の頃から食されていたと言われ、古事記や万葉集にも記載があるなど、日本の食文化を語る上で欠かせない存在と言える。資源保護の観点から長らく商業捕鯨を停止していたが、2019年にICRW(国際捕鯨取締条約)を脱退し、一部の捕鯨を再開。現在は料理店やスーパーで鯨肉を目にするようになった。
しかし、商業捕鯨停止の40年ほどの間に、鯨肉に馴染みのない日本人が増え、料理人でもその多くが鯨肉の扱いを知らない。著者の松本青山さんは、「これでは鯨食文化は伝承されない」との危機感から、「何が何でも本を出さなければ」との思いを抱き、何人もの編集者に相談と打診を重ね、ついに出版に至ったのが本書だという。
松本さんは、食の知的好奇心を追求する「花冠」主人として知られ、日本の伝統食文化の普及に尽力してきた料理人にして研究者。著書は世界最大の料理本アワード「グルマン世界料理本大賞」で受賞を重ねる。関東で唯一の捕鯨文化が根づく千葉県南房総市和田町(和田浦)にゆかりがあり、幼い頃からこの小さな漁村にあがる鯨、鯨を解体する鯨組、鯨肉を買い求める地元の人たち、鯨の家庭料理に親しんできたバックグラウンドを持つという。
本書では、鯨の肉質の特色や扱い方をわかりやすく伝えると共に、著者が得意とする食品科学の視点から、鯨肉ならではの特質を生かす調理法、味付け、副材料や薬味などを伝授。赤身肉からうねす(脂身と肉にまたがる部位)、皮、尾羽毛、舌肉、コロまで、様々な部位を用いた約40点のレシピを紹介する。たたき、焼肉、ムニエル、すき焼き、コンフィ、カツ、竜田揚げなど、親しみやすい料理が並ぶ。
また、日本人と鯨の関わりが歴史的・文化的背景から詳しく語られた後半ブロックは、日本人としてぜひとも知っておきたい必読の内容だ。


◎農文協 公式note「いま、伝えたい『鯨肉料理』の魅力」を連載中
https://note.com/nobunkyou/n/n7e16b982fe1f
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