役者は揃った!宇都宮に吹いたスペインの熱風 「スパニッシュスペシャルテーブル in 宇都宮」
2026.04.27
(TOP写真)スペイン南部アンダルシア地方のサンルーカル・デ・バラメーダで造られる辛口シェリー「マンサニージャ」を、ベネンシア・スタイルで高い位置から注ぎ、空気を含ませて香りを立たせる。潮風を思わせる塩気を帯びた独特の味わいで、現地ではエビや貝、白身魚などの魚介料理と合わせることが多い。
あるジャンルの料理が、郷土とは異なる土地の文化や歴史、素材の力によって、まったく新しいクリエイションに生まれ変わることがある。それは、風に運ばれた種が見知らぬ土地に根を下ろし、独自の形で進化を遂げるように、旅を愛するトップシェフの動きにも似ていて。未知との出合いが、創造の起点となるからだろう。
2026年2月15日、宇都宮駅近くのアンジェロコート東京 で開催されたのは、「スパニッシュスペシャルテーブル in 宇都宮」。東京、金沢、仙台、常陸大宮、そして地元、宇都宮からの8軒のシェフが集結した。仕掛け人は約50年以上にわたり、日本とスペインを結ぶ食のプロジェクトを多く手がけてきたスペイン料理文化アカデミー主宰・渡辺万里さん。
午前中のセミナーではスペインワインをめぐるトークが行われ、渡辺さんと元「サン パウ」シェフソムリエであり、現在は「ティン・ガナ」シェフソムリエを務める菊池貴行氏が登壇。自身のスペインワインとの原体験を語りながらワインの今の動きを紹介。参加者の空気をみるみるうちにイベリア半島の陽光へといざなう。
続くスペシャルランチでは、バスク、ガリシア、カタルーニャ、アンダルシア・・・、スぺイン各地の文脈を背景に持つシェフたちの料理が、日本の土壌や旬の食材と出合い、再解釈された皿が披露された。それぞれの土地で育んだ視点と技術をもとに「もしスペインが日本にあったなら?」という問いに、自分なりの答えを皿の上で示してみせた。
バルセロナで修業後、地元金沢で北陸の素材を使ったスペイン料理を提供する「レスピラシオン」梅達郎氏と八木恵介氏。手掛けたパンコントマテは、パンの酵母に富山のワイナリー、セイズファームのブドウの搾りかすを活用し、自家製のブラウンチーズと発酵トマトのエキスを合わせて。甘エビは、能登の麹から起こした塩麹でマリネし、殻や卵をドライにしてタルト生地に練り込むなど、北陸の風土を余すところなく映し出した。
常陸大宮「ヨシキ・フジ」藤良樹シェフは、GI認定の天然のマガモを炭火で焼き、塩を加えずに仕上げた鴨のだしと赤ワインのソース、水戸納豆と豆乳のソースを添えて供した。
開催地・宇都宮からは、フランス料理「オトワレストラン」パティシエ・音羽明日香氏が参加。栃木のさつまいもとアーモンドを使ったカタルーニャの伝統菓子パナジェッツや、地元のレモンを利かせたボンボロンなど、“栃木流”スペイン郷土菓子を表現した。
どの料理もスペインをそのまま持ち込むのではなく、現地で培われた感性を日本のローカルにどう根づかせるかを出発点に構成され、料理と食材、ゲストの体験が自然につながるよう編み上げられたもの。
主催者である渡辺さんが長年かけて築いてきたスペインとのネットワークの確かな厚みを感じるとともに、日本各地で芽吹き始めた新たな才能の交差が、次なる展開を予感させる一日となった。
<参加シェフ一覧>
東京・神楽坂「ティン・ガナ」ジェローム・キルボフ・白土廉
石川・金沢「レスピラシオン」梅達郎・八木恵介
宮城・仙台「ビシガリ」中村篤志
東京・浅草「アメッツ」服部公一
東京・町田「カサマイヤ」増渕友子
栃木・宇都宮「オトワレストラン」音羽明日香
茨城・常陸大宮「ヨシキ・フジ」藤良樹
東京・白金「81」永島健志
◎スペイン料理文化アカデミー
https://academia-spain.com/
(料理通信)
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