【5/31(日)まで】「伝統は物語になる」ウェンウェン・チャンが描く湖南料理
ハイアットリージェンシー 東京 「翡翠宮」
2026.05.09
偶然が傑作を生んだという。深夜、空腹の客が転がり込んだ店。厨房には鶏と唐辛子しか残っていなかった。料理人は誤って米酢を鍋に落とす。だが客は供された料理を絶賛した。国宴料理として誉れ高い湖南伝統料理「東安子鶏(とうあんじけい)」の誕生である。
「偶然が傑作を生んだ逸話は各地にあります」。パーク ハイアット 長沙の総料理長、ウェンウェン・チャン(Wenwen Zhang)。彼女にとって伝統とは、物語を紡ぐこと。
ハイアット リージェンシー 東京の中国料理「翡翠宮」では、2026年5月31日(日)まで、チャンを迎えた特別コラボレーションメニューを提供中だ。
目次
手をかけることが、価値になる
中国中東部の内陸に位置する湖南。屋台食や山岳地帯の郷土料理が多く、煙で燻す技法や、唐辛子や発酵食品を使った強烈な辛さと酸味をもつ。その辛味嗜好は、「四川人不怕辣,湖南人辣不怕」四川人は辛さを恐れず、湖南人は(どれだけ)辛くても恐れない、といわれている。
伝統は継承しながら、見せ方は時代に合わせる。湖南の土着の味わいをベースにしながら、素材を生かす広東の技法を取り入れている。ウェンウェン・チャンの理念は、「食材を敬い、ゲストを敬い、そして自分自身を敬う」。そのための厨房の作業は膨大だ。
「豆花紅牛」。その日の朝、有機大豆から豆乳を絞り、固める。手絞りの豆腐の上に日本の和牛サーロインをのせ、3種の青唐辛子を炙って皮をむき、ひとつずつ中身を取り出し、花椒油と合わせたソースを合わせる。
とろりとした豆腐の甘さ、辛味、青唐辛子の清涼感が時間差で現れる。体で味わう一品。石鍋で熱々のまま運ばれてくるのは「中国では豆腐は熱々で食べる習慣があるから」だという。
火は、招福の儀式
コースのなかでも、湖南伝統料理「東安子鶏」を、蓮の葉蒸しでアレンジした「東安富貴鶏」の供し方は、圧倒的な存在感をもつ。偶然生まれた物語を、チャンは現在形で丁寧に紡ぎ直した。
大酸大辣「非常に酸っぱく、非常に辛い」というこの料理は、丸鶏に2時間下味を入れ、中にアワビを詰め、数種の唐辛子で辛さと酸味をつける。その後、蓮の葉で包み、周りをパン生地で包んで2時間オーブンで焼く。
客席でのプレゼンテーションでは塩釜を割り、自家製の漬け生姜と唐辛子を炊き込んだスープで仕上げて、ようやく提供に至る。
「中国では火は幸運の象徴です」。ゲストには願いを込めてもらい、塩で固めた蓋をハンマーで割るように開ける。「お客様とのつながりが大切です。一緒にテーブルを囲む、その時間が料理をつくります」
続くデザートも鮮やかだ。口内の辛さをリセットするため、ほろりと崩れる柔らかな自家製豆花は、器とスプーンをあらかじめ冷やしておき、ソースもかけずいただく。冷たい感覚の中に温もりあるクリーンな豆の風味。「幸せな気持ちになれるでしょう?」とチャン。
初めての東京。日本のきな粉の香りに感動したチャンは、デザートの老長沙の糖饺(胡麻の揚げ菓子)に取り入れた。「日本のきな粉は非常に香りが良い。皆さんに試してほしかった」
湖南の土着の味と、世界で育まれた素材。偶然が傑作を生んだように、出会いがまた新しい物語を紡ぐ。
◎スペシャルシェフ招聘イベント 第5弾
パーク ハイアット 長沙 総料理長 ウェンウェン・チャン × 翡翠宮(ハイアット リージェンシー 東京)
期間:2026年4月11日(土)〜5月31日(日)
場所:中国料理「翡翠宮」(ハイアット リージェンシー 東京 1階)
時間:ランチ 11:30〜15:00(14:00LO) ディナー 17:30〜22:00(21:00LO )
価格:ランチ / ディナーコース ¥14,000(税・サービス料込)
https://www.hyattregency.com/tokyo/
(料理通信)
関連リンク