35歳未満のイタリア最優秀シェフがもたらした“グリーンスター”の意味
Italy [Biella]
2026.05.28
text by Sayaka Miyamoto
「ラ・ブルシュ」のシェフ、エリカ・ゴッタのシグニチャープレートの一つ「アーリオ・エ・オーリオ」(27ユーロ)。ショートパスタに森で採れるブルーベリーをジュースにして吸わせ、アーリオ・エ・オーリオに仕立てる。仕上げに渓谷で採れるハーブRutaを飾って。色彩の美しさにうっとりし、爽やかな酸味とマッチするニンニクとペペロンチーノの風味にまたうっとりする逸品。地元の食材を使い、イタリア料理の象徴のような存在であるレシピを、現代的なテクニックで仕上げたコンビネーションが高く評価されている。
『ミシュランガイド』が2020年から導入した「グリーンスター」は、持続可能なガストロノミーに積極的に取り組むレストランを評価するシステム。環境配慮や食品廃棄の削減、生産者とのつながりや倫理性が重要視される昨今、注目度は年々上昇している。現在までに世界で約500店舗が選ばれており、2025年9月に発表された2026年版では、イタリアは72軒、うち5軒が新たに選出された。
その1軒がピエモンテ州ビエッラ郊外の渓谷にあるカントリーハウス・レストラン「ラ・ブルシュ(LA BURSCH)」だ。
店の敷地内の畑とレストランを取り囲む森で採れる野菜やハーブを中心に、近隣の農家や生産者から直接仕入れた食材を使うことで、輸送距離を限りなく短くして環境負荷を低減。同時に地域の社会とのつながりを重視し、サプライチェーンを活性化していることや、旬の食材を多用し季節を反映したメニュー構成であること、自閉症の若者を支援する団体と協力してハーブの供給を行うなど社会的な取り組みに積極的であることが高く評価された。
サステナブルな取り組みは料理だけでなく、レストランの建物や空間作りも、地元の資源やリユース素材を生かした設計になっていることがグリーンスター獲得のための大切な要素の一つとなった。
シェフのエリカ・ゴッタさんは2021年、27歳でシェフとして着任し、5年の間、持続可能性の意味を探り、研究し、実験の日々を重ねた。35歳未満のイタリア最優秀シェフに選ばれると同時に、イタリアの錚々たるレストランガイドから次々と高評価を得た。そして2026年、ミシュランのグリーンスターを店にプレゼントして、彼女はラ・ブルシュを去るという。
「グリーンスターの受賞は、私たちに誇りを感じさせてくれました。なぜなら、この地方とここに暮らす人々、そして歴史と調和して生きる場所を認めてくれたということだからです。これは、プロジェクトを深く信じてくれたチームの努力と、私たちのアイデンティティを現代的で持続可能な料理へと昇華させたエリカの取り組みの成果です。彼女が去っても、彼女がスタッフ全員に伝えてくれた持続可能性への感性と、地域との絆を決して失うことなく成長を続け、サステナビリティ、インクルージョン、そして価値の向上にさらに力を注いでいきたい」とオーナーのバルバラ・ヴァレーゼさん。
世界中の料理に関わる人たちが、グリーンスターにインスピレーションを受け、ますます持続可能なガストロノミーの世界が広がっていく。遠くない、そんな未来が楽しみだ。
◎LABURSCH
https://labursch.com/