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RECIPE

イタリアのナス食べ尽くし術。“焼き”と“揚げ”2種類のナスのマリネ

プラントベースの始め方24

2022.11.14

イタリアのナス食べ尽くし術。“焼き”と“揚げ”2種類のナスのマリネ プラントベースの始め方

photographs by Koichi Higashiya

連載:プラントベースの始め方

健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。

教えてくれたシェフ
「オステリア・オ・ジラソーレ」杉原一禎さん

辻調理師専門学校卒業後、伊・ナポリ「カンティーナ・ディ・トゥリウンフォ」や南部のソレント半島「トッレ・デル・サラチーノ」など、約5年間イタリアにて経験を積む。2002年ナポリ料理店として独立。2014年移転リニューアル。著書に「ナポリ野菜料理 -南イタリア、美味の知恵」(柴田書店)。

辻調理師専門学校卒業後、伊・ナポリ「カンティーナ・ディ・トゥリウンフォ」や南部のソレント半島「トッレ・デル・サラチーノ」など、約5年間イタリアにて経験を積む。2002年ナポリ料理店として独立。2014年移転リニューアル。著書に「ナポリ野菜料理 -南イタリア、美味の知恵-」(柴田書店)。


ニュートラルな味わいの“ナス”の料理は、軽く200品以上

野菜天国、イタリアに伝わるのは、旬を迎え、大量に押し寄せてくる“野菜地獄と闘う”料理。「食べ飽きることなく食べ尽くす」ための味づくりです。

「南イタリアの野菜料理は、ズッキーニならズッキーニ、ナスならナスと単独で使うことがほとんど。トマトは例外ですが、野菜を数種類組み合わせることはあまりありません」と話す杉原一禎シェフ。その理由は、そもそも野菜が豊富に採れる土地柄で、「旬には、“野菜に責められている”と感じられるほど採れます。毎日、毎日、食べても食べても、追いかけてくるのです」。そのために、ひとつの野菜をできるだけたくさん、飽きずに食べ続けるための食べ方が考えられてきたのだという。

例えばナス。花が咲けばその一つひとつに実がなるため、最盛期には恐ろしいほどの量が採れるそう。「ナスを飽きずに食べ続ける行為は、味わいや食感をいかに変えてバリエーションをもたせるか?というゴールからの逆算です。つまり、奇抜さや目新しさが目的ではなく(部外者からすると目新しくも見えますが・・・)、あくまでも味わいの違いが重要なのです」と杉原シェフ。

だからこそ、ナスには焼く、揚げる、煮る、生で・・・など数々の調理法を駆使。揚げてマリネやコロッケにしたり、くり抜いて肉やパスタを詰めたり、トマトソースやモッツァレッラと重ねて焼いてメイン料理にしたり、チョコレートと合わせてデザートにも。ビネガーと塩で漬け物にして瓶詰めした保存できる加工品もある。「ナスは個性が強すぎず、ニュートラルな味わいなので、料理は軽く200品以上あるのでは」

とはいえ、そもそもイタリア料理は、だしなど他で旨味を補う料理ではなく、素材の味を引き出す料理。シンプルな構成が主流だ。だからこそ、ナスの持ち味を引き出して活かし切るために、火入れの度合いはもちろん、下処理や切り方まで実は計算され尽くしているともいえる。例えば切り方。「切る(カッティング)は火入れの一部だと思っています。もしそのまま加熱せず生で使うにしても、切り方の工夫で口溶けや食感の強弱はかなりコントロールできます。そして加熱する場合も、切り方を掘り下げると、料理に表情が出ますよ」と、その重要性を説く。

今回紹介する料理も、水分を調整する下処理や適切な切り方で仕上がりに大きな差が出る。
ナスのマリネは、“焼き”と“揚げ”の2種。“焼き”は、両面は香ばしくも中はみずみずしく火入れし、素材感を残す。対照的に“揚げ”は、中まで火入れすることで、ミントや油、酢などとの一体感が味わえる。塩をして水分を抜かず、水でぬらしてから徐々に温度を上げて揚げることで、果肉がとろける前の理想の火入れとなる。


<植物性食材だけでおいしくなるコツ>


1  ナスを焼く前のグリルパンは強火でかんかんに熱しておく
2 “焼き”ナスは短時間で焼き上げ、表面にはしっかり焼き目を、中はみずみずしさを残す
3 “揚げ”ナスは水でぬらしてから揚げて、徐々に温度を上げて中まで火を入れる

「ナスのグリルマリネ」の作り方
[材 料(作りやすい分量)]
白ナス・・・2個
塩・・・適量
ニンニク(みじん切り)・・・1/2片
唐辛子(みじん切り)・・・適量
オレガノ・・・適量
白ワインビネガー・・・20ml
E.V.オリーブ油・・・30ml

[1]ナスは厚め(12㎜)にスライスする。

[2]熱したグリルで、ナスを一気に焼く

[2]熱したグリルで、ナスを一気に焼く

グリルパンを強火にかけて高温で熱し、ナスを並べる。(普通は熱を伝導させるために表面に油を塗るが、果肉が軟らかい白ナスは必要ない)

[3]焼きながら塩を振る

[3]焼きながら塩を振る

焼きながら、ナスの表面に塩をふる。途中で90℃回転させて格子状の焼き目が付くようにする。裏も同様に焼く。
POINT:軟らかい白ナスは厚めに切る。焼いてからだと味が入らないので、焼きながら両面に塩をする。

[4]バットに並べ、調味料類をかける

焼けたものからバットに並べ、ニンニク、唐辛子、オレガノ、ビネガー、オリーブ油をかける。触ると表面に張りがあり、くたっとしていない。みずみずしさが残っているのが理想。

焼けたものからバットに並べ、ニンニク、唐辛子、オレガノ、ビネガー、オリーブ油をかける。触ると表面に張りがあり、くたっとしていない。みずみずしさが残っているのが理想。

マリネにした時に油っぽく仕上がらないように、表面はしっかり焼き目を付けつつも、中はみずみずしさが残る仕上がり。

マリネにした時に油っぽく仕上がらないように、表面はしっかり焼き目を付けつつも、中はみずみずしさが残る仕上がり。

「揚げナスのマリネ」の作り方
[材 料(作りやすい分量)]
千両ナス・・・大3本
揚げ油・・・適量
塩・・・適量
ニンニク(スライス)・・・1/2片
ミントの葉(粗みじん切り)・・・7~8枚
赤ワインビネガー・・・30ml

[1]ナスを切り、水にくぐらせる

[1]ナスを切り、水にくぐらせる

ナスは厚め(12~15㎜)に輪切りし、水にさっとくぐらせる。
POINT:揚げる前に水で濡らし、急激に油を吸うのを防ぐ。

[2]キツネ色に揚げる

熱した油の中に、1の半量を入れる。1分ほどしたらひっくり返して、表面がこんがりとキツネ色になるまで3~4分、時々返しながら揚げる。 POINT:ナスはクタクタにならず、でもしっかりと中まで火が入るように。揚げ上がりはきれいなキツネ色で、表面に油がにじんでいない。 [3]調味料をかける

熱した油の中に、1の半量を入れる。1分ほどしたらひっくり返して、表面がこんがりとキツネ色になるまで3~4分、時々返しながら揚げる。
POINT:ナスはクタクタにならず、でもしっかりと中まで火が入るように。揚げ上がりはきれいなキツネ色で、表面に油がにじんでいない。

[3]調味料をかける

油を切って、ボウルに移す。塩ひとつまみ、ニンニク、ミント、赤ワインビネガーをふりかける。残りのナスも同じ手順を繰り返す。 POINT:塩、ニンニク、ミント、ビネガー。味が入ってほしい順に加える。 [4]すべてを揚げたら熱い揚げ油(60ml)を、ニンニクをねらって注ぐ。常温になるまで冷ます。 [5]皿に盛り、ミントの葉(分量外)を添える。

油を切って、ボウルに移す。塩ひとつまみ、ニンニク、ミント、赤ワインビネガーをふりかける。残りのナスも同じ手順を繰り返す。
POINT:塩、ニンニク、ミント、ビネガー。味が入ってほしい順に加える。

[4]すべてを揚げたら熱い揚げ油(60ml)を、ニンニクをねらって注ぐ。常温になるまで冷ます。

[5]皿に盛り、ミントの葉(分量外)を添える。

ミントの香りが印象的な暑気払いの料理。ナスを味わうというよりは、一体感こそがおいしさで、ナスやミント、酢や油などのそれぞれをあまり感じさせないのが理想。

ミントの香りが印象的な暑気払いの料理。ナスを味わうというよりは、一体感こそがおいしさで、ナスやミント、酢や油などのそれぞれをあまり感じさせないのが理想。



◎オステリア・オ・ジラソーレ
兵庫県芦屋市宮塚町15-6
☎0797-35-0847
12:00(一斉スタート)~13:00
18:30~22:00
月曜休 ※2023年からは不定休に変更予定
JR芦屋駅より徒歩8分
http://www.o-girasole.com/

※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため要請に合わせて営業時間が変わることがあります。

(雑誌『料理通信』2019年9月号掲載)

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