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RECIPE

旨味がみっちり。トウモロコシは皮と芯からだしをとる「トウモロコシごはん」

プラントベースの始め方34

2023.09.04

text by Noriko Horikoshi / photographs by Masahiro Goda

連載:プラントベースの始め方

健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。

教えてくれた人
東京・神楽坂「日本料理 一凛」橋本幹造さん

京都の老舗料亭、青果市場や日本料理店で研鑽を積む。2007年東京・外苑前に「日本料理 一凛」オープン。生産者との交流、テレビ出演、メニュー開発など多方面で活躍。2020年新型コロナウイルスの影響で一旦営業を終了するも、2022年7月、東京・神楽坂に拠点を移して再スタート。五感で楽しめるもてなしを提供する。


野菜との対話

煮るだけ、焼くだけ、茹でるだけ。和の野菜料理はシンプルの極みであるはずなのに、家で作ると、いつも着地がぴたりと決まらない。硬すぎたり、軟らかすぎたり、水っぽくなりすぎたり。プロの料理とは、何がそれほどに違うのか。素材の目利き、経験、技術、基本のキ。どれもが欠けているのは先刻承知。でも、「最も忘れられているのは、野菜との対話です」と橋本シェフは言う。野菜は物言わぬ植物。それは間違いない。しかし、シェフの話を聞いていると、確信が揺らいでくる。

曰く、ジャガイモを冷蔵庫で保存してはならない。なぜなら、でんぷん質は寒さを嫌う。風邪を引かせたらかわいそうだから。曰く、ピーマンは上が膨らんでいるものがいい。それが「僕、元気です!子孫を残すための種がいっぱい詰まってます!」と言っているサインだから。あたかも、目と鼻と口のある生き物のことを聞いているような・・・。
「そう、野菜は生き物ですよ。もいだら静物になる、というわけではありません」。しかも、動物とは違い、気まぐれで、対話が必要な生き物だ、とも。

「だって肉質は人の手でコントロールできるけれど、野菜はそうはいかないでしょ?気候や湿度に左右されるから、土壌や栽培条件が揃っていても狙った通りには育たない。なれ合いにならない。だから、料理人はシーズンごとの野菜の出来に合わせて、料理法を少しずつ変えていかないと。そこが面白いところでもあるんです」

農家から店に野菜が届くと、まず「どうしてほしいですか?」と野菜自身に尋ねてみる。相手は饒舌だ。大抵のことは伝えてくれる。水に浸かってシャッキリしたいよ。冷やさないで! 温めすぎないで! SOSを受けて着いたそばから火を入れ、“活け締め”をほどこすこともあるという。

いざ野菜を料理しようとする時、忘れられがちなことが、もうひとつ。どのように味わうために、何をするのか。調理の裏付けとなるもの。流行りの言葉でいえば、エビデンスというやつだ。

たとえば、トウモロコシは皮と実の間、そして芯に旨味がみっちり詰まっている。これをまるごと味わうためには、皮ごとぶつぶつ切って昆布と一緒に茹で、黄色い茹で汁は炊飯に使用する。最後に合わせて、とうもろこしごはんの完成! 試してみると、なるほど。炊き込みよりも、トウモロコシの色と香り、風味がピンで立っている。

すべてのプロセスには理屈あり。それがわかると、野菜料理は確かにずっと面白くなる。

<植物性食材だけでおいしくなるコツ>


1 トウモロコシは皮付きで茹でる。
2 トウモロコシは茹でた後、塩水に浸けて、プリっとさせる。
3 ごはんはトウモロコシの茹で汁で炊く。


「トウモロコシごはん」の作り方

[材 料](作りやすい分量)

トウモロコシ・・・1本
米(仕込んだもの)*・・・2合
トウモロコシの茹で汁・・・360ml
(茹で湯)
水・・・2L
料理酒・・・100ml
昆布・・・5g

[1]皮付きで3等分にする

トウモロコシを茹でる。皮がついたまま、先端を落とし、3等分にする。

[2]水から茹でる

水、料理酒、昆布を入れた鍋にトウモロコシを加える。中火にかけて20分茹でる。

[3]茹で汁ごと冷ます

茹で汁ごと冷まし、トウモロコシ、昆布を取り出す。


実は茹で汁と別にして5%の塩水にさらし、人肌まで冷ます。このひと手間で、冷めてもシワが寄らず、プリプリの粒をキープ。塩水でプリッとさせる。すぐに使わない場合はラップで巻いて冷蔵庫へ。

[4]茹で汁でごはんを炊く

ごはんを炊く。銅釜に米、3の茹で汁を加えて蓋をして炊く。
POINT:トウモロコシの粒は加えない。

[5]トウモロコシの粒をはずす

トウモロコシの粒をはずす。根元の部分に刃をあてる。かつらむきの要領ではずしてもよい。
POINT:栄養がある根元部分を切り落とさない。

[6]ごはんにトウモロコシの粒を加える

ごはんが炊けたらトウモロコシを加えて蓋をして温める。

[7]完成

とうもろこしごはん。トウモロコシ好きには限りなくそそられるビジュアルと香り。味つけはせず、食べる時に好みで塩を。塩昆布を添えても美味。


< *お米のおいしい洗い方 >

最近の精米技術は進化しているので、ゴシゴシ研ぐ必要はない。中心までしっかり浸水させた米を冷蔵庫に一晩おくと旨味が出て口当たりよく炊くことができる。

[1]

ボウルに米を入れ、指先を回して優しく混ぜる。少量の水を加えてさらに混ぜる。

[2]

とぎ汁を薄めるように水を足してから流す。2回水を入れ替える。これくらいの透明度でOK。
POINT:割れ米の原因になるのでゴシゴシ研がない。

[3]

1時間水に浸けた後、ザルにあけてしっかり水を切る。保存容器に入れて冷蔵庫で一晩おく。
POINT:中まで水が浸透している。



◎ 日本料理 一凛
東京都 新宿区袋町3-4クレール神楽坂14-3階
電話03-6265-0554
18:00~22:00(最終入店20:00)
日曜、祝日休
https://mikizo.com/

※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』2019年9月号掲載)

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