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RECIPE

台湾式ヴィーガンレシピ。揚げ時間わずか2、3分。冷めても美味な「鶏肉風の唐揚げ」

プラントベースの始め方45

2024.08.22

text by Miko Fujita / photographs by Hide Urabe

連載:プラントベースの始め方

健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。

教えてくれた人
千葉・大網白里「ベジハウス」中山 芳玲さん

台湾生まれの中山芳玲(ほうれい)さん。ヴィーガン歴35年。長年、東京・錦糸町で営んでいたレストラン「べジハウス」を、2021年、千葉・大網白里市に移転オープン。肉、魚などの動物性食材や、ネギやニンニクなど興奮作用があるとされる食材を使わない、台湾の精進をベースにした「素食」を提供する。


儒教の教えと月6日のヴィーガン食で、心と体を整える

台湾の人口の1~2割がベジタリアンやヴィーガン。殺生をしない、平常心で過ごすという儒教の教えが浸透しているからです。

心穏やかな食事を心がけるため、興奮作用のあるネギ、ニラ、ニンニク、タマネギも使わないんですよ。普段は肉や魚を気にせず食事をしていても、満月と新月の前後2日、つまり月に3日×2回は動物性のものを一切摂らず体をリセットするという人も多く、専門のレストランは6000軒以上あります。

日本でも昨今の台湾ブームでご存知の方も増えているかもしれませんが、「素食」や「蔬食」(そしょく)と看板に書いているのが目印。どちらも同じ精進料理ですが「素食」より「蔬食」のほうが今風のお洒落なイメージがあるようです。

台湾では、私の店のように様々なお惣菜が並んでいて、好きなものを好きなだけ取って量り売りというシステムもポピュラーです。単なるバイキングではないんですよ。高血圧、低血圧、貧血、冷え性、ほてりなど各々の体質によって野菜の種類や量を選び、セルフメンテナンスを心がけるというのが台湾スタイル。時に、動物性の料理を出しているお店もあります。ヴィーガンもそうじゃない人にもと幅広く対応していれば、一緒に同じテーブルを囲めますから。

私自身は、若い頃は月6日だけのヴィーガン生活でしたが、子供を身ごもった途端、動物性のものは匂いだけでつわりが悪化して。妊娠中は素食で通し、出産後普通の食事に戻したら、アトピーを発症。そんな体質の変化がきっかけで、35年前からヴィーガンに。体調も肌の調子もとてもいいですよ。だから、うちに来るお客さんにも、「せめて月に6日はヴィーガン食でデトックスしたほうがいいですよ」って勧めています。

台湾の素食は、野菜の甘味や昆布の旨味を引き出した‟だし”をベースに、塩や酢、ゴマ油などの調味料で味作りをします。野菜だしは甘味の出る野菜でとるのが基本で、キャベツやレタス、チンゲン菜、ニンジンの頭部分をよく使います。使わないのはセロリ。

香りが強すぎるものは使いません。家庭ならキャベツの芯や剥いた野菜の皮でもいいですよ。昆布だしも、店では顆粒を使っていますが、野菜のだしをとる鍋に昆布を入れて一緒
に煮出すのでもいいと思います。

大豆ミートや湯葉などを使った“もどき料理”もたくさんあります。うちのメニューも一見酢豚や鶏肉唐揚げ、魚のあんかけに見える写真が並んでいて、「本当にヴィーガン?」と聞かれることもあります。メニュー名をよく見れば"風"って書いてあるんですけど。

大豆系の代替食は、下ごしらえにちょっとしたコツがいりますが、食感も味も「言われなければわからないかも!」とみなさん驚きます。ボリュームも出るので食べた時の満足感もあります。揚げ物にしても肉に比べれば、カロリーは約3分の1。それでいて高タンパク質ですから栄養的にはすぐれた食材。とはいえ、大豆製品ばかりに偏ってしまうと体が冷えますから、陰陽を考えてバランスよくいろいろなものを食べてくださいね。

<植物性食材だけでおいしくなるコツ>


1 戻した大豆ミートは、水気をしっかり切って、大豆特有の臭みを消す。
2 下味は最低でも2時間以上浸ける。
3 揚げ時間は2、3分。早めに引き上げる。


「鶏肉風の唐揚げ」の作り方

[材 料](作りやすい分量)

大豆ミート・・・30g(乾燥状態)

<下味>
ショウガ(おろす)・・・8g
ゴマ油・・・5g
昆布だし(顆粒)・・・1g
塩、コショウ・・・各適量

水・・・150ml
醤油・・・15g
片栗粉・・・適量
揚げ油(大豆白絞油)・・・適量

<材料のコツ① 大豆ミート>

大豆ミートは、水に2時間浸けて戻し、よく水気を絞って調理へ。強く触ると崩れやすいので優しく扱う。

<材料のコツ② 昆布だし>

昆布だしは化学調味料不使用の顆粒のものを使用。「台湾は顆粒のほうが今は一般的。もちろんふつうに昆布でとっただしを使ってもOKですよ」

[1]大豆ミートを水で戻す

大豆ミートを水に2時間ほど浸けて戻す。

[2]下味をつける

水気をやさしく絞り、下味の材料と一緒にビニール袋に入れて絡め2時間~1晩置く。
POINT:下味でしっかり味を染み込ませる。

[3]180℃で揚げる

に片栗粉をまぶして180℃の油でさっと揚げ、水と醤油を沸騰させた鍋に移して絡めて色を付ける。(この工程は省いてもよい)

[4]再び片栗粉をまぶし、2度揚げする


再び片栗粉をまぶし、180℃の油で表面がカリッとするまで揚げる。

[5]完成

生の鶏肉を揚げるよりも早く、冷めても傷みにくいのでお弁当にもオススメ。




◎ベジハウス
千葉県大網白里市山口649
☎0475-78-4989
11:30 ~ 14:30
月曜、火曜、水曜、日曜休
https://home6493.wixsite.com/veggiehousechiba/ja

※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』2019年7月号掲載)

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