プラントベースの始め方03
潰した割れ目が極上のおいしさ
げんこつジャガイモとモーリョ・ヴェルデ
ポルトガル料理研究家 馬田草織さん
2024.10.17
photographs by Tsunenori Yamashita
連載:プラントベースの始め方
健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。
教えてくれた人
ポルトガル料理研究家 馬田草織さん
下蒸しして手でパンチ!
ポルトガル語で「Batatas ao Murro」。直訳すると「げんこつジャガイモ」。ポルトガルで広く親しまれている食べ方で、茹でたり蒸したりしたジャガイモを拳骨でパンチしてひびを入れ、ニンニクやオリーブ油をかけて再び焼いて風味付けして作ります。料理というよりもむしろ付け合わせ的なものです。
何がおいしいって、このひび割れです。ザクザクと不揃いに割れた断面に、オイルが染みて、そこがオーブンで熱せられることで、揚げ焼きのようにガリッと香ばしくなる。品種で言うと男爵やキタアカリといった、ほっくりした身質の小サイズのジャガイモを選ぶと、ひび割れが入りやすいのでおすすめです。オイルは躊躇せずたっぷりと使って。ジャガイモが浸った分だけ、揚げ焼きのようになります。皮が艶やかでピンと張ったタイプの方がパリッと仕上がって美味です。
現地ではジャガイモにニンニクも一緒に加え、オリーブ油をかけてそのままオーブンで加熱してしまいます。その方が手間なしだけど、どうしてもニンニクが焦げて、日本人には強すぎる味になるので、私は一度ニンニクを煮出して香りを移してから取り出したオイルをかけて加熱する形をとっています。
私はこれが大好きで、少しアレンジして、このジャガイモだけで1皿のつまみにして楽しんだりしています。たとえば上に、ポルトガル伝統の万能ソース「モーリョ・ヴェルデ(緑のソース)」をかけて。青唐辛子やイタリアンパセリ、香菜をペーストにして、白ワインビネガーでまとめた酸っぱい味わいが、ニンニクオイルのパンチが効いたジャガイモを、さっぱりまとめてくれます。シンプルに塩を粗く振っただけでも、香ばしいニンニクチップと相まって、実に後を引くおいしさです。
<植物性食材だけでおいしくなるコツ>
1 皮に日焼け染みの少ない小粒のジャガイモを選ぶ
2 イモのひび割れは多いほど美味
3 揚げニンニクは焦がしすぎず、一旦出して、仕上げに戻す
「げんこつジャガイモと モーリョ・ヴェルデ」の作り方
[材 料 (作りやすい分量)]
ジャガイモ(小)・・・6個
ニンニク(みじん切り)・・・3片
オリーブ油・・・50ml
塩・・・少量
<緑のソース(モーリョ・ヴェルデ)>
タマネギ・・・1/8個
ニンニク(すりおろす)・・・1/2片
イタリアンパセリ・・・4~5枝
香菜・・・2~3枝
青唐辛子・・・1本
オリーブ油・・・大さじ2
白ワインビネガー・・・大さじ1
レモン汁・・・1/4 個分
塩・・・適量
[1]下蒸しする
ジャガイモは湯気の上がった蒸し器で強火で15分ほど蒸し、粗熱を取る。
[2]ニンニクを煮出す
蒸している間に、ニンニクをオリーブ油に入れて弱火で熱する。
[3]ニンニクをすくい上げる
ニンニクの周りにシュワシュワと泡が出て、キツネ色になれば網で引き上げる(油を切ってとっておく)。
[4]布で包んで拳骨で潰す
ある程度ジャガイモが冷めたら、布にくるんで上から拳骨で軽く押し潰す。POINT ひび割れをたくさん作る!
[5]オイルをまんべんなくかける
耐熱容器に押し潰したイモを並べ、3のニンニクを煮出したオイルを回しかける。塩を強弱を付けて振る。POINT 油はひたひたに!塩はランダムに!
[6]オーブンで仕上げ加熱
200℃に温めておいたオーブンに入れ、30分焼く。
[7]ニンニクチップを戻す
オーブンから出したら、3で取り出しておいたニンニクチップを上に振りかける。
[8]緑のソースを作る
材料の野菜をすべて細かく刻んでボウルに入れ、オリーブ油、ワインビネガー、レモン汁、塩の順に加えてよく混ぜる。
[9]仕上げにソースをのせる
8のソースをのせれば、これ1品でお酒が進むつまみに。塩だけもまた、潔い味わいで美味。
(雑誌『料理通信』2019年9月号掲載)